密会と、モフの疑惑と、海の約束
――朝方。
潮風が肌を撫でる中、たすくはひとり、波打ち際の岩に腰かけていた。
隣では、ポンとタローが大の字で寝転がり、豪快に涎を垂らして爆睡中。
昨日のやけ食いタコパ(魔獣産)の余韻が、まだ空気に残っていた。
「……やれやれ」
たすくは静かにため息をついて、夜明けの海を見つめた。
その時だった。
波間から、美しい蒼銀の鱗がゆらりと姿を現した。
氷のように透き通った瞳。
それは紛れもなく、アイスだった。
「鱗……大丈夫か?」
たすくは、傷の残るその身体を見て心配そうに尋ねる。
「……ふん。わたしは、もう平気よ。
それより――」
アイスは、静かに目を伏せた。
「……わたしは、人間が嫌い」
「……」
「欲しがって、奪って、傷つけて……
みんな、自分勝手だ」
たすくは少し黙って、それから――
にかっと笑った。
「そうだよな。……ごめんなー。
でもさ、俺は、お前のこと――素直で大好きだぞ」
アイスの目が、ふっと揺れた。
「……あんたのような人間は、初めてだ」
「そりゃよかった。オレ、けっこうレアモンだからな?」
「ふふっ……好き、かもしれない」
「ちょちょちょちょちょちょちょいストップ!!」
たすくが両手を広げて制止する。
「それはダメだぞ!!だって、うちのポン、まだお前のこと本気で好きだから!!」
「……あのたぬきが?」
「そう。ラブレター書いて、勾玉かじって、ゲソを泣きながら焼いてたんだぞ?」
「……すごい執念ね」
「マジのやつ。だから、俺はポンを裏切れないんだよ。友達だし」
アイスはしばらく黙っていたが、やがて――静かに頷いた。
「……助けてもらった恩もある。
これからも、困ったら――力を貸すわ。
……それが、わたしの誓い」
「……おう」
たすくは照れたように笑って、もう一度、海を見た。
――その後。
「くんかくんか……」
背後から不穏なモフモフ気配。
「……お前、アイスの匂いがするポン」
「!?!?!?」
気づけば背後にポンが立っていた。
鼻をひくひくさせて、どこか怒りのオーラをまとっている。
「な、なんで起きてんの!?今すっげぇいいとこだったんだけど!?」
「密会したポンな!?!?このうんこ野郎!!!」
「ちげぇよ!!!」
「ぴぃ(朝から濃い……)」
こうして朝の密会はモフモフ修羅場で幕を閉じた。
だがたすくの心には、アイスの“誓い”という小さな希望が――
しっかりと、残っていた。
次なる旅路は、まだ見ぬ出会いと、
とびきりヤバい事件の予感に満ちている。
――たすくとポンとタローの旅は、今日もにぎやかに続く。




