その村長、護竜を雑に抱きます
長い静寂のあと、たすくがぽつりと口を開いた。
「……なあ、ちょっといいか」
火を囲む面々が一斉にたすくを見る。
「お前らさ……なんでそんな詳しいの?」
その一言に、精霊たちの空気がピキッと凍る。
風の精霊が咳払いをしながら言った。
「……い、一応、精霊やからな? 見聞きできる範囲は広いというか……」
火の精霊:「せやせや!別にストーカーとか、そういうんちゃうからな!?誤解すなよ!?」
水の精霊:「……ちゃんと記録として、覚えてるだけ……」
地の精霊:「……精霊の務めっちゅうもんや。あんたらの歴史、見届けてんのも、仕事なの」
「……え、なにそれ。けっこう大変な仕事じゃん……」
たすくが目を丸くすると、風の精霊がふんぞり返った。
「せやろ? こっちはおもろいドラマ追ってる気分で聞いてたわけちゃうからな?」
「いや、なんの例えだよそれ」
くすくすと笑いが広がる中、たすくはタローの背中に手を置き、ふっと目を細めた。
「でも……ほんと、すげーよな、お前」
タローは「ぴぃ」と小さく鳴いて、照れたように目を伏せた。
そのまま、たすくは空を見上げる。
「……ただ、俺……」
ぽつりと落とされた声に、精霊たちも耳を澄ます。
「今、お前らとゆっくりすんの、たぶん無理かもしんねぇ」
風が静かに吹き抜ける。
「俺、あの国に置いてきた子どもたちがいるんだ。
小さいのに飢えて、泣いて、……それでも笑ってた子たちがさ」
たすくの拳が、そっと握られる。
「……あいつらを、ほっとけねぇんだよ」
ジローが煙たそうに空を見た。
「……やれやれ、村長ってのは、大忙しだな」
たすくは肩をすくめ、いつもの調子で笑った。
「ま、俺が何人いても足んねーくらい、やることあるけどな!
でも、そういうのって、さ――」
タローにぐいっと腕を回して、思いきりムギューッと抱きしめる。
「誰かがやんなきゃ、いつまで経っても、笑えねぇだろ?」
タローは「ぴぃぃっ!」と照れくさそうに跳ねた。
護竜の血を継ぐ三人は、呆気にとられた顔でその光景を見つめていた。
「……なにあれ。すごくない?」
「……ていうか、あの護竜様を、あんな雑に抱いてるけど……」
「……あれが、“村長”……?」
たすくは笑って、手を振った。
「ま、まずは仲良くやろうぜ。こっちはこっちで、いろいろあるけど――
お前らも、ここで暮らしてくなら、俺らのやり方に慣れてくれよな!」
そう言って、また歩き出す。
“未来”の方へ。
――つづく。




