村に、でっかい石窯をつくる日
朝日が、村の屋根をやさしく照らす。
その日、たすくはいつもより早く起きていた。
首にタオル、手には設計図の紙。
真剣な顔でそれを見つめていたが――
「よーし、今日は村に……でっっかいかまど、作るぞー!!!」
その声は朝の空気を震わせて、山のあちこちに響き渡った。
「かまどぉ!?でっかいやつぅ!?」
地の精霊が駆けつける。手には謎のスコップ(キラキラ仕様)。
「パン……焼くやつか?でけぇやつか?かぁーっ、いいじゃねぇか!」
火の精霊が腰に手を当てて、やる気満々。
「うちの未来の旦那も朝から興奮しとる気がするわ〜!」
風の精霊がド派手なエプロンで登場。
「た、たぶん、手伝えると思います……」
水の精霊はいつものごとくちょっとビビりながら、でも大きなバケツを持って現れた。
そして、集まってくる村人たち。
「たすくー! なんか手伝うことあるかーい!」
「わしは腰は悪いけど、知恵はあるぞー!」
まごじぃが石の積み方を指導し、
ふくは差し入れの温かいスープを用意。
ジローはというと――
「俺、火の調整やる。任せとけ。焦がしたらタローのせいにする」
タロー:「ぴぃ?」
村の中心、もともと広場だった場所に、石が運ばれ、土がならされていく。
火の精霊が「ここ、熱がこもるようにこうしなさいよ〜ん!」と指導。
地の精霊は「この石、寝かせるんじゃなくて立てると耐久性アップやで!」と盛り上がる。
風の精霊はなぜか扇子を持って、
「焼きあがったらふぅふぅする係もいるやろ?大事やで!」と自称・冷却係に。
そんな騒がしい中で、たすくは真剣な目をして、中心に一つの大きな石を据えた。
「このかまどは、これから村を支える。
まだ見ぬ誰か――飢えと寒さに震える子どもたちに、いつかパンを届けるための、はじまりなんだ」
誰かが笑った。
誰かが黙って、うなずいた。
そして、誰もが動き出した。
やがて、ドーム状の美しいかまどが立ち上がったとき――
そこにあったのは、ただの“調理器具”ではなかった。
それは、“希望のかたち”だった。
「焼くぞー! パン焼くぞー!」
「明日はピザな!」
「いやいや、でっかいカステラとか焼けんじゃね!?」
村の笑い声が、石窯の上をくるくる回って、空に溶けていった。
――つづく。




