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おかえりサク、そして村は今日も全力だ

木々の合間から差し込む陽射しの中に、一人の男が現れた。


 軽やかな足取り。

 首には変わらず胡散臭いスカーフ。

 肩には、なにやら荷物の詰まった袋を下げている。


 


 ――旅人、サク。久しぶりの村への登場だった。


 


「……っ、なんだこれ……」


 


 村の入口で立ち止まったサクは、目を見開いた。


 そこには、以前とは見違えるほどの景色が広がっていた。


 


 グリーンハウスが整然と並び、湯けむりが山の斜面から立ちのぼっている。


 村の中心には広場。新たに張られた柵と、小さな遊具。


 そして――その中心に、見慣れた顔。


 


 


「よぉ、サク!」


 


 たすくが笑顔で手を振る。タオルを首にかけ、肩には鍬を担いでいた。


 


「この前、連れてってくれてありがとな!」


 


「……現実を見ていただいてありがとうございます。」


 


「お前のおかげで――この村は、進化したぜ!」


 


 


 どや顔のたすくに、サクが眉をひそめる。


 


「……え?」


 


 


 たすくはくるりと振り向き、腕を広げて言った。


 


「俺はこの村に、あの国の子どもたちを全員迎え入れる!!」


 


「……えっ???」


 


 さすがのサクも固まる。


 


「いや、ちょ、待ってください。それ現実問題、食料とかどうすんですか? 住む場所は?

 いくら何でも規模でかすぎじゃ――」


 


「じゃーん!」


 


 たすくは自慢げに、背後にある施設を指差した。


 


「精霊式グリーンハウス!!」


 


「っ……え!? グリーンハウス!?!?」


 


「そう、そう! 最短で野菜3日で出来る!しかもな、数も増やした!野菜も芋も小麦もばっちりよ!

 今んとこ食料問題は――クリア!」


 


 


「……じゃあ、住む場所は?」


 


「ひ み つ♡」


 


「いやいやいやいやいや!!??」


 


 サクは思わず叫んだ。


 


「今の流れでヒミツとか言います!?ちゃんと考えてます!?

 ってか俺、この2ヶ月ぐらいでまさか村がここまで化けてるとは…」


 


 


 たすくは笑って答える。


 


「まぁな。でも――まだまだ、ここは進化するぜ。

 サク、お前もまた来てくれて嬉しいよ

お前もこの村の家族だな」


 


 


 その言葉に、サクはしばし黙ってから、ぽつりと笑った。


 


「……あいかわらず、面白いですね。

 でも、なんか……いい風、吹いてるな、この村」


 


 


 遠く、風の精霊がくるくると空を舞う。

 どこか誇らしげに、空をきらめかせて――


 


 


 癒しと希望の村に、また一人、懐かしい風が吹いた。


 


 

その日の夕方。


広場では、夏野菜たっぷりのカレーが煮込まれていた。

(※もう冬直前だけど、野菜がとれすぎたから仕方ない)


精霊式グリーンハウスで採れたトマト、ナス、ピーマン。

ふく特製のルゥと、畑直送のじゃがいもと玉ねぎ。

「今が一番うまい時期やで〜〜!」と火の精霊がご満悦にぐつぐつ煮込んでいた。


 


たすくたちが鍋を囲んで、スプーン片手に盛り上がっていたその時――


 


「……おい、なんか音しないか?」


 


ジローが手を止めて空を見上げた。


バサッ……バサササッ……!


風を裂くような音。

空から、影が――いや、数えきれないほどの影が、村を覆っていた。


 


「なんだ、あれ……?」


 


その数、ざっと百。


黒く、鋭く、竜の翼を持った影たちが、宙を舞っていた。

その中に――見覚えのある姿がある。


 


「おぉー!やっと来たかー!!」


 


たすくが叫ぶ。


 


「あれ、護竜の末裔たちだ!!」


 


 


サク「……は???」


 


サクはカレー皿を取り落としそうになりながら、たすくに詰め寄った。


 


「え!?ちょ、まってください!!

 あの、歴史の本に出てくるっていう……

 山奥で滅んだはずの、伝説の護竜の末裔!?」


 


「そそ。滅んだって話だったけど――生きてた! てか、住むって言ってた!」


 


「えええええ!?

 なにその軽ノリ!? 重大歴史ミステリーが今解決しましたけど!?」


 


 


その時――


 


「――久しぶりだな」


 


先頭の一人が、ゆっくりと地に降り立った。


鋭い目をした女が、金色の瞳をたすくに向けて言った。


 


「たすく、約束通り来たぞ。末裔全員説得できた。今日から、ここが我らの“ねぐら”だ」


 


 


それは、護竜の末裔――ユイラ。


背中にたたんだ黒翼を揺らし、隣にはバシュとリンド。

そして、その後ろにずらりと並ぶ者たち――まさに“竜の民”だった。


 


「おぉ、ユイラ!サンキューな!」


 


 

「……まじか……

 今この村、“伝説”が二、三個並行して動いてる気がするんですけど……」


 


「慣れだ、慣れ」


 


 


村の空に、またひとつ――新しい風が加わった。


 


 


――つづく。


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