護様って誰だよ。ちなみに俺、“たすく様”
村の空に、妙な静寂が降りた。
たすくは鼻をすすりながら、空に浮かぶ三人を指さした。
「……てか、“護様”って誰?」
三人の精鋭は揃って目を見開く。
「まさか……護様をご存じない……?」
「そんな、馬鹿な………」
たすくは胸を張って、堂々と言い放った。
「ちなみに俺、“たすく様”な? 村ではけっこうえらい村長様」
ジローがすかさず突っ込む。
「勝手に“様”つけんな」
たすくは続けて、空の小柄な少年を指差した。
「あとよ。そこのちんちくりんのチビ!」
少年――リンドが眉を吊り上げる。
「なっ!? だれがチビだ!! 貴様ごときが“護様”を騙るなら今ここで――!」
たすくは涼しい顔で言い返す。
「口悪いぞ。ちっちゃいのに“殺す”とか言ったらな……」
ジローが横目でちらりと見る。
「言ったら……?」
たすくはニヤニヤしながら、再び指を突き出す。
「お前のこと、“ジロー”って呼ぶぞ?」
「……誰だそれ?」
たすくは親指で隣のヤギを指した。
「そこのヤギ」
「ヤギィィィィィ!?」
ジローが目をむく。
「おい! なんで俺がヤギと同格になってんだよ!?」
そのときだった。
ふわりと、畑の向こうから、小さな影がぴょんと跳ねてきた。
毛むくじゃらで、ころんとした体。まんまるな目に、短い足。
一見、ただのモフモフの小動物――だが。
三人の視線が、その姿に吸い寄せられた。
ユイラが声を震わせる。
「……このオーラ……」
バシュが眉をひそめる。
「間違いない。……俺の体が、震えてる……」
リンドが膝をつき、うわずった声で叫ぶ。
「……護様……っ!!!」
三人は空中からすとんと地面に降り立つと、深々と膝をついて頭を垂れた。
「我ら、護様の御前に参上仕りました――!」
たすくはポカンとした顔で、そばのタローを見る。
「……あれ? お前、すげぇやつだったんか?」
タロー「ぴぃ(※俺も今知った)」
やがて三人は静かに顔を上げ、整然と一歩前に出た。
先頭に立つのは、漆黒の髪を背まで流す女。
その左目の下には、月のような銀鱗がかすかに光る。
その気品と鋭いまなざしに、たすくは思わず背筋を伸ばした。
「私たちは、護様の末裔。
長らく山奥の里にて、その血を守り続けてまいりました」
「名を――ユイラ。
戦術と統率を担う者。
この命、護様にお返しするためにございます」
続いて、巨体の男が無言で前に出る。
岩のような腕、片目を覆う銀鱗、厚い足取り。
「……バシュ。
戦うときは……俺が、前に立つ」
最後に進み出たのは、小柄な少年。
銀白の髪を束ね、眉間に紋のような印が刻まれている。
目には炎のような光が宿っていた。
「……リンドです……!
護様の血脈の中でも、“魔導”の一門を引く者……っ!
あなたが……本当に護様なら…このくだらぬ命一生を捧げます…っ」
ユイラとバシュはタローに向き直り、厳かに膝をつく。
「護様。どうか……私たちに、再びお仕えする許しを……」
タロー「……ぴぃ(※たすくに聞いて)」
たすく「え、俺ぇ!?」
こうして――
護竜の血を継ぐ、美しき三人の“ちょっとクセ強めな子孫たち”が、村にやってきた。
たすくのスローライフは、またひとつ、新たな嵐を迎えることになる――。
――つづく。




