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ベーコンの匂いと、死んだ瞳

旅が続く中――


ポン、たすく、タローの3人は、

次々と名のある魔物や幻獣を倒し、そのたびにギルドから大金を受け取っていた。


噂は広まり、もはや「非戦闘員たちの武勇伝」は各地の伝説になりつつある。


 


そんなある日。

彼らは、山あいにある小さな集落に足を踏み入れた。


 


「……ずいぶん静かなとこだな。いい場所っぽいけど」


 


「空気は悪くないポン。ただ、匂いが……ちょっとくさいポン?」


 


「ぴぃ(肉?煙……?)」


 


炭のような匂いが、ずっと鼻を刺していた。

何かが燻され、何かが焼かれている。

たすくがふと煙の立つ工房の前で立ち止まった、その時だった。


 


「……っ!?」


 


視界の端に、異様なものが映った。


 


――それは、二足歩行のオークだった。


 


大きな体、灰緑の肌。

獣のような巨躯を持ちながら、手には荷物を持ち、黙々と作業をしている。


 


だが――目が、死んでいた。


 


「オイ!こっちだ!早くしろ!!」


 


村人の怒号とともに、オークが少しでも動きを止めると――


バシィィンッ!!!


 


鋭い鞭の音が空を裂いた。


 


「うっ……」


 


オークはわずかにうめきながら、それでも言葉ひとつ発することなく作業に戻る。


 


その様子を呆然と見ていたたすくに、通りかかった村の女が声をかけた。


 


「あんた、よそ者だね。見て驚いた?

でも安心しな。うちの村じゃ、オークはもう“家畜”だよ。

言葉を話せるけど……ねえ?誰がそんなもん、気にするかっての」


 


「……は?」


 


「うちの特産はオークのベーコン。あいつら、よく肥えるんだよ」


 


そう言って、女はニコッと笑った。


 


たすくは、その笑顔を前に、ただ……吐き気を堪えていた。


 


ポンも、いつものようなテンションはなかった。


 


「……たすく。わし、今すげぇ気分悪いポン」


 


「ぴぃ……(これ、冗談じゃすまない……)」




炭の匂いが鼻を刺す中。

たすくは煙の向こうでうなだれるオークたちを見つめていた。


 


黙って荷を運ぶ者。

目を伏せたまま、パンを焼いている者。

そして、奥の柵の中――痩せたオークが、ベーコンにされる順番を待っていた。


 


無言。

けれど、その沈黙は叫びより重かった。


 


たすくは拳を握りしめながら、口を開いた。


 


「……この国じゃ、魔物はギルドに出して金にすりゃいい」


 


「ぴぃ……」


 


「出荷すれば、冒険者が喜んで狩ってくれる。

そいつが人を傷つけようが、関係ない。

とにかく“狩れるかどうか”だけが判断基準なんだろう」


 


ポンが黙って隣に並ぶ。


 


「……でも話せるやつらは?

何も悪いことしてないやつらは?」


 


煙の中で咳をしていたオークの少年と、目が合った。

たすくは、その“人間と何ひとつ変わらない瞳”に、息を飲む。


 


「……俺たちも、さっきまで似たようなことしてきた」


 


倒して、狩って、売って、笑って。

“敵だったから”の一言で、片付けてきた。


 


「でも……これは、違う」


 


たすくの声が低く震える。


 


「奴隷みたいに扱って……ベーコンにして食って……

笑って“美味い”って言って……それで終わりだと?」


 


「ぴぃ……(それは……違う)」


 


「――尊厳ってもんが、あるだろうがよ」





ポンが、じっとそのオークの背中を見つめる。


その瞳はいつもの「ドヤ顔」ではない。


怒っていた。


静かに、けれど――明確に。


 


「なぁ、たすく。お前、この前言ったポンな?」


 


「……ん?」


 


「“非戦闘員でも、やれることがある ”って」


 


「……ああ」


 


ポンは、鼻をふんっと鳴らして言った。


 


「だったら見せてやるポン。

わしらが――モフと鼻血とスコップで世界を変えるってことをポン」


 


たすくは静かにうなずき、スコップを背負い直した。


 


「……ぶち壊すか、この“仕組み”」

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