表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/130

護竜の長、初登場

村の広場に、ひときわゆっくりと歩く影があった。

 背を丸め、杖をつき、毛布を肩にかけた老人。


 


「……来たぞ、護竜の末裔の長だ」


 


 ユイラがそう言うと、村人たちがざわついた。

 たすくも思わず背筋を伸ばす。


 


 そして――その老人は、ぴたりとタローの前で足を止めた。


 


「……初めましてじゃのぉ……」

 ドマと名乗る老人は、タローに深く頭を下げた。


 


 「この身、生きとるうちに、まさかお主に再びお目通り叶うとは……」

 「……よくぞ、生きてくだされた……護竜よ……」


 


 その瞬間、場の空気が変わった。

 誰もが、いつもの「ぴぃ♪」と鳴くモフ竜に、かつての神話を重ねた。


 


 しかし――


 


「さてと!喋りすぎるとワシ、のどが乾いて死ぬのでな!」


 


 ドマじいはケロッと笑って、いきなりたすくの肩に手を置いた。


 


「お主がこの村の村長……ポチじゃな?」


 


 たすく「いや、“たすく”です!!!」


 


「たすけ……たすけ……うむ、ジャングル!」


 


「どこどうなったらそうなる!?」


 


「ワシが若い頃、ジャングルで木から落ちた話したかのぉ? そんときヒヨコが三羽降ってきてな?」


 


「今してるー!!!???」


 


 ジローがそっと耳打ちする。「タローより会話通じないヤツきたな」

 サクは目を見開いてつぶやく。「これが長……?」


 


 ふくは苦笑しながらお茶を淹れる。


 


「大丈夫よ。ドマさん、話長いけど、人の顔と名前だけはちゃんと覚えてるのよ」


 


 たすく「今、全然違う名前で呼ばれたんですけど!!?」


 


 そんなやり取りの横で、タローは小さく「ぴぃ」と鳴いた。

 それを聞いたドマじいの目が、ふいにすっと細まり――


 


「ふむ……ワシの昔話などより、お主の“歌”の方が……よほど価値があるのぉ……」


 


 その一言に、たすくは思わず息を呑んだ。


 


(今……一瞬だけ、全部わかってる目をしてた……)


 


 それは、村人たちすら知らない、

 “護竜の声”と“歌の力”を知る者の、たった一言だった。


 


 


 そして――


 


「ほっほっほ、ところでおぬし、“ウリ坊”に乗ったことはあるかの?」


 


「いや唐突!!しかもなんで乗る前提!!?」


 


 村にまたひとつ、“新しい風”が吹いた。

 それは、伝説の長老という名の……天然台風だった。


 

ーーーーー

 

ざわざわとにぎわう広場に、たすくの声が響き渡った。


 


「なぁ、ドマじぃ!!」


 


 杖をついてフラフラしていた長老が、ピタリと足を止める。


 


「……ん? ワシかの? 今ちょうど、タロー殿の毛の質感について論文を書いていたところじゃが」


 


「そこら辺の奴ら! 腹減ってるだろ!!」


 


 たすくが大きく腕を広げ、叫ぶ。


 


「ちょうど今日、夏野菜が山ほど収穫できた!!

 だからカレー作ったんだ!ナスもトマトもピーマンも芋も玉ねぎも、ぜーんぶ入ってる!!

 ふくさん特製のルゥだぞ!!めっちゃうまいぞ!!!」


 


 竜の翼をたたんだまま立っていた若者たちの目が、一斉にカレー鍋に向いた。


 


「食えぇぇぇええええええい!!!!」


 


 たすくの一声に、精霊たちが鍋を囲み、ふくが笑いながらスプーンを配り、

 火の精霊が「盛りはこのくらいでええな?」と勝手に山盛りにしていた。


 


「そしてな……!」


 


 たすくは、空を仰ぐように一呼吸。


 


「明日から!ビシバシ働いてもらうからなぁぁぁああ!!!」


 


「ええええ!?」


 


 サクがスプーン落としかけた。

 ジローが「ほらな、絶対こうなると思ってた」と呟いた。


 


 でも、たすくは続けた。


 


「ただ……ごめん!こんなに来るとは思ってなかった!!」


 


「えっ」


 


「今日の宿、足りない!!」


 


「ええええええええ!!!???」


 


「だから、今日は――野宿だぁぁぁあああ!!!」


 


 その瞬間、護竜の末裔たちがざわめいた。


 


「ちっさい子らは俺の家で寝てくれ!布団はある!」

「俺は外で、お前らと一緒に寝る!!」

「焚き火して、カレーの鍋囲んで、満月見ながら、友情深めるんだよ!!!」


 


 ドマじぃが杖を天に突き上げた。


 


「ほっほっほ!友情!!それが一番じゃあぁぁ!!!」


 


 タローが「ぴぃっ!!」と吠え、火の精霊が「よっしゃ、焚き火タイムや!!」と踊り出す。


 


 夜空に笑い声が響いた。

 この村に、新しい風がまたひとつ――吹き込んでいた。


 


 


――つづく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ