ポン、恋に生きる。飯も食う。
――数時間後。
たすくとタローの応急処置とおやつにより、大タヌキはなんとか息を吹き返していた。
「よしよし……これでだいぶ呼吸も安定してきたな」
「ぴぃ(よかった……)」
その時、タヌキがうっすらと目を開け、のそのそと体を起こした。
「うぅ……うぅぅぅぅ……」
「お、おい!?だ、大丈夫か!?」
「……ぬあああああ! 腹が減ったポーーン!!」
「え!?!?」
たすくが飛びのくと、タヌキはもっさりとした体を起こし、よろよろと立ち上がる。
「食べ物はどこじゃポン!? 芋!団子!煮魚!焼きおにぎりぃぃ!!」
「いや、元気かよ!!」
「ぴぃぃぃぃ!?(あんなに弱ってたのに!?)」
たぬきは、たすくのリュックに頭を突っ込み――
「これは…………子牛の写真ポン……食えんポン……」
「当たり前だろ!!!」
そしてようやく、たぬきは正面を向いて、たすくとタローにぺこりと頭を下げた。
「助けてくれて、感謝するポン。名をポンというポン」
「自己紹介まで“ポン”ついてるの!?」
「ポンはポンなのポン」
「いや、ややこしいな!!」
「ぴぃ(もう無理……ツッコミが追いつかない)」
たすくは呆れつつも、どこか憎めないそのタヌキに笑みをこぼした。
「……で、“あの子”って誰だ?おまえ、倒れる前にそう言ってたぞ」
ポンは、少し寂しそうな目をして空を見上げた。
「“あの子”は……アイスっていう、海の竜ポン。わしの、大切な……その……こ、恋ポン」
「ぴぃ!?!?(こ、恋ィィィ!?!?)」
「会いに行こうとしたら……タコ魔獣にやられて、ここまで逃げてきたポン……アイスが……今、どこかで……」
「……マジかよ」
たすくは、拳を握った。
「じゃあ決まりだな。行こうぜ、ポン!タロー!海の街、そして――アイスを助けに!!」
「ぴぃ!」
「おぉ……わし、ついていくポン!その代わり、三食おやつ付きで頼むポン!!」
「わかったからまずは歩け!!」
⸻
日も暮れ始めた頃――
たすくたちは、森の奥の開けた場所に腰を下ろしていた。
「ふぃ〜……ようやく日陰で一息だな……」
すると、すぐ隣で、ポンがドスッと地面に座り込み、鼻をふがふがさせながら言った。
「歩けないポン! 本日はここで野宿をするポン!」
「いやいや、まだいけるって! もうちょいで森抜けそうだぞ!?」
「無理ポン! 足が限界ポン! おやつも限界ポン!」
「だからおやつは体力回復アイテムじゃねぇ!!」
「夕飯は豪勢なもので頼むポン! 肉ポン! 汁ポン! あとデザートもポン!」
「ねぇよ!!!」
「……ちっ、使えねーポン。しょうがないから待ってるポン……」
「どの立場だよ!?」
たすくとタローがぐったりしている中、
ポンはぴょんっと立ち上がり、もふ尻をぷりぷり振りながら森の奥へ消えていった。
「……行ったぞ」
「ぴぃ……(不安しかない)」
そして――30分後。
「とってきたポン!!!」
バッサァアアアアアアアアッ!!!!!
森の木々をなぎ倒しながら、ポンが背中に乗せていたのは――
自分より遥かに巨大なマンモス級魔獣(体毛ボサボサ、牙ドゴォン系)!!
「な、なんじゃこりゃああああ!!!」
「ぴぃぃぃぃぃ!?!?!?」
「食えるポン!!!おっきいポン!!!今日の夕飯はパーリーナイポン!!!!」
「パーリーナイ!?いや解体どうすんだよ!!無理だろこれ!!」
「お前に任せるポン(ドヤ顔)」
「お前が持ってきたんだろがあああああ!!!」
⸻
そして――
たすくたちは、人生初の魔物解体に挑んでいた。
「えっと、まずは……これ尻尾?じゃなくて脚か?いや、なんだこれ???」
「ぴぃ……(無理すぎる……)」
「だいじょぶ、こういうのアニメで見たことあるから!!」
たすくは真顔でナイフを構え、
「皮はギルドに売れそうじゃね!? 牙もなんかいい感じだから印鑑っぽいし、とっとこうぜ!!」
「ぴぃ!?(だから誰に売る気!?)」
ポンはというと、その横ででっかい肉の塊を抱えていた。
「まずは焼くポン!」
「おまえ、早くない!?」
そしてその30分後――
即席の焚き火に刺さるのは、直径1メートル超の“魔獣ステーキ”。
ジュウウウウウウ……
「……焼けたポン!!!」
たすくはごくりと唾を飲み込み、
「うおおおお、いっただっきまーーーす!!!」
ガブッ!!
もぐもぐもぐ……
「……あれ?」
「ぴぃ?」
「……なんか、味、まぁまぁじゃね?」
「まぁまぁポンね」
「いやなんで揃うんだよ!!」
そんなこんなで、巨大肉は、“まぁまぁ”という感想で完結した。
「とりあえず……牙は記念に持ってこう」
「皮でマント作ってもらうポン」
「ぴぃ(絶対ダサいよ……)」
こうして、**最初の野宿は、まさかの超豪華“マンモス魔獣の宴”**となった。
だがこの肉、ただの魔獣ではなかったのだ――
のちに“幻獣”と呼ばれるレア生物と知るのは、
数日後、海の街の漁師に驚愕されるその時であった……。




