命の跡地に、モールとホームセンターを。
王都跡地――かつての玉座の間。
いまや、そこにあったすべては光に飲まれ、何一つ残っていなかった。
瓦礫ひとつない、大地。
広大で、静かで、風がよく通る。
その中心で、ひとりの男が腰に手を当て、晴れやかな声を上げた。
「うわっ!見晴らし最高だなー!」
それは、たすくだった。
かつて、村でひとり農作業に励み、モフモフに命を救われた男。
その彼が、いま、“まっさら”になった王都のど真ん中で叫んでいる。
「さすがにやりすぎだろ……なんもねーぞ」
隣で呆れたように言ったのは、ジローだった。
地面にスコップを突き刺しながら、辺りを見回す。
「……いやほんと、全部灰じゃねぇか」
「ぴぃ?」
タローが、たすくの足元で小さく鳴いた。
さっきまで神だったモフモフが、いつものサイズに戻って首をかしげている。
「こっからどーすんだ? 住人たち呆然としてやがるぜ。しかもこの人数」
ジローが言う通り、周囲には、命からがら逃げ延びた者たちがぽつぽつと立ち尽くしていた。
守るべきものは救われた――でも、住む家も、財産も、すべてがなくなっていた。
「広いからお祭りし放題〜!」
火の精霊が、ひらひらと空を舞いながら笑っていた。
「おーい、たすくさーん!!」
遠くから、見慣れた声が響いた。
見ると、白い外套をひるがえし、王族の青年――サクが手を振りながら走ってくる。
「お、サク!無事だったか〜!」
「なんか……生きてますね……」
息を切らせて立ち止まったサクが、周囲を見てぽつりと呟く。
「っていうか……何があったんですか、ここ」
「うーん……全部、まっさらにした!タローが」
たすくが、笑いながら言う。
「お祭りし放題らしいぜ」
ジローのツッコミに、サクが目を見開いた。
「……ここ、王都だったはずですよね?」
「だったな!」
たすくは空を見上げた。
どこまでも澄んだ青空が、今はまだ何もない大地に広がっている。
しばらく、風が通り抜けた。
そのあと、たすくはぽつりと言った。
「……こんだけ広い土地だしさ」
「うん」
「……巨大ショッピングモールと、巨大ホームセンター建てようぜ。」
「…………」
「…………」
「…………えぇっ!?!?!?!?」
ジローが盛大にツッコミを入れ、サクは絶句し、火の精霊が空中でくるくると回った。
「な、なんでそうなるんですか!?!?!?」
「いや、まず“拠点”がいるだろ? みんなで集まれる、便利で、安心な場所」
「それで“モールとホームセンター”!?」
「人はな……食って寝て、働いて笑える場所が必要なんだよ!!」
たすくが拳を握って言い放つ。
「ここを、あの村みたいにしようぜ。いや、それ以上にさ」
ジローが頭をかきながら呟く。
「……王都まっさらにして、次はモール建設って……歴史上、こんなやつ他にいねぇぞ……」
サクは顔を覆った。
「えっと……これ、建国ですか? 革命ですか? それとも、バカですか?」
「全部!!」
たすくがにっこり笑った。
そして、ジローに向かって親指を立てる。
「さぁジロー、まずは更地にスコップ入れるところからだ!」
「もう更地だわ!!!!」
ジローが叫びながら、空の下に突っ込んだ。
空には、陽の光。
地には、希望。
焼き払った先で、男たちはまた、土を掘る。
――新たな王都再建、いや、“癒しの都計画”が、いま、始まった。




