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白き病と、俺たちの知恵

朝――


畑に出たたすくは、目を疑った。


 


「……うそだろ、また白くなってる……!?」


 


キュウリの葉に、うっすらと粉をふいたような白い模様。数日前、みんなで乗り越えたはずの“うどんこ病”が、再び畑に現れていた。


 


「くそっ……なんで……せっかく、ここまで育ったのに……」


 


隣ではタローが青ざめた顔で「ぴぃ!?」と悲鳴をあげる。


 


たすくは歯を食いしばり、手を握りしめた。


《スキル:癒し(中級)》

【発動不可:対象範囲外】


 


「……また、使えねぇのかよ」


 


癒しのスキルも届かない。たすくは顔を伏せたまま、何もできない自分を噛みしめていた。


 



 


その日、ふくが温かいスープを持って納屋にやってきた。


 


「うどんこ病、また出たのね」


 


「……はい。でも、癒しが効かなくて……」


 


横にいたまごじいが腕を組んでうなった。


 


「そろそろ“知恵”の出番じゃのう」


 


「知恵……?」


 


その時、ジローがぽつりと呟いた。


 


「……昔、うちの村でも似たようなのが出た時、じいさんが“重曹水”っての使ってた気がする」


 


「重曹……? 掃除に使うあれ?」


 


「たしか、水に混ぜて葉っぱに吹きかけるんだよな……詳しくは知らねぇけど」


 


すると、ふくが手を打った。


 


「それ、私も聞いたことある! 石けんをちょっと入れて、スプレーで散布するのよ!」


 


たすくの顔に光が戻る。


 


「やってみましょう!……守りたいんです。みんなで育てた、この芽を」


 


まごじいがニヤリと笑った。


 


「よし。ならばワシの“裏技霧吹き術”を見せてやろう」


 


ジローが冷めた目で言う。


 


「霧吹きに技もへったくれもあるかよ……」


 


「やってくれるんですね!? ありがとう、みんな!!」


 


「ぴぃぃぃ!!(復活のターン!)」タローが高く鳴いた。


 



 


【重曹スプレーの材料】

・重曹:小さじ1

・水:500ml

・液体石けん:ほんの少し


 


たすくが材料を混ぜ、ふくが優しく補助し、まごじいが細かい比率を指示する。


ジローは、なぜかスプレーボトルを離さず抱えていた。


 


「……俺のスプレー、勝手に使うなよ」


 


「なにそのマイスプレー愛……」


 


「ぴぃっ(かわいい)」とタローがつぶやく。


 



 


夕方の畑。葉の表と裏に、丁寧にスプレーを吹きかけていく。


シュッ、シュッ。

リズムよく音が響く。タローは跳ねながら応援し、ふくは水分のバランスを見て声をかける。


 


やがて――


白くなっていた葉の一部が、ほんのわずかに緑を取り戻しはじめた。


 


「……効いてる」


 


ジローがぽつりと微笑んだ。


 


「……じいさん、ありがとな」


 


スプレーを持つたすくの手に、力がこもる。


 


「……誰かが残した知恵って、今こうして、生きるんだな」


 


まごじいが、ゆっくりと頷いた。


 


「知恵とはな、命を“つなぐ”もんじゃ」


 


ふくが微笑む。


 


「……みんなで守った畑だもの。きっと、これからも大丈夫よ」


 


「……うん。よし、明日は――食べよう」


 


「ぴぃぃっ!!(ばんざい!)」


 


 


――次回、“たすくの歌が村中に響き渡る!?”

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