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【完】神様は嘘つき  作者: バひ゛ろン
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1.自称偽称の狸寝入りと脅し文句

 先日、とあるマンションの一室を契約した。

2LDKGと一人暮らしにしてはかなりの広さだが、決め手は破格の家賃。


その原因と思われるGについては勿論、管理者側に何度も追及はしている。

その度、オカルト話すらも超越する内容の返答しかなく、不審感は高かまるばかりだったが……。


 兎角、一度は実際に目で見てみねばと適当にいくつか試見先を決め、社用車にて順々に連れて行ってもらう事に。

かくして件の物件にも訪問することになるのだが、当日はそれらしい異質さなど見つからず終い。


単純な物件としての評価なら、その他に訪れた場所と比べても遜色なく、むしろ上々といえた。

加えて広さと家賃をも考慮すれば尚更といった感じである。


その結果、もしもの場合は慰謝料を請求すれば良いかと、安易な考えを持って契約書に捺印──それも恐らくは初めての1人暮らしに舞い上がってのこと。

一度家に帰ってから冷静さを取り戻すと、僅かながら不安と後悔が湧いた。


 何だかんだで迎えた入居当日には、引越屋による荷運びを傍らで見守りつつ時には置き場所の指示や差し入れを。

昼過ぎには次いで来た宅配業者の家電品の運び入れも完了し、隣人への挨拶回りも速やかに済ませた。


「ふぅ…」

と一息、忙しない時間を終えて部屋に戻ってきたところで

「これがGか」

と呟きつつ、居間に横たわるそれのとある部位をフニフニと指でつつく。

「急にどこから湧いて出たか知らんが…んー…いや、これはBだな」

と次いで淡々と個人的な見解もとい感想を吐露。


するとそれは飛び上がる様に身を起こし

「失礼な!これでもCはあります!限りなくD寄りのCです!」

とつつかれた部位を両腕で覆い隠してはうそぶいた。

「そもそもGというのはGODの頭文字であ」


「それは聞いた」

とまぁ二度目は億劫であるが故に食い気味で説明を遮断。


「うぅ…」

と不満気に肩を落とすその様子には割と胸の高鳴りを覚える。

「とにかく!Gと私の胸に関しては何ら関係のないことです!」

そう言って事実を濁そうとする様もまた同じく。


「んー…まぁ確かに、4つも5つも離れてちゃ関係を持ちたくとも現実的に厳しいもんね~」

ポンポンと励ましの意を込めて肩を叩く。


対してしばらくはキョトンとしていたそれだが、反芻する内にふと言葉の意味に気付いたのだろう。

「か、かか…神様にもっ!見栄を張りたい時くらいあるんですぅ!」

と悔しげに声を荒げていた。


「…つまり嘘か」

Bであると認めたな?といわんばかりなな意地悪く追及。


「うぅ…」

とまたそれは怪訝な顔をして唇を噛み締めている──かと思えば突然、

「あなたの願いをひとつだけ叶えてあげます!」と宣言してきた。

その急変ぶりにどうしたかと問いを放てば

「無礼者の貴方に神の威厳ってやつを思い知らせてやりゅでし!」

と自称神発言を付属した威厳もくそもない噛み噛みの口上。

「う…」

と一瞬歯噛みを見せるも直ぐ様それは

「ど、どんな願いでも構いません!驚きのあまりにもう私に不遜な発言なんて出来ないくらい熱狂的な信者にしてやりますからね!」

と失敗を隠す様に高々と語った。

その姿はなんとも暑苦しく、そしてアホらしかった。


「じゃあ…」

と仕方なく前置きながら、ふと興味本位に

「お前の叶えてあげたい願いを叶えさせてやる」

と告げてみる。


するとそれは

「は」

とこぼした後で

「願いを聞いてるのは私の方なんですけど…?」

と困惑の色を見せた。


その様に毎度いちいち多様な反応を見せる彼女を弄ぶことに楽しさはあったが、さすがにこのままでは可哀想なので

「ならば不老不死でも願うとするかな」

と適当な願い事を発する。


が、返ってきたのは誠笑えない冗談。

「代わりに痛覚が7割増しになりますけど良いですよね!?」

対して即座に否定を入れるも、それは平気な顔で似たり寄ったりな別の案を提言する。

「では…傷の治りが通常の12%の早さに」


「くだらんオプションは要らん!」

と無論これにも食い気味に否定をするのだが、


それは

「う~ん…そう言われましても私、貧乏神なのでマイナスオプションは仕様なんです…」

と吐く始末。


いくら神と言えどもこれでは傾倒のしようがないじゃないかと冷めた思考を浮かべる末、

「何も願わないのはありか?」

と尋ねてみれば


「えぇ、もちろん」

と安心の返答が得られる。

「でもその分ご飯には腕によりをかけて貰いますからね!」

とまさかの要求が続く。


(何の為の安価物件選択だと思っている!?)

という想いを携え

「今すぐ消えてしまえ!」

と辛辣な言葉を放つも


「代わりに肉質の重厚なむさ苦しい男性がさも当然のように同居することになりますがよろしいですか?」

とマイナスオプション解説による手痛い反撃を食らってしまった。


「………」

こうして限りなくD寄りのC(自称)との同居生活が始まりを告げた。

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