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襲来と鍋と、ドマじいの趣味

その日。

村の上空を旋回する、鋭い爪と翼を持つ魔物たち――

それは、かつて村を怯えさせた“空の災厄”。


だが――今回は違った。


 


「……数は10体以上。空からの奇襲……だが――問題ない」


ユイラが目を細め、風を読む。


「バシュ、前。リンド、後方魔導。挟み撃ちでいくわよ」


 


「……おう」


 


「了解……っ!!」


 


風を裂いて舞い上がったユイラが、一言。


「全機、殲滅するッ!!!」


 


その声と同時に――


バシュが跳んだ。

地を砕き、空に拳を突き上げ、一体を粉砕。

その破片が降り注ぐなか、


リンドが詠唱。


「天より来たれ、護の焔よ――」


空に浮かんだ魔法陣が輝き、

残りの魔物たちを焼き尽くす。


 


わずか十秒。


魔物たちは全て撃墜された。


地に落ちたその姿を見て、たすくがぽつり。


 


「……なぁ、こいつら……鶏じゃね?」


 


ジローが二度見した。


「は!? おま、今それ言う!? しかも鶏って!?」


 


「いや、冬だしさ。とり鍋、ありじゃね?」


 


「でけー鍋ねぇだろ!!!」


 


すると、横から――震える声が。


 


「……わしの……趣味じゃ」


 


そう言ってドマじいがゆっくりと手を伸ばすと、

納屋の奥からゴゴゴゴ……と引きずられる巨大な鉄鍋。


 


「趣味で作っておったんじゃ……“村祭り用の鍋”をな」


 


「なんなんだよ、こいつら……」


ジローのツッコミが、冬空に響いた。



***


 


鍋の準備が始まった。

野菜は畑から、新鮮なまま調達。精霊式グリーンハウスの恵みだ。


タローが干し椎茸を鼻先でつつき、ぴぃと鳴く。

ふくが「それはまだ戻してないのよ」と笑いながら取り上げた。


 


すると、バタバタと駆けてくる足音。

やって来たのは、レンだった。


「なにやってんだよ!」


 


たすくは大きな声で答える。


「鍋パーティーだよ! お前も手伝え!」


「え~~~……」


「お前、大根係な」


「ええ~~~っ!? もっとカッコいいのにしてくれよ!!」


 


そこにふくが割り込んできた。


「ほらほら、みんなー! 人手が足りないんだから、手伝ってー!」


 


「はーい!」

子どもたちの元気な声が重なる。


レンのそばには、ひとりの小さな子が駆け寄る。


「ねぇレンお兄ちゃん、包丁持っていい?」


「ダメに決まってんだろ! お前は皮むき担当!」


 


「お、リーダーシップ出てきたなぁ、レン」

たすくがニヤニヤと笑う。


「うるっせぇな!」


 


ふくはにこにこと笑いながら、まな板の上で野菜を刻んでいる。

その後ろでは、まごじいが鍋の火加減を調整していた。


 


湯気が立ち昇り、笑い声が重なる。

子どもたちは材料を運び、タローはその横でごろごろと転がっている。


 


冬の空は青く澄み渡り、風は優しかった。


 


――かつて餓えに苦しんでいた子供達の姿は、もういない。


今はただ、笑顔と湯気に包まれた“とり鍋の匂い”だけがあった。


 


 


それが、たすくたちの「今日の幸せ」だった。





***


 


その頃――村のはずれ。

雪が積もった野原で、何やらせっせと動いている姿があった。


 


「……こっちはおしり冷えるからイヤ~ン!!」

火の精霊がぶるぶると震えながら、雪玉をころがしている。


 


「なに言うてんの!かまくら言うたらケツ冷えるのが風情やろ!」

風の精霊がツッコミながら、扇子で雪を飛ばす。


 


「ふふふふ……おやつ持ち込み禁止とか言わんよな?」

地の精霊はかまくらの入り口に座って、団子をくわえたまま指でドームの丸みを確認している。


 


「……ねぇ、本当にここ、寒くない?溶けない?大丈夫?」

水の精霊は隅っこで心配そうにうずくまっていた。


 


そして、ようやく完成した精霊たちのかまくらは――

入り口に「精霊専用・立ち入り禁止!」と大きく看板が掲げられていた。


 


「ふふん♪ わたしたちにも、“冬のお楽しみ”ってもんがあるのよ~ん」


 


と、その瞬間。


 


タローがゴロゴロと転がってきて、かまくらの上にダイブ。


 


「ぴぃ!!」


 


ばふんっ!


 


かまくらは――見事に崩壊した。


 


「ぎゃーーーーーーー!!!」


 


「おまええええええええええ!!!!!」


 


村の隅っこに、精霊たちの悲鳴がこだました。


 


……でもその声すら、なんだか楽しげで、

たすくたちの村には、今日も笑いが満ちていた。



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