ボイパとモフと、命を守る光
その日――村の空は、いつになく騒がしかった。
大きな影が、いくつも雲の上をよぎる。
見上げれば、鋭い爪と翼を持つ魔物たちが旋回していた。
「村長!外には出ないでください!」
「牛も鶏も小屋に入れて!すぐに!」
村人たちは急いで納屋や家に避難し、空を見上げて不安を押し殺していた。
たすくも納屋の中で、しばらくの沈黙を守っていた――が。
「……おれ、次は“ボイパ”始めようと思うんだよな!」
\ブフゥ!!!/
ジローが水を吹いた。
「てめぇ、こんなときに何言い出してんだ!?」
たすくは得意げにスコップをマイクに見立てて構えた。
「チッカチッ……ぷぴっ……ずばっ……ッ!!!」(つば飛びまくり)
「ぴぃぃぃっ!!(やめてええええ!!)」
(タロー、全力で鍬に突っ伏す)
ジロー「……なあ、タロー。
こいつ、ただ唾飛ばしてるだけだよな?」
たすく「失礼だな!!**“ボイパ”だぜ!?**魂のリズムだよ!?」
ジロー「魂どころか、湿気しか伝わってこねぇよ……」
「今に見てろよ……俺の音で、何かが目覚めるかもしれないだろ!!」
ジロー「それならまず……窓の外に出てる“ひよこ”起こしてやれよ」
「……えっ?」
――畑の端を、よちよちと歩く黄色い影。
「ひよこ!?なんで外に――!?」
たすくは迷わなかった。
扉を開け、猛ダッシュで外に飛び出す。
「待ってろ!!今行く!!」
風が強くなった。
空が唸った。
上空の魔物が、たすくの動きを察知する。
「……っくそ!」
たすくはひよこを抱えて背中を向けた瞬間――
ザシュッ!
鋭い爪が地面を切り裂き、たすくの肩をかすめた。
「ぐっ……!」
赤い血が、地面にポタリと落ちる。
タローの目の前で。
「ぴ……ぃ………………」
小さく震えるモフの身体。
「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!!!!!」
――光が、炸裂した。
モフモフの輪郭が揺らぎ、まばゆい光があたりを包む。
たすくが目を開けたとき、そこには――
モフッとした、大きなドラゴンがいた。
瞳は金色。白銀の鱗が煌めき、モフモフだった体は巨大な獣へと変わり、その背には、金色の翼が生えていた。大地にしっかりと足をつけて、空をにらみつけていた。
「お前……タロー……?」
モフドラゴン・タローが、たすくの前に立つ。
そして――
「ゴォォォォォォォオオオオッ!!!!!!」
天に向けて、光の奔流をぶちかました。
上空の魔物たちは、光に驚き、唸り声を上げながら散り散りに逃げていった。
静寂。
タローは、ゆっくりとたすくの方を振り向き、
「……ぴぃ」と一声、やさしく鳴いて――
もとの、小さなモフモフに戻った。
*
たすくは、モフをそっと抱きしめてつぶやいた。
「……なんだよ、かっこよすぎだろ」
「……でも、無茶すんなよ。
お前は俺の――大事な家族なんだからさ」
モフが、うれしそうに「ぴぃ」と鳴いた。
ジローが後ろで目をそらしながらつぶやく。
「……泣かせんじゃねーよ、バカモフ……」
――その日。たすくの村は、命と、想いと、光で守られた。
モフはただの癒し系じゃない。
命を守る“相棒”だった。
次回、『精霊たちも震えた!?たすくの歌の“本当の力”』に続く――!!




