表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/131

ようこそ、末裔団地へ

木漏れ日が揺れる、静かな午後。


 


 山の中腹、護竜の家の前に、地面に木炭で描かれた雑な円と線。


 それを囲むのは、たすくと末裔たち、ジロー、サク、ふく、そして精霊たち。


 


「……これ、何の落書き?」


 


 末裔の少女が眉をひそめる。


 


 たすくは地べたに膝をつきながら、ニヤリと笑った。


 


 


「未来の設計図だよ。」


 


「は?」


 


「団地を建てる。」


 


 


 一瞬、場が静まった。


 風が吹いて、落ち葉が地面を転がる。


 


「――はぁあああああ!?!?!?」


 


 


 末裔たちが一斉にざわめいた。


 


「団地!?」「異世界なのに!?」「団地って何!?!?」


 


 ジローが半目で聞く。


 


「村長……朝から変なもん食った?」


 


 


 だが、たすくの目は真剣だった。


 


「今、この村に護竜の末裔は百人いる。

 でもな、この家じゃ全員は住めねぇ」


 


 炭を手に、たすくは地面に五つの印を描きながら話し出す。


 


「だから、建てるんだ。

 それぞれに合った場所を。

 風を好むやつには、風の棟。

 畑を耕すやつには、土の棟。

 火を囲みたい奴には、火の棟。

 静かに過ごしたいやつには、水の棟――」


 


 最後に、ひときわ丁寧に、小さな○を描く。


 


「……そして、まだここにいない誰かのために。

 “空の棟”を、用意しておく。」


 


 


 ふくが小さく、微笑んだ。


 


「あなた、ほんとに……“誰か”のために家を建てるのね」


 


 たすくは立ち上がり、全員に言い放つ。


 


 


「今はまだ見ぬ、でもいつかここに来る――その誰かのために、

 “帰ってこれる場所”を、先につくってやるんだよ。」


 


 


 末裔の少年が、ぽつりと尋ねた。


 


「……誰が来るの?」


 


 


 たすくは、空を見上げて、ただひとこと。


 


 


「わかんねぇよ。でもな――

 “迎える準備ができてる村”があれば、

 きっと、来てくれるさ。」


 


 


 タローが、護竜の家の屋根の上で「ぴぃ」と鳴いた。


 


 地の精霊が、ぶるぶると肩を震わせる。


 


「うおおおおおお!!!なんか燃えてきたァァァァ!!!

 土台任せろぉぉぉぉ!!!!」


 


 火の精霊がキラキラしながら舞い上がる。


 


「オッケー☆全室床暖房でやっちゃうよぉぉぉ!!」


 


 


 こうして、まだ誰も住んでいない“未来の家族”のための家が――


 たすくの手によって、この村に、構想されはじめた。


 


 


 それは、誰かを迎えるための建物じゃない。


 


 ――「誰かを待っていてもいいんだ」って、伝える建物だ。


 


 


――つづく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ