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ラジエルライブラリの司書見習い  作者: 日野 祐希@既刊9冊発売中
レファレンスNo.3 見習い司書とつながる絆
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53/68

レファレンスNo.3 5-2

 わたし達が書庫に入って、およそ三時間。

 コンパスの針が指し示すままに書庫を飛び回ったわたし達は、見つかった本を次々と確認していった。

 ただ……これまでに十冊くらいの本を確認したんだけど、めぼしい情報が書かれた本は見つからなかったんだよね。とほほ……。


(うーん……。今回も、なかなかいい本が見つからないなぁ……)


 エノク君と立川さんに「頑張ります!」と言って出てきたのに、この有様……。わたし一人では、やっぱりダメだったのか。

 そんな考えが浮かんでは消え、内心ではちょっぴり焦り気味だ。


(これは、少し探し方を変えてみた方がいいってことかな?)


 前に立川さんの講義で、教えてもらったことがある。

 物事の見方は、決して一つじゃない。それはまるで宝石のように、いろんな方向から見ることで、別の顔・別の輝きが見えてくるものなんだって。

 だから、レファレンスで行き()まった時は、別の方向から依頼を見てみると突破口(とっぱこう)が見える時があるそうだ。

 つまり、今こそ見方を変える時なのかもしれない。

 そう思って別の方向性を考えていると、次の本のある書架(しょか)に着いたのか、空飛ぶ絨毯は本棚の間に降りて行った。


(あ、次の本のところに着いたみたい。なら、別の探し方を考えるのは、次の本を見てからにしようかな)


 手がかりの可能性が目の前にあるのなら、まずはそちらを確認するのが最優先。この書架にある本で何かわかるなら、それが一番だしね。

 気持ちを切り替え、わたしは葵ちゃんといっしょに絨毯を降りた。


「えっと、この近くにあるはずなんだけど……」


「あっ! これじゃない?」


 コンパスを見ながら周りの本棚を見て回っていると、横にいた葵ちゃんが一冊の本を指差した。わたしもコンパスの針を見て確認したけど、どうやら間違いなさそうだ。


「そうだね。これみたい」


 葵ちゃんが指さしていた本を抜き出す。

 本はとても古い時代の本みたいで、半紙みたいな紙を半分に折って()じた本だった。前に立川さんから教えてもらった、『袋綴(ふくろと)じ』っていう日本の昔の本かな?


「うん、間違いないと思う。表紙にあの神社の名前が書かれているもん」


 横からわたしの持つ本をのぞきこんだ葵ちゃんが、そう言う。言われるがままにわたしも表紙を見てみると、筆で書かれた字の中で、神社の名前の部分だけ何とか読み取れた。

 これは期待できそうかなと思って本を開いてみると、中の文章は虫が()ったような字で書かれていた。おそらく、これが(くず)し字とかいうやつなんだろうね。

 ただ、これが崩し字であるとわかっても、それをわたしが読めるかどうかは別問題なわけでして……。


「な、なんて書いてあるのかわからない……。葵ちゃん、読める?」


「私もこれは読めないかな……」


 学校では才女(さいじょ)で通っている葵ちゃんでも、さすがにこれは読めないようだ。

 まあ、普通の小学生に崩し字を読むスキルがある方がおかしいか。


「あっ! でも見て、詩織ちゃん。ここにあの勾玉の絵が描いてあるよ。もしかしたら何かわかるかもしれないし、持って帰ってみようよ」


 パラパラと本をめくっていた葵ちゃんが、わたしに提案してきた。

 葵ちゃんの開いたページを見てみると、そこには確かに、あの勾玉そっくりの挿絵(さしえ)が描かれていた。


「そうだね。もしかしたら、立川さんなら読めるかもしれないし……。それじゃあこの本を持って、一度閲覧室に戻ろっか。――休憩(きゅうけい)()ねてね」


 三時間も根を()めて探していたから、葵ちゃんの顔には疲労(ひろう)の色が浮かんでいる。それはわたしも同じだろう。

 せっかく成果っぽいものも見つかったのだから、ここは休憩がてら、この本を持って一度閲覧室に戻るのが得策(とくさく)だ。


「あ、もどってきた!」


 わたしと葵ちゃんが本を持って絨毯のところに帰ると、絨毯の上で待っていたキンタ君とアンちゃんが、わたし達の方に()けてきた。


「アオちゃん、しおりお姉さん、本見つかった?」


「うん、見つかったよ。ほら」


『ヤッターッ!』


 葵ちゃんが本を見せると、二人はバンザイしながら喜ぶ。

 この子達はずっと元気だね。いやはや子どもの体力というのは恐ろしいものだ。


「ただ、わたし達だとその本を読めないので、一度閲覧室に戻ろうと思うの。だから二人も、絨毯に乗ってください!」


『はーいっ!』


 返事をした二人は絨毯の上に飛び乗り、わたしと葵ちゃんも二人に続く。

 全員が乗ったことを確認したところで、絨毯が再び空に()い上がった。


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