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【完】神様は嘘つき  作者: バひ゛ろン
13/19

13.思う故に在るは我が思いと願い

 そこに闇があるからか、はたまた何も無いからか、視界は暗く──もとい黒く、自らが目を開いているのか閉じているのかさえも不明瞭。

今の私には、意識だけしか確かに在ると言えるものがなかった。


──我が名は弁天


それは突然のこと。

脳裏に直接響く様に、ふと先程の女の声がこだまする。


──先は手荒い真似をした…。疫病神を払うにあたり、同じ空間に住まうソナタの立場を見定めておきたかったのだ…。許せ


名の知れた神だからか?

謝罪を吐く割に、反して態度は横柄。


──とかく、今は奴に対抗しえる、同じ禍つ神の力が必要…


加えて自分勝手に話を展開。

(訳が分からん…)

と思い浮かべたのちに、とりあえずは話しを聞けと即座に聞こえて聞たことから、心情が筒抜けであることは分かった。


──ソナタの記憶を読み、真に居場所を知らぬことは分かった


どうやら記憶も筒抜けの様だ。

それはなんとなく腹立たしい。


──だが、姉様への義理立ては感謝している


当たり前の様に私の返事を待たずして唐突に礼を述べてくるも、やはり彼女の横柄さはとどまらず


──しかし、ソナタには神帰りを行ってもらわねばならぬ


と意味不明の語句を次いで吐き、要求らしきものを提示。


──ソナタも姉さ…もとい、貧乏神の行方を知りたかろう?


なんて姉妹であることを露見させつつ最もらしい言葉で私を誘惑してくる。

無論それを簡単に信じることは出来ない。

故に私も

(その前に…神帰りといったか?その意味を教えろ)

と同じく横柄さを持って要求を返した。

その後に聞かされた詳細は随分と難しかったが、要は神の精神を人に転載するといったものらしい。

(しかし…それで居場所を掴めるものなのか?)

ふと湧いた疑問を送る。


──盗聴盗撮の類と言えば分かりやすいか?


(あ…あぁ…まぁ…)

とはいえ、さすがに例えが悪質過ぎて気が重くなるというもの。


──精神を一方的に傍受するとあって、叶えるのも決して容易では無いが…常に最新の情報が無ければすれ違う…。かといって…精神共有では、意図して逃げられる可能性もある…


願うならば結果を生み出せる願いにしろということなのだろう。

それは分からなくもない。

(しかし…そうなると、彼女の考えが全て筒抜けになるというわけか…)

と、正直躊躇わざるをえないのも事実。

なにせ相手が貧乏神ともあって、その深層心理の禍々しさだって計り知れないのだから。


──安心せよ、永久ではない…。長くも保たぬだろうが、最低でも、その先の願いが叶うまでは続こう


その言葉を受けての私の覚悟は決まった。

よくよく考えてみれば、居場所の分からないヒトミを探して闇雲に社を回るより、断然希望も感じられるわけで。

ならば後は、と私は

(それで…その願いの代償は?)

と問いを放った。


それの何が可笑しかったかは分からないが、彼女はしばし笑い声をあげていた。

随分と楽しげに、ひとしきり笑って、その後で


──覚悟は良いのぅ…だが…そうだのぅ…ならば、ソナタの余命でどうじゃ?


と法外な代償を語った。

けれどもその直後、しっかりと言葉を噛み砕く様に


──ソナタが、何も願わずして再び貧乏神に会うまで…それまでにかかる時間…それでどうじゃ?


と追って説明。


ならば等価だな、と納得のいった私は

(分かった)

と要求の承諾を示した。


──ふぅむ…疑いはせんのだな?


ふと彼女が口にしたのは、呆れにも聞こえる声調の一言。


対して私はしっかりと

(別にお前を信用したつもりはない。ただ、その願いのシステムを信用しているだけだ)

という真意を返す。


それに彼女はフッと鼻で笑うような吐息をこぼしたのち、十分だと答えて


──しかし…代償というのも案外言ってみるものだな…


と続き吐き捨てた。


(お前…代償も言わずに願わせる気だったのか…?)


──フッフ…それも一興…。神も戯れなければ、ツマラらなくてかなわん…


(何て奴だ…)

なんて悪態を吐きつつも、その後は彼女の指示に従い、願う内容とそれに付属してくる諸々を再確認しながら儀式らしきものを進めた。

そうして様々な文言が彼女の口から放たれた後、私はふと身に熱を感じながら意識を手放した。


──分からないんです…


──私のせいかもしれないし…


──でも、安心して下さい…


──島さんは死にません


「馬鹿だな…」

遠い過去から今へと続く初めて相対する記憶と、意識と景色と自らの全ての感覚取り戻し、真っ先にこぼしたのは彼女への誹謗だった。

「自分の力で自分が苦しくなるわけないだろ…」

なんて確証もないけれど、ただ最後に見た彼女が背負っていた災厄の気の、その背景を知り、私はまた罪悪感を強くする。

「何でもっとちゃんと否定しなかった…?」


「泣いておる暇はないぞ…」


その言葉を受けて私は頬をさすり、手元を見やって

「泣いてたのか」

とこぼす。

それほどに感情とは長く疎い付き合いをしてきたのだ。

そんな慣れない心の震えを噛み締めながら

「…すまない、待たせた。もう平気だ」

と強がり半分に追想を留めた。


「…よし。なれば、貧乏神はどこにおる?」


「ん…ぅん…病院?どうやら…私の同僚の下に居るらしい…」

そう脳裏に湧いた自前のものとは思えぬ視界の映像から推測。

共だって流れ込む様々な想いに心苦しさを抱きつつも私は胸元をグッと押さえて奮起した。


「直ぐに向かうぞ?」


「あぁ」

そう一言、肉眼で捉えた傍らに佇む和装の女性に賛同の意を返し、私は横たわっていた我が身を起こして再び玄関扉を開け放った。


そこで彼女がふと呟く。 

「外では見えずとも側におる…。ソナタは些細な事など気に止めず、真っ直ぐに目的地までゆけば良い…」


「分かった」

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