護竜の家、建てます!
――午前中。
山の中腹、木々が開けた一角に、精霊たちと末裔たちが集まっていた。
「ここが“護竜の家”の建設地だ!」
たすくが指さしたその場所は、朝日がよく差し込み、地面も固すぎず柔らかすぎず。
タローが「ぴぃ♪」と鳴きながら、地面に腹ばいになって寝そべった。
「……おい、そこ居座られると掘れないんだけど?」
たすくの言葉に、タローはどかずに「ぴぃっ!」と開き直る。
ジローが肩をすくめた。
「こりゃ、タローの寝床は確定だな……」
地の精霊がズボォン!!と大地にスコップを突き刺す。
「まずは基礎からや!!村の底力、見せたるで!!」
その掛け声と共に、地面がウゴゴゴゴと唸り声を上げ、地盤が整えられていく。
巨大な石が地面からせり上がり、組まれ、並べられ、もうすでに“土台”が見えていた。
「え!?速すぎない!?」「3日でできるってこういうこと!?」
末裔の少年たちが驚いている中、風の精霊がぶんぶん飛びながら叫んだ。
「梁もどんどんいくでぇー!上棟式は夕方やな!餅投げするか!?」
火の精霊は、ちょっと浮かれ気味に金色の瓦を抱えて出現。
「はいはーい、壁暖房つきの寝室、どこにする〜?ムード照明もつける〜?」
「いや、ムードいらんて!誰と何すんだよ!!」とたすくが即ツッコミ。
その横で、ドマじぃは木材の上にちょこんと座っていた。
「ほっほっほ……夢みた光景じゃのぉ……」
その目は、確かに年老いていたが、どこか幼子のように輝いていた。
ふくは作業しているみんなにおにぎりを配っていた。
竹皮に包まれたそれは、まだほんのり温かく、少し塩が強めで、畑の青菜が刻んで混ぜてあった。
「たすくくん、ちゃんと食べながらやるのよ。働きすぎちゃだめだからね」
「はーい!」と返事しながら、たすくはがぶっとおにぎりを頬張った。
「……うんめぇぇぇええ!!ふくさん結婚して!!!」
「あら、私人妻よ?」
――そして、日が傾き始める頃には。
そこには、もう家が建っていた。
深い山の緑と、精霊の力を宿した木と石と火の温もり。
どこか懐かしくて、どこにもない――そんな不思議な家だった。
「うわ……これが、“俺たちの家”……」
少年が呟くと、少女がそっと玄関に手を触れる。
「……あったかい」
ドマじぃがゆっくりと家の敷居をまたぐ。
「……ようやく、帰ってこれたのぉ……」
その背中に、たすくが声をかけた。
「ようこそ、“護竜の家”へ」
タローが「ぴぃっ♪」と家の屋根の上で大きく鳴いた。
その声が、夕暮れの空に響いていく――
ここは、帰る場所。
家族と呼べる誰かと、暮らすための、あたたかい家。
“護竜の家”、完成。
――つづく。




