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第一七話

心強いインペリウムの軍人


ティリトォス将軍

所謂、たたき上げの古強者。

政治的には珍しく無色。

割と有能



オトラント公、軽蔑すべき欺瞞と偽善を厭い市井にて安らぐ。


クーデターや、粛正というのは一撃の元に断行されねばならない。

敵対勢力に反撃を許してしまえば、それは破滅を意味するからだ。


必然、なにがしかの不穏な空気が漂い始めると誤魔化したいのが人間のウソ偽りない心理。

陰謀の当事者たちは挙ってその雰囲気を誤魔化そうと取り繕い始める。

善良なる警察長官、ジョゼフ・フーシェ氏にとっては笑止ながらも悪人たちが笑顔を揃えて仲良く握手しているのだ。

ついついからかいたくなってしまい、悪人たちが必死に取り繕うのを心中でほくそ笑みながら見ていたものである。


だが、フーシェ氏は一介の善良なる官僚である。

曲り間違っても、剣や銃を手にとって他人を害するという行為を積極的に行いたいとは思わない。

だから、忠実なるオトラント公爵としてヴェルター第四皇子の立身に貢献しつつも血を浴びたいとは思えないのだ。


もちろん、彼は心底今回の機会でヴェルター皇子が立身することを望んでいる。

ひいてはフーシェ氏にインペリウムにおける公的な立ち位置と権力、それに安全を買える資金をもたらしてくれるからだ。

だが、同時に流血沙汰に加わりたいわけではないし失敗した時に刎頸まで共にしたいとも考えていない。


此処までお膳立てしてやって、失敗するのはもはや自己責任だからだ。

オトラント公爵とて、その善意を期待されすぎても困るという気分がないわけではないということだろう。


そういうわけでフーシェ氏のささやかな希望としては、クーデター時にはのんびりと朝寝坊しながらゆっくりと遅めの朝食で風見鶏したかった。


もちろん、勤労精神豊富なオトラント公爵にとってサボタージュはよろしくない。

そういう碌でもない精神の持ち主は平和的かつ穏健な人道的対応で説得していたのが革命フランスである。

その熱心な派遣議員でも会ったフーシェは職務をさぼることにかけては極めて強い忌避感があるのだ。


だから、彼は取りあえず自分の行動を正当化する論理をいくつも持ち合わせている。

例えば公職の有無だ。

オトラント公として、ヴェルター第四皇子こそ彼が『招かれた』貴族であると信じてくれる。

だが、このような政治的動乱の際に帝国に記録のない人間が主導的な位置に近いと思われることの不味さは言うまでもないだろう。


加えて、オトラント公爵でなければできない仕事というのもゼロではない。

ガリアとの連絡の維持や、各地の情報収集というのはフーシェがほとんど一人でやり遂げた分野なのだ。


だから、表舞台を各俳優に譲り裏方に徹するというオトラント公の言葉は忠義の表れと見做される。

なにしろ、晴れ舞台を他者に譲りながら準備に徹するという行動だ。


フーシェとしては、脚本を書き、配役を集め、舞台のお膳立てまでやってやったのである。

正直、これ以上欲張るのは良くないと謙虚なフーシェである。

心からの善意でもって、表舞台くらいは譲ってやらねばと寛容さを忘れてはいないのだ。


だから、一仕事終えて次までの余暇をのんびりと心から穏やかな気分で平穏に楽しむという権利がフーシェにはある。






雨上がりの少しばかり涼しさの出てきた午後。

ゆっくりとした午後を楽しむには、最適の天候だろう。

一仕事を終えた職人たちや、商人たちがぞろぞろと思い思いに一息入れる中で、ミーシュもまた同じようにマリウス亭の客室で、くつろいでいた。


商売の帳簿を見て意外に黒字だなぁと彼は、商人として上手くやった充足感を満喫。

中々、才能が自分にはあるじゃないかと自画自賛の喜びすら感じている。

豚を買い入れる元手は少々かかったが、精肉商と上手く渡りをつけた甲斐があったというものだ。


オマケに、あちこちに売り込む過程で騎士階級の知己も得られた。

少しばかりの黒字という取引の成果以上に、満足すべき結果だったといえるだろう。


そして、そのなけなしの儲けを孤児院におもちゃと共に持って行って代りに子供たちから手紙を受け取って帰宿。

拙い字で綴られた手紙は、しかしミーシュという男とっては、とてもとても貴重で大切なものだ。


そうかそうか、何処そこで喧嘩が多いのか、それは危ないなぁ。


近寄らないようにしなさい。でも、君たちも男の子なのだから冒険はしたいかもしれないね。

だから、危ないことが無いようにせめて誰かに伝えることはしてくれないかな?と忠告の返事を書きつづる表情は穏やかそのものだ。


孤児院で話したり、受け取ったりした手紙から察するに帝都で流血沙汰に巻き込まれた子供たちはいない。

それはつまり、ミーシュにとってはとてもとても心穏やかになれる知らせである。


だが脳裏に帝都の地図を思い浮かべ、さらに何事かを考えようとするミーシュの思考は礼儀正しいノックの音に遮られた。


「…ミーシュさん、ミーシュさん!」


「失礼、どちらでしょうか。」


日が沈むには早い時間だが、かといって昼というにはもう遅すぎる時間帯。

自分を商売仲間が訪ねてくるとも思えないし、一体誰だろうか?と考えながらミーシュは立ち上がる。


「ガルバです。親方から、ミーシュさんに今晩の希望はあるかと。」


「おお、そういえばそんな時間だ。そうだなぁ。豚のもも肉の香草焼きでも悪くないけど何かお勧めはあるかな。」


そして、扉の向こうにいるボーイから尋ねられてようやく食事の注文をまだ出していなかったことを思い出すとうっかりしていたなぁと肩をすくめた。

手紙に熱中するあまり、うっかり注文を忘れてしまっていたらしいのだ。


「手紙ですか?」


「ああ、そんなところだ。拙い字でも、子供たちの元気さは良いものだね。返事を書いていたら、うっかり時間を忘れてしまっていた。」


恥ずかしいな、と笑いながら書きかけの筆記用具をおろして手紙を片づけるミーシュ。

旅行客にとって、手紙というものが大切なものだと親方に叩き込まれているガルバにとっては分かる話だ。

離れた家族や、友人、子供や師弟の手紙というのは何よりも喜ばれるもの。


ついつい読みふけっているうちに、うっかり時間を過ごしてしまうというのは良くある話だ。

だから、ガルバは偶に注文を忘れたお客さんに声をかけて回って居るのである。


「特にお好みがなければ、ミーシュさんから買った豚のブラッドソーセージがありますよ。」


ついでに、そういうお客さんが注文に迷うのを避けるための助言も仕事だ。

もちろん利益がたくさん出る高い注文をしてもらうのが一番ではある。

だが、マリウス亭はそこら辺のさじ加減を誤らないからこそ長く続いてこられている。


あこぎな商売よりも、長い付き合いのできる信用を。


経験豊富な軍人だった先達たちが、信頼されることこそ商売の基本だと定めたおかげだ。

だから、ガルバもお勧めを出すときは一番しっかりとしたものを紹介している。

今回のお勧めは、奇遇にもミーシュが持ち込んだ豚から作ったブラッドソーセージだ。


「うーん、ブラッドソーセージは当たり外れが大きいが大丈夫かい?」


「そこらへんは、うちのヴィルと親方の腕を信用してください。」


屠殺・解体されたばかりの鮮度の高い材料を、ヴィルと親方が上手く調理した一品だ。

傷まないように、迅速に仕上げているし何より香辛料やつなぎも悪品を混ぜていない。

当たり外れが激しい品だが、これは当たりだとガルバは自信をもっておすすめできた。


「いや、疑っているわけじゃないんだがね。好みの問題もある。」


「ご安心を。あちこち軍団勤務で食べ歩いた親方が太鼓判を押しています。」


もちろん、ミーシュの好みがあるのは否定できない事実である。

だが、各地に従軍した際食べ歩いてきた親方がまず問題ないと太鼓判を押す出来のブラッドソーセージだ。

臭みも強くないし、パンとのバランスも考えられていた。


茹でたものをお昼に試してみたが、ガルバの舌もこのみな味であったのだ。


「ううむ、そういわれると心が惹かれてしまう。よしわかった、それでお願いしよう。」


そして、ミーシュにとっても出来の良いブラッドソーセージならば嫌いなはずもない。

折角の休暇なのだから、少しばかりいいワインに合うものを食べたいとも考えていたところだ。


「なら、ついでに良いワインも見繕ってもらえるかな?」


祝杯をあげるのだ。

折角の休みだ、一服するのも悪くはない。

ミーシュの気分は、爽快だ。




事を為すにあたって、密接な連携が必要だという事を軍人は疑わない。

確固撃破される愚というのは、戦場においては最悪の間抜けが行うことだ。

政治的な立ち位置がどうであれ、味方と決めた以上は団結してことに対応しなければならない。


軍人上りのヴェルケルウス第二皇子と、叩き上げであるティリトォス将軍にとってそれは自明だ。

それ故に、彼らは会合を開くや否や無駄な腹の探り合いを省いて実務のやり取りを始める。

当たり前だが、辺境部のインペリム防衛線の最前線で無駄な言葉遊びをやるアホがないのと同じだ。


「それで将軍、手はずは?」


「先制したいところですが、名分がありません。」


訊ねるヴェルケルウス第二皇子。

答えるティリトォス将軍。


彼らにしてみれば、それは戦場の呼吸と同じで慣れたものだ。


「ですので、意図的に暴発させようと思います。」


それ故に、ティリトォス将軍の言葉はヴェルケルウス第二皇子にしてみれば十分だった。

敵を暴発させ、それでもって屠るというのは辺境で使い古された手段。

だが、使い古されるということはそれが使われ続けるほど有用な作であるという事の証左だ。


「先んじたほうが有利ではないのか?将軍に言うのもなんだが、速度は極めて重要な要素だが。」


だが知識と意気込みはともかく、辺境での軍歴のないヴェルターはその呼吸が呑み込めない。

彼にしてみれば、先制することこそが勝利への秘訣。

当たり前だが、殴る方が自由に殴る目標を選べる以上攻撃の自由を失う危惧は小さくない。


「ヴェルター殿下、それは持続しえる場合のみです。ご覧ください。」


一方で、その問題を理解したうえでティリトォス将軍とヴェルケルウス第二皇子は敵失を狙うことを選んでいる。

敵に殴り掛かる目標を選ばせた、と思わせることが出来れば戦場で遥かに優位を確保できるのだ。

此方にとって、都合の良い目標を敵に殴らせることこそが戦争のもっとも苦心する部分ですらあるだろう。


実際、兵力差が大きい場合においては敵が暴発することこそが理想なのだ。

彼らにしてみれば知る由もない話だが、禁門の変が例のように古今東西類例はいくらでもある。


「帝都に展開している第三皇子派の兵力は、概算で1000程度です。こちらは、私の衛士48名に、別途私兵、衛兵もろもろを合わせて300。」


そして、政治的な名分と駆け引きという事では熟練の域にある帝国宰相オルトレアン伯爵も話は理解していた。

戦力差は大きいが、市街地にある同時に戦力差で三倍あるかないか。

敵襲があると理解し、防衛の備えを要衝で行うとすれば短時間で抜かれるほどの戦力差ではない。


何より、市街戦を行うとすれば防衛側にとって有利なのは自明の理だ。


「直ぐに抜かれる不安はありません。守るだけならば、粘れるかと。」


そして、オルトレアン伯爵にしてみれば愉快な話だが元老院は元々代々の『皇帝』・『神殿』から攻められる恐怖で要塞化の努力に怠りがなかった。

見かけこそ優雅な議事堂だが、防衛拠点としての性能は決して悪いものでもない。

実際問題、下手な小規模砦よりも頑強なくらいだ。


火災対策と称して、井戸まで掘ってあるだけに籠城するには全く困らない。


「ガリア討伐軍は集結が未完ですが4000程度は召集済みです。」


他方、ティリトォス将軍が確約するように集結済みの兵力だけで遥かに第三皇子派を圧倒できている。

私兵集団と異なり、組織だって統制を維持しつつ作戦行動が可能な正規軍の数で、だ。

間違っても、この戦力差で敗れるほど間抜けな指揮官はインペリウムの正規軍には存在しない。


「帝都の変事に即応して制圧することは十二分に可能な戦力を保持しているという訳か。」


「当然、先方もそれを想定しているかと思われます。」


だが、納得したかのように頷くヴェルター第四皇子の理解にオルトレアン伯爵は幾ばくか付け足すことを忘れなかった。

ある程度の経験不足とはいえ、頭の回転が悪いわけではない皇子というのは本当に面倒なことだ、と内心では盛大に罵っているのだが。


「つまり?」


「ガリア討伐へ動くまでは、息をひそめさせる…在り来りですな。」


もちろん、微塵もそのような不遜な考えは伺わせない丁重な物腰を保ったままオルトレアン伯爵は下問に応じて見せる。


「だからこそ、元老院で暴発させねばならないでしょう。」







帝都で囁かれる不穏なうわさというのは、絶えることがない。

大抵の場合、それらは根も葉もない噂にすぎずいずれ消散して消えてしまう。

だが、時たま深刻そうな顔で元老院議員たちや神官らまで囁きあうほどとなれば話は別だ。


そこまで囁かれるようになってしまえば、なにがしかの事態が起きているとして備えるほうが賢明とされている。

この辺の微妙な機微を理解しているからこそ、不穏な情勢をかぎ取った彼らは交流を増やす。

殊更に強調するわけではないが、ささやかな宴から始まり、それこそ開かれた祝祭まで場を選ばずに。


そして、今日の宴はある意味において重大な転機を関係者らにもたらしかねないものだった。

だからこそ、談笑し微笑みを顔に張り付かせながらも誰もが僅かに有る一角を注視している。


「おや、ヴェルケルウス兄上、こちらにおいででしたか。」


「なんだ、ヴェルターか。いつ会場に?」


親しげに声を交わすある兄弟の姿。

彼らは共に紫衣を纏うことを許された数少ないインペラトールの直系。

だが傍を歩いている侍従から受け取った杯を共に呷る姿は、何処から見ても有り触れた兄弟だ。


「遅くなってしまい、つい先ほどです。」


遅参を詫びるように頭を下げる弟。

まあ、気にしてないさとばかりに肩をすくめる長兄。


彼らのありようは、ごくごく自然体だ。

実際、ヴェルターにしてみればもう少し早く着くつもりだった。

だがこの手の宴につきものの混雑を失念し、少しばかり遅参。


まあ、こればかりは経験だ。

それを知っているからこそ、ヴェルケルウス第二皇子も仕方ないやつ目と笑って流す。


「入れ違いだった様だな。アリウトレアが探していたぞ。」


「アリウトレア兄上が?」


だからこそ、自然体で彼らは再会を言祝ぎながら入れ違いになってしまった別の兄弟について話す。

長兄から、次兄が自分を探していると伝えられて困惑するヴェルター。

そして、頃合いを見計らったアンギュー公が場馴れした物腰で言葉をつなぐ。


「はい、失礼ながらヴェルター殿下にお詫びしたいことがある、と。」


その言葉は、囁き声のひしめく会場にあってなお響き渡るほど関係者の耳に届いていた。

アリウトレア第三皇子が、ヴェルター第四皇子に、謝罪。


意味するところは、ある意味で明瞭すぎるほどに明瞭だ。

この状況下で、アリウトレア殿下が謝罪すべきことなどほかに何がある?


「私に、兄上が?」


「ああ、ちょうど良いところで戻ってきたな。」


そして、疑問口する末弟に対して人ごみをかき分けて近寄ってくるアリウトレア第三皇子を見つけた長兄が手を挙げ此処だ!とばかりに声を上げる。

その声に気が付き、やや厳粛な表情で足を速めるアリウトレア第三皇子の姿に衆目はどうしても集まらざるを得ない。

これが、今日のメインイベントなのだ。


誰もが関心のない素振りを装いながらも、一挙一動を見逃すまいと眼を集中する重大事項。


「アリウトレア兄上、私を探しておられたと聞きましたが…。」


「その通りだ、ヴェルター。私は、名誉にかけてお前に謝らなければならない。」


そして、観客にとって最も驚くべきことに誇り高きアリウトレア第三皇子は素直に頭を下げていた。

紡がれる謝罪の言葉は、真摯な色合いと申し訳なさげな声色で彼の言葉は謝罪以外の何物でもないことを聞き手に伝えている。


「知らぬこととはいえ、私の係累であるパリニウス家のクリエンテスだったものが弟に害を為そうとしたのだ。」


一切、パリニウス家をかばい立てすることなく淡々と事実のみを告げ責任を負わんと。


兄弟を自分の係累が害しようとしたことを心から悔やまんという意思を、伝えているのだ。


「兄として、弟の無事を心から喜ぶとともに、こんなことを起こしたことを心から詫びたい。」


紡がれる言葉。

その意味は、余りに明瞭だ。


弟に対する、兄からの謝罪。


「アリウトレアの謝罪だ、良ければ受け取ってやれないか。」


そして衆目の前で謝罪を行ったアリウトレア第三皇子に対し、ヴェルケルウス第二皇子が肩に慰めるように手を置き謝罪の言葉を受け取ってくれと末弟に頼む姿。


それは、観客に対して長兄が次兄の詫びを受け入れてはくれないかと言葉を添える姿だ。潔い姿の謝罪。


「もちろん、当然ではありませんか。」


予期せぬ事態に戸惑う彼らの前で、謝罪されたヴェルター第四皇子もまた快活にその謝罪を受け入れて見せる。


「そういってくれるか。肩の荷が下りた気分だ、本当にすまなかったな。」


肩の荷が下りた。

本当に、良かった。


そんな表情で、感謝の言葉を述べるアリウトレア。


「いや、よかった。兄弟で相争っては父上も喜ばれまい。」


兄弟の行き違いと、諍いを解きほぐせてよかったと笑うヴェルケルウス。


「下々の仕出かしたことです。アリウトレア兄上が気に病むことはありません。」


そして、遺恨は水に流そうとばかりに笑うヴェルター。


麗しき兄弟愛。

此処に、神の有り難い教えを説く神官様が居なくとも誰にでもわかる光景だ。


和解と許し。


そんな使い古された言葉だが、この衆目の前でやってのけるという事に意味はある。


「だが、監督責任というものはあるのだ。詫びるくらいは、な。」


誠意を示し、弟に詫びる姿は潔いものだ。

快活に謝罪を受け入れた弟も、その評価は決して低くない。


「二人とも、もう水に流せばよいというのに。どれ、乾杯の音頭を取ってやろう。」


そして二人の仲に亀裂が入るのを防ぐべく仲介の労を取った長兄は調整力を評価される。


誰にとっても、評価を上げることができると同時に不穏な風評を吹き飛ばすことのできる寸劇。

考えた人間が誰であるかは分からないにしても、和解を彼らが望んでいるというメッセージを発するには十二分な光景。


「ははは、それなら私が秘蔵の一本を出しましょう。騒がせた張本人だ、それくらいは出します。」


「ヴェルター、聞いたか、パリニウス秘蔵のワインだ。期待できるぞ。」


「全くです。これは、得をしましたな。」


貴重な秘蔵のストックを吐き出させたとばかりに歓声を上げる兄弟。

その兄と弟に、しぶしぶという態度ながらも苦笑して腰を上げる次兄。


「よろしい、期待されては仕方ない。おい、例のやつを持って来い。」


それは、皇帝が昏睡したままであるという重い雰囲気ながらも家族団欒の一幕だ。

帝国の行く末を案じる諸氏に対する、皇族らの回答。

世で騒がれる俗事を気にかけないという、明確な連帯の意志。


彼らは兄弟なのだ。



だからこそ、肩を組み歓談し、笑顔で嗤いあう。


笑いあい、嗤いあい、そして最後に喝采を叫びたくてたまらないのだから。


いやぁ、理想郷なかなか粘りますなぁ。何があったのやら。まあ、そんな次第でオトラント公をちまちまと更新しとります。


しかし、本作もだんだんとテンプレが多くなってきたと反省する次第。

・異世界迷い込み

・召喚⇒知識TUEEEEEE

・何でもできる主人公


の割には、読む人を選ぶ仕様。ランキング上位と何が違いダメなんだろうか…。やっぱり、定期的に更新するとか?まあ、もともと読む人を選ぶといえば選ぶテーマかもしれませんが。


しかし考えてみないと、平凡なテンプレものになりかねないので急募:ご意見。(『なでぽ』がないのが不味いとか、お前こんなん書いてないで幼女戦記改稿しろとか以外で。)


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