ようこそ、末裔団地へ
木漏れ日が揺れる、静かな午後。
山の中腹、護竜の家の前に、地面に木炭で描かれた雑な円と線。
それを囲むのは、たすくと末裔たち、ジロー、サク、ふく、そして精霊たち。
「……これ、何の落書き?」
末裔の少女が眉をひそめる。
たすくは地べたに膝をつきながら、ニヤリと笑った。
「未来の設計図だよ。」
「は?」
「団地を建てる。」
一瞬、場が静まった。
風が吹いて、落ち葉が地面を転がる。
「――はぁあああああ!?!?!?」
末裔たちが一斉にざわめいた。
「団地!?」「異世界なのに!?」「団地って何!?!?」
ジローが半目で聞く。
「村長……朝から変なもん食った?」
だが、たすくの目は真剣だった。
「今、この村に護竜の末裔は百人いる。
でもな、この家じゃ全員は住めねぇ」
炭を手に、たすくは地面に五つの印を描きながら話し出す。
「だから、建てるんだ。
それぞれに合った場所を。
風を好むやつには、風の棟。
畑を耕すやつには、土の棟。
火を囲みたい奴には、火の棟。
静かに過ごしたいやつには、水の棟――」
最後に、ひときわ丁寧に、小さな○を描く。
「……そして、まだここにいない誰かのために。
“空の棟”を、用意しておく。」
ふくが小さく、微笑んだ。
「あなた、ほんとに……“誰か”のために家を建てるのね」
たすくは立ち上がり、全員に言い放つ。
「今はまだ見ぬ、でもいつかここに来る――その誰かのために、
“帰ってこれる場所”を、先につくってやるんだよ。」
末裔の少年が、ぽつりと尋ねた。
「……誰が来るの?」
たすくは、空を見上げて、ただひとこと。
「わかんねぇよ。でもな――
“迎える準備ができてる村”があれば、
きっと、来てくれるさ。」
タローが、護竜の家の屋根の上で「ぴぃ」と鳴いた。
地の精霊が、ぶるぶると肩を震わせる。
「うおおおおおお!!!なんか燃えてきたァァァァ!!!
土台任せろぉぉぉぉ!!!!」
火の精霊がキラキラしながら舞い上がる。
「オッケー☆全室床暖房でやっちゃうよぉぉぉ!!」
こうして、まだ誰も住んでいない“未来の家族”のための家が――
たすくの手によって、この村に、構想されはじめた。
それは、誰かを迎えるための建物じゃない。
――「誰かを待っていてもいいんだ」って、伝える建物だ。
――つづく。




