この村を、もう一度生かす。村長たすく、宣言する
夕暮れ時――
畑の中央に、大きな木のテーブルがいくつも並べられていた。
皿の上には、ふく特製のナス味噌炒め。
まごじいが漬けた懐かしい味の漬物。
そして、たすくが心を込めて握ったモフ毛おにぎり。
(※見た目は少々アレだが、味は保証つきである)
村の総勢二十人が久しぶりに一堂に会し、
わいわいと笑い、箸を伸ばし合う声があちこちで響いていた。
そんな中、木箱の上にひょいと飛び乗ったタローが、
「ぴぃっ!」と一声、高らかに鳴いた。
「……おい、始めんのか?」
ジローがぽつりと呟く。
たすくは立ち上がると、腰にぶら下げていたスコップを手に取った。
その柄の部分を、マイクのように握り直す。
(そう――これが、俺のやり方だ)
ぐっと息を吸い込み、前に進み出た。
いつしか村人たちが、静かに耳を傾けていた。
「――えー、今日は集まってくれてありがとうございます」
少し照れたように頭を下げてから、たすくは語り始めた。
「この村に来たとき、俺は何も持ってなかった。
記憶もないし、寒さに震えて、腹を空かせて……
あったのは、モフ――あいつだけでした」
「でも……モフが命をくれました。
この村の人たちが、俺に“居場所”をくれました。
そして畑が、“希望”をくれたんです」
しばしの沈黙――
彼は拳をぎゅっと握り、力強く宣言した。
「だから、俺は決めました。
この村を、もう一度、生かします!!」
「俺は、ここを“世界でいちばんあったかい村”にします!!」
「改めて――村長として、生きていきます!!!」
一瞬の静寂。
次の瞬間、拍手と歓声がどっと湧き上がった。
「たすく村長、ばんざーーーい!!」
「よっ! 村長ぉ!!」
「ぴぃぃぃぃぃ!!(なけるっ!!)」
パチパチパチパチ……
笑顔と涙が交じり合う、温かな渦の中――
ジローが、ぽつりと呟いた。
「……やっと言ったな、“生きる”ってさ」
照れくさそうに笑うたすくは、スコップマイクをもう一度構えた。
「よし、それじゃあ――この村のテーマ、歌うぞ!!!」
\やめとけぇぇぇぇ!!!/
(村民全員による全力の総ツッコミ)
「……いや、ちょっとだけ聞いてみたい気もするのう」
まごじいがニヤリと笑い、
「たすくビート、いい曲だったわよ?」
ふくまで味方に回る。
「洗脳が広まってる……ッ!!」
ジローは頭を抱えた。
***
夜になり、囲んだ火のあかりが村人の顔をほのかに照らす。
誰かが歌い始め、誰かが笑いながらそれに続いた。
手拍子が加わり、足踏みが加わり、
笑って、歌って、食べて――
“ここにいていい”と、心から思える夜だった。
たすくはふと、空を見上げた。
ゆっくりと、ぽつりと言葉をこぼす。
「……ここが、俺の帰る場所だ」




