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【完】神様は嘘つき  作者: バひ゛ろン
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12.決意を挫く見えざる者

 もしも疫病神の訪れが貧乏神への願いの結果だったとしたら、きっと容姿ぐらいは端麗ではなかったろうか?

もしくは容姿はかつて聞いた通り今のまま、肩書きはもっと差し支えのないものだったのではないか?


でなければ一方的に代償が悪質過ぎるというもの。

なにせ、2人の神が言うに願いと代償は等価であるのだから。


 家路を急ぐ中、私は考察をより深めながら疫病神に対抗する手段を思案していた。

とはいえ下手に攻めれば却って身に及ぶ危険が早まるというもので。


そうして思い倦ねている内に1つ対抗手段が浮かんだ。

目には目を歯には歯を、ならば神には神を、と。


私は罪悪感に苛まれながらも携帯電話を手に、ネットで貧乏神を祀る社を検索した。

それにヒットした場所は複数あったが、一番近いものでも家からで2、3区挟みとあり、そう易々と向かえる距離ではない。


ならばまずは一旦家に帰り、相応の支度をしなければ。

そう瞬時に思うのも、近場のそれでさえ未踏の土地な為に不安を隠せなかったからだ。


 駅構内に入り、電車を待っている間、私は焦燥にかられながら貧乏揺すりをしてしまっていた。

そんな些細なワードに気付き、思わずクスリとくるのは彼女との思い出のせいかおかげか。


私は焦りを払うように深呼吸をするが、それを邪魔する様に時同じくして携帯電話が揺れ動き始めた。

誰だろう?と思いつつ見つめた画面に部署名が映り、私は一瞬首を傾げるも即座にハッとする。


「(もしもし、麻衣ちゃん?)」

その声を聞いた瞬間やっぱりと思った。


だからこそいの一番に

「すいません…」

という言葉が出てくる。

「ノートパソコンですよね…?直ぐ戻ります…」

そうして私は、気恥ずかしさを浮かべながらも足取り早く来た道を戻ろうとするのだが


「(待って!)」

と瞬時に停止要請が届いた。

「(火急で任せたい仕事があるわけじゃないし、帰りに僕が届けにいくよ。今は用事を優先して)」


「…ありがとうございます」

そう素直に厚意を受け取った後で私は

「助かります」

と電話越しには意味をなさない会釈を放った。


「(じゃあ、仕事終わったらまた連絡するね)」


そうして幾度かの定例なキャッチボールをしたのちに電話は終わった。

電車はまだ来そうにないが落ち着いて考えを深めるには良い時間になりそうだ、と私はなるべく焦りを抱かぬ様に意識を強めた。


 それから家に着いたのは11時を過ぎた頃。

普段なら目に触れることもない平日昼間の閑散とした街中は穏やかでどこか心地良かった。


そんな帰路の空気に触れてか、一段と心の落ち着けた私には下手な気負いもなく、足取りも軽く、勝ち気こそ高くあったと思う。

部屋を前にしても一切躊躇うことなく玄関扉のノブに手をかけると、スッと軽快に扉を開き足を踏み入れた。


「オン──バテ──イーソワカ…我が名を持ってかが戒めの鎖となさん…」


「…!?」

それはあまりに突然のこと。

背後から意味も分からぬ呟きの如し文言が聞こえてきたと同時、首の側面に何かが触れた感触が伝った。

「な…ぁ…」

と言葉を紡ぐことすら出来なかったのは驚きのあまりにというわけではない。

確かに私の体は、発声はおろか動くことすらままならなくなっていたのだ。


その間、後頭部から首筋にかけてが感覚的に何かが近付いてきていることを察知。

かといって逃げようにも逃げられず。

「コクアン…」

と不意に耳打ちされ、そこにあるのが何者かの顔であり、声色からして女性であることまではどうにか分かる。

だが、横目ですらその姿を満足に捉えることは出来ず。

「いや、この名じゃ分からぬか…」

とそれは続け様に呟くと

「貧乏神はどこだ?」

と次いで口にし、更には脅しをもかけてきた。

「隠し立てはゆるさんぞ。嘘は文字通り、身を滅ぼさんと思え」

と。


「…知…ら、ぅ…」

そう金縛りの様な感覚に抗いつつも律儀に口を開くが言葉は不細工に。


そのせいなのかどうかはともかくとして

「ほぅ…よもや隠し立てをするとは…」

なんて深読みをされて疑われることには少なからず不満があった。

だが、例え知っていようとも私なら同じように答えたであろうことは明確。

「ならば選ぶと良い…」

と続いたのは直ぐ後の事だった。

しかし、そうして提示された選択肢は二択。

「真実を吐いて楽になるか…。真実を隠して楽になるのを待つか…」

そう吐かれた途端、結果の択一を迫る様に首の側面にあった触感が喉元へスーッと移動した。

そうして直後、それは食い込むように強く私の喉を圧迫してきた。


「…ぁが!?」

私は今、満足に喋れる状態でもなければ自力で逃れる為の体の自由も持たない。

つまりは選択権なんて端から無いに等しく、苦痛にもがきながら全ての感覚が失われる一瞬を今か今かと待ち続けるしかなかったのだ。

「ぁ…ぅぐ…」


そう苦しみに悶えながら意識を手放しかけた折り、ふと圧迫が弱まり、私は意識をまた幾分取り戻し、彼女はまた口を開く。

「しゅが──て──めをとかん」

途端、喉の圧迫とは別の詰まっていた様な感覚が取れた。

が、その安息も束の間、再びジワジワと圧迫が強まっていく。

「さぁ、これが最後の機会だ…嘘偽りなく真を述べよ…」


その言葉を受けて一瞬、迷いはあった。

けれども直ぐに私は、不確かな希望などに縋るのはやめて

「…じぉざんじゃなぃ」

と押さえられて不自由な声帯で精一杯に言葉を成し、冗談じゃないと頑なに意思を伝えた。

(ヒトミ…)

脳内と視界が混濁し、走馬灯の様に記憶が目の前を駆け巡る中、その最後に長く留まり浮かんだのは彼女の笑顔だった。

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