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逆鱗に触れた王

王宮・謁見の間――


重厚な扉が開かれ、土にまみれた男が堂々と歩みを進める。

その背に、煙の臭いと、救った命の重さを纏って。


玉座の上では、国王が冷ややかに目を細めていた。

目の前に現れた“民”を、まるで汚物でも見るような目で。


 


「どーも。お前が見捨てた村で長やってます、たすくです!」


 


その言葉に、周囲の兵たちはざわついた。


だが国王は椅子にふんぞり返ったまま、鼻で笑う。


 


「……なんだその格好は。

 臭い。汚い。下賤の者が城に上がるとは」


 


「単刀直入に聞く。お前にとって、“民”とはなんだ?」


 


王は吐き捨てるように言った。


 


「税を納めるための道具だ。

 役に立たなくなれば捨てる。

 文句を言う者は、踏み潰す」


 


たすくの顔から、笑みが消えた。


「……じゃあ、王族の責任は?」


 


「責任? そんなものあるわけがなかろう。

 王が国を捨てて何が悪い? 愚かな民など、何人死のうが代わりはいくらでもいる。

 他国から買ってくれば済む話だ。

 どうせゴミだ。使い捨てで十分だろう?」


 


「………………くそが」


 


たすくは、ゆっくりとスコップを手に取る。

怒りが、目の奥から煮えたぎるように滲み出た。


 


「なぁ、あんたの息子、サクっていうんだよな。

 今、火傷負って泣きながら人助けしてたぞ。

 ゴミの命を、命がけで助けてた。

 あんたより、百倍“王”だったわ」


 


その瞬間、後方の扉が開く。


ドマじぃがゆっくりと歩み入り、

末裔たち、ジローとタロー、そして精霊たちが城へと集結する。


空気が揺れた。


 


「さあ、王様。

 民をゴミと言い捨てたその口で――

 俺たちを“止めてみろ”」


 


 圧倒されるような気配が、重々しい空間を満たしていた。


タローが「ぴぃ」と小さく鳴くと、精霊たちの足元から風がざわめき、末裔たちが無言で前へと出る。

その光景を前に、王の顔色が見る見る青ざめていった。


 


「ま、待て……っ、話せばわかる……!」


 


さっきまでふんぞり返っていた王が、突然立ち上がり、玉座の階段を駆け降りる。

腰を折り、ひざまずき――なんと、土下座を始めた。


 


「許してくれ!あれはすべて、国を思ってのことだ!民のためだった!だから――命だけは……!」


 


兵士たちがざわついた。

たすくも、一瞬だけ目を見開いた。


 


「……マジで言ってんのか……?」

「情けねぇな……」ジローが呆れた声を漏らす。


 


そのときだった。


 


王が懐から、銀に光る“短剣”を引き抜く。


そして――


 


「死ね、民風情が王に刃向かうなど、身の程を知れぇぇッ!!」


 


ズブリ――!


 


鈍い音とともに、たすくの腹に短剣が深く突き刺さる。


 


「たすくッ!!」


「ぴぃっ!!!」


 


周囲が凍りついた。

たすくの口元から血がこぼれる。

よろけながらも、笑っていた。


 


「やっぱ……クソだったな……あんた……」


 


王は高らかに笑う。


 


「お前らみたいな連中が国を語るな!

民は石ころだ!お前らもそのガラクタも全部、焼いて潰して埋めてやる!」


 


そのときだった。


空気が――裂けた。




「ぴ、ぃ……」


 


小さく、低く、鳴いたのは、タローだった。


たすくの血に濡れた床。

笑っている王。


そのすべてを見つめたその目が、静かに光る。


 


「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!!」


 


大気が――裂けた。


 


タローの体が、光の渦に包まれ、

次の瞬間――


 


ドンッ!!!!!


 


その場にいた全員が、地面から跳ね上がった。


床が抜けたのかと錯覚するほどの衝撃。


白銀の鱗が煌めき、城の天井が“ミシッ”と音を立てた。

モフモフだった体は巨大な獣へと変わり、その背には、金色の翼が生えていた。


 


「――ッ!!? でけぇ!!」


「屋根っ……!? やば、崩れるぞ!!」


 


石材が音を立てて剥がれ落ち、柱が一本、真っ二つに折れる。


衛兵たちが悲鳴を上げて逃げ惑う中、

ただ一人――王だけが、膝をついたまま動けない。


 


「な、なんだ……なんだこれは……!?」


 


モフドラゴンとなったタローの口が、ゆっくりと開く。


中から、赤熱した光が集まり――


 


「ぴぃぃぃぃぃぃいぃぃいぃいッッ!!!!!!!!!!」


 


放たれた閃光が、玉座の後方を一撃で消し飛ばした。


壁が崩れ、王の後ろにあった大理石の装飾が粉々に砕け散る。


 


「ひ、ひぃ……!!」


王は尻もちをつき、這いずりながら逃げ出そうとする。


 


だが、その目の前に――


血を流しながらも、立ち上がるたすくの姿があった。


 


「……なぁ、王様」


 


たすくが、血まみれの手でスコップを肩に担ぎ直す。


 


「その命、安くないぞ」


 


――次回、「地獄の王に、鉄槌を」


護竜が吼え、村長が裁く。

伝説の逆鱗が、王国に襲いかかる――!


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