燃やせ。王の命令、地を裂く火となれ
謁見の間に、駆け込む足音が響いた。
赤い絨毯を蹴立てるように、一人の兵士が全力で膝をつく。
「陛下……っ!!」
玉座の上、王がゆっくりと目を開く。
「……どうした」
兵士は息を荒くしながら、言葉を継いだ。
「本日……いえ、明日処刑予定だった囚人が――地下牢より逃走しました!!」
謁見の間に、静寂が落ちる。
王の目が、鋭く細まった。
「……何を、言った?」
「ち、地下に穴が開いており……囚人はそれを通って外部に……」
ドンッ!
玉座のひじ掛けを、王の拳が打ちつける。
「兵士たちは何をしていた!!」
「そ、それが……サク王子が、“爆発物の疑いがある荷物が届いた”と仰せになり……」
「牢の周囲にいた兵士を……全員呼び寄せられて……」
「……あの、バカ息子!!!!!!!!」
王の怒声が、謁見の間全体を震わせた。
「いいか、すぐに抜け穴の中に火を放て!!!」
「今なら“火炙り”にできるのだ!!!!!!」
兵士たちがざわめく。
「し、しかし陛下! 抜け穴がどこへ繋がっているか分かりません!」
「下手をすれば、王都の建物や貯蔵庫、さらには――」
「ええぃ!!! わしを煩わせるな!!!!!!」
王の怒鳴り声が、巨大な鐘のように鳴り響いた。
「王命である。火を放て。地下を焼き払え。
この国に逆らった報い、全ての愚者に知らしめてやる……!!」
兵士たちは一瞬、視線を交わし――
やがて、誰も逆らえず、頭を垂れた。
「は……ははっ……御意……」
その命令が――
後に“王都炎上”と語られる惨劇の、始まりだった。




