命の価値に、種族は関係ない
頭が、ガンガンする。
「……う、うーん……」
かすかな土の匂いと、焚き火の煙の残り香。
たすくがまぶたを開けると、視界には――跳ね回るポンとタロー、そして踊るオークたちの姿が飛び込んできた。
「……って、なんだこのカオスな光景は……」
大地を踏み鳴らし、吠え、手を取り合って踊るオークたち。
ポンは丸太の上で太鼓を叩き、タローはぴぃぴぃ叫びながら盆踊りのように飛び跳ねていた。
「……頭いてぇし、だるいし……ここどこだっけ……」
「おっ!目が覚めたポン!」
ポンが飛び跳ねて駆け寄ってくる。
「おい、あの力なんだったんだよ……」
「ふふふっ、あれは“涙の茶”の真の効果だポン。命を揺らすほどの潜在力を引き出す、マンモスの涙のお茶だポンっ!」
「やっぱおまえのせいかーーーーー!!」
たすくが叫ぶと、ポンはぴゅーっと後ずさりしながらもニヤニヤしている。
だが、ふと気づけば、周囲の空気が変わっていた。
焚き火の向こうに、ずらりと並んで土下座するオークたちの姿があった。
「……この度は、助けていただき、本当にありがとうございました……!」
その声に威圧も敵意もない。ただ、深く、静かな感謝だけがあった。
たすくはゆっくりと体を起こし、眉をひそめる。
「……なあ、お前ら」
少し間を置いて、たすくは問いかけた。
「これから、どうすんだ?」
オークたちは顔を上げ、一人の中年のオークが口を開いた。
「……この土地には、あまりにも辛い記憶が多すぎます。
ここにとどまって生きていくには……俺たちは、まだ弱すぎる」
たすくは少し考え込み、ぽつりと呟いた。
「……そっか。ま、無理にとは言わねぇよ。
でも――俺の村か王都に来るってのも、手だぜ?」
オークたちが驚いた顔を見せる。
「今、王都でモールを運営してる。人手もいるし、住む場所だってある。
……畑仕事でも、食堂でも、鍛冶でも、力仕事でも。お前らの力、必要としてる人はいくらでもいる」
焚き火がパチンと音を立てる。
オークのひとりが、唇を噛みながらぽつりとつぶやく。
「……俺たちでも、行っていいのか……?」
「当然だろ」
たすくは笑った。
「命は等しく、大事なもんだ。人間でも、魔物でもな。
あとは、どう生きたいかだけだ」
タローが「ぴぃ……(ちょっとかっこいい)」と呟き、ポンが涙ぐみながら「旅の仲間が増えるポン……!」とこぶしを握る。
オークたちは、互いに顔を見合わせ、ゆっくりと頷いた。
「……俺たちも、一緒に行かせてもらいます。
命を返してもらった分、今度は……誰かを助ける側になりたい」
たすくは、穏やかに頷いた。
「……よし。じゃあ、働いてもらうぞ
疲れたら休憩すればいいし、ゆったりのんびり行こうぜ」
そして、小さく笑う。
「給料は、ちゃんと出すから安心しろよ」
その言葉に、宴がもう一度盛り上がった。
焚き火の明かりが、空に舞い上がっていく。
夜明けの光は、きっと新しい希望を連れてくる――




