おひさまの家、ひらきます
トン、トン、トン――。
山の麓、広場の一角に木槌の音が響き渡る。
それは家を作る音でもあり、
“居場所”を作る音でもあった。
養護施設兼教育の場――おひさまの家。
そこには今、精霊たちが力を合わせて建てた木のぬくもりに満ちた家が立ち上がっていた。
地の精霊が手がけた床は、素足で歩くとほんのりとあたたかく。
火の精霊が設計した薪ストーブが、中央でパチパチと火を弾いている。
壁には、風の精霊が「ここに風が通ると気持ちいいから」と開けた窓。
その向こうには畑、山、そして――未来が見えた。
「……あたし、この部屋好きかも」
末裔の少女が、ぽつりと呟いたのは“読み聞かせの部屋”。
大きな本棚と、小さな丸い机。
ふくが手縫いで用意した座布団が並んでいる。
「ここでね、子どもたちとお話ししようと思ってるの」
ふくが微笑むと、少女は照れたように顔をそむける。
「……うるさいのは嫌だけど……泣いてる子がいたら、抱っこぐらいなら、する」
「ふふ、十分よ。それだけで、救われる子がきっといるわ」
そのころ外では、ジローと少年末裔たちが“畑つき家庭菜園エリア”の囲いを作っていた。
「なぁ、これ、本当に子どもたちが世話するのか?」
「教えるんだよ。タロー流・雑草見分け講座とかさ」
「ぴぃぃ!!(雑草は敵ぃぃ!!)」とタローが吠えて飛び出す。
「うわっ、ちょっ、踏むな!囲い壊れるぅぅ!!」
騒がしくも、あたたかい。
そんな笑い声が響く中――
ふくが、みんなに向かって声を上げた。
「お昼できたよー!!」
大きなお鍋には、ふく特製の“おひさまシチュー”。
かぼちゃ、じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、ミルクのやさしい香り。
「……なんか、うちのご飯より美味そうだな」とサクがこぼすと、
たすくがふっと笑った。
「だろ? ここはもう、学校でも、家でもあるんだ」
ジローがシチューをすすりながら、ぼそっと呟く。
「……この場所があったらな……俺の昔も、変わってたかもな」
たすくはスプーンを止めて、静かに言った。
「変えられなかった過去は、俺たちの中にちゃんと残ってる。
でも――それを知ってる俺たちが、“今から”変えられるんだよ。
誰かの未来をさ」
ふくがふわりと笑った。
「だから、今日からこの家は“ひらく”の。
子どもたちが来ても、来なくても。
いつか、来るその日のために――」
精霊たちも、そっと頷いた。
その瞬間、ふと風が吹き抜け、建てたばかりの表札がきらりと光る。
そこには、こう刻まれていた。
『おひさまの家』
――ここは、誰かの明日が始まる場所。
――つづく。




