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桃太郎(新)伝説  作者: KO


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第2話 旅立ち

「金太郎...」


「帰れ。」


医者と町の人たちは心配そうに町へ戻っていった。

わかっている。自分の家族や友人が鬼に襲われて、みんな金太郎と同じ状況であること、危険であるにもかかわらずイジメていたおばあちゃんを助けるために動いてくれたこと。

ただ今は一人になりたかった。


「ごめんね、こんなお墓で。」


くま吉と家族の墓とおばあちゃんの墓を並べてみんなを埋めた。

優しさ、人を救う、おばあちゃんと話したことが重く感じる。今は他人を気遣えるほど余裕はない。


「おいおい、死人より顔色悪いぞ?」


突然、男が顔を覗きこんできた。刀を携えた無精髭の男はその姿からおそらく武士である。


「鬼の被害が増えてんな。力も人の手に負えねー。」


「武士ですか?」


「お!生きてたんだな。固まってるからてっきり死んだと思ってたわ。」


笑いながら話す男に、金太郎はイライラしていた。


「なんですか?鬼はもう居ませんよ。」


「わーっってるよ。それで、あるガキを探してるんだ。ここら辺に山育ちの金太郎ってガキはいるか?」


「僕が金太郎です。」


「お!お前かー!こんな早く見つかるとはな、仕事終わったじゃん。」


金太郎はガッツポーズを取る男にまた苛立った。


「一緒に来てくれるか金太郎。俺の名は『源頼光』、伝説の桃太郎達を探し出して鬼退治をすんぞ。」


手を伸ばす源頼光の穏やかな表情と力強い目は、金太郎の中で重く感じていたものを軽くする力があった。


「仲間はお前の他に3人いるんだ。全員つえーぞ〜。」


「たった3人!?それだけで鬼と戦えるの?」


「桃太郎一派を入れたら9人だな。」


「それだけで鬼には勝てないよ!」


「鬼も見たことないガキがよく言うわ。桃太郎伝説ちゃんと知らないだろ?」


たしかによく知らないが、たった9人、しかも桃太郎とその仲間たちは行方がわかっていない。現状不安要素だらけである。


「お前の噂は京の都まで流れてきていた。」


「ぼ、僕の?」


「おう、とんでもないガキがいるってな。」


どこからそんな噂がたったのか分からない。ただ京の都から来るほどの、大きな噂になっていることはわかった。


「あとよ、お前に見せたいものがあるんだ。」


身支度を済ませ、頼光の後をついて行くように山をおりた。小さくなっていくおばあちゃんとくま吉たちの墓が悲しさを増していく。金太郎は涙を静かに拭った。


「お前は心優しい、だがそこが欠点でもある。」


下山して目に入った町は、とても綺麗で何も壊れていなかった。


「え、襲われたんじゃ...」


「....この町の奴らはな、お前らを売ったんだよ。」


「は?」


「俺の予想だがな、鬼たちは桃太郎たちが退治した時よりずっと賢く統率が取れている。そのせいか、薬を作っている町を次々に襲っててな、鬼に嘘を吹き込んで襲わせたんだろうよ。」


信じられない。怒りで震えが止まらなかった。


「き、金太郎!?」


医者が慌てた様子で駆け寄ってきた。


「な、なんでここに?」


「売ったんですか?僕たちを...」


「い、いや......すまない...子どもや家族がいる人達を守るために仕方なく...」


「俺にも家族がいた!血の繋がりはないけど、種族も違うけど、でも俺には家族だった!」


気がつくと、医者の顔を力いっぱい殴り飛ばしていた。


「おばあちゃんはあなたのことを信じてた!唯一、他の人と同じように接してくれたから!そんなあなたがなんでこんなことしたんだよ!」


「だ、黙れ!お前らみたいな化け物たちなんかの為に誰が自分を犠牲にするんだよ!」


止まらない鼻血を手でつまんで止血しながら、医者は声を荒らげた。


「だいたい、あのババアに渡してた薬なんてちっとも効きやしねーんだよ!どうせ半月の命だったんだ、変わんねーだろ!」


金太郎は血管が浮き出るほど歯を食いしばり、背負っていた斧に手を伸ばした。

金太郎が男を真っ二つにしようと斧を抜こうとした時、頼光が刀を抜いて医者の首をはねた。


「これが人間だ。案外、鬼と人間は変わらないのかもな...」


頼光は刀を収め、歩き始めた。

その背中は、何か辛い過去を背負っているように金太郎は感じた。


「よし、切り替えて桃太郎の仲間を探しに行くぞ。まずは『猿』だ。」


「猿ね〜。」


歩きながら頼光の顔を疑うように見た。


「なんだよ?1番情報が入ってきててな。仲間と合流したらそこに向かうぞ。」


「わかった。」


「よし、京の都へ出発ー。」


少しお調子者のような雰囲気だが、あの一瞬の剣さばきで相当な強さを持っていると感じていた。

そして少数精鋭の頼光の仲間達、金太郎は少し緊張しながら、京の都へ向かい始めた。

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