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薄幸少女の旅支度  作者: やどん。
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万色の魔都と薄幸な彼女 4

先生になって欲しい、その願いは魔術士として1人前になることを夢見るものが全員1度は誰かに口にするもの。一般的に魔術というものは広く知れ渡っているものの皆が皆使うわけではないし、なんなら使わない人の方が多数派だろう。そして魔術にもそれぞれ難易度がある。例えばこの国に住む人たちのほとんどは魔術を使うもののそのほとんどはほうきを使ったり、火を起こしたり、水を生み出したり、その程度の魔術しか使うことが出来ない。それ以上の例えばシエナのように訪れた国で小遣いを稼ぎつつ旅を続けるなんて生活はせめて魔術技能認定試験の5段階評価のうちの真ん中、蒼星レベルが無いと無理な話だろう。

なぜこんなにも彼女が必死になって懇願するのか、その事情は分からないがそれにはこの魔術認定試験のシステムが関係している。魔術認定試験を受ける際に必要なものとして、受験する色以上の資格を持つ魔術師から指導を受け推薦状を書いてもらうこと。つまり先生となる人物を探す必要がある。ただ白金の認定試験を受ける際には推薦状は必要ない。それは一重に白金の鎖を持つ魔術師の少なさからなる。彼女がなぜあんなにも必死だったのか、その事情は分からないが生活基盤になる程度の、灰銀レベルの魔術では解決することの出来ない問題でもあるのだろう。だから白金の鎖を持つシエナに弟子入りを打診してきた。そこまでは推測することが出来る。ただ1つ分からないのはなぜシエナに、今日会ったばかりの名前も知らない魔術師にそれを頼むのか。魔都と呼ばれるこの国には先生になることを依頼する魔術師などありふれているはずである。もしや白金レベルにならないといけない問題でもあるのだろうか。それほどにまで重大なことならば先程の様も説明がつく。


「でも、そのために弟子入りを志願するのはなんというか…あまりに回りくどいというか…」


白金の認定試験を受けるレベルに到達するまで、一体どれほどの時間がかかるのか。数ヶ月とかそんな話じゃない。数年、下手すれば数十年かかってもなることは出来ない。ベッドに背中を預け天井を見ながら考えをめぐらせる。ついさっきの出来事だったのに随分と前のことのように感じられる。それほどまでに長く思案していたのだろうか。考える度に彼女の弱々しい姿が脳裏に浮かぶ。幾分ばかりの罪悪感を覚えながら目を瞑る。

気にする事はない、この国には他にも大勢の魔術師がいるんだし、彼女の先生となる人物もきっとすぐに見つかる。それに名前も知らない彼女のことなんか次の国にでも行けば忘れるだろう。そう自分に言い聞かせながら、シエナは眠りについた。


翌日、昨日に引き続きシエナは観光に勤しんでいた。ほうきに乗って上から見るのは昨日で十分だと思い、地におり自分の足で歩いて見ることにした。魔都故に魔術に目を向けがちだが1つの国としてよく整備されていると感じる。荒れてる場所とか見当たらないし。


「いや、魔術が発展してるからこそ労力とか必要な資金とか削減できるのか…。」


綺麗に舗装された石畳の上を歩きながら呟く。曲がりくねった道を歩くとまるで迷路に迷い込んでしまったようでワクワクする。これはほうきに乗ってるだけだったら味わえないな、なんて考えながら道なりに歩く。別に目的地とかあるわけではない。気の向くままに歩いてみよう、それが今日のシエナの予定だった。

少しすると人が行き交う幅の大きな道に合流する。周りを見てみるとここに限りほうきに乗っている人よりも歩行者が大勢いることが確認できる。道沿いには飲食店であったり宝石店、本屋さんとかの店が確認できる。それらの店と店の間には露店やら屋台がずらりと並んでおり、非常に繁盛していることが見て取れる。


「ここは…この国の大通ってところですか」


興隆する雰囲気にあてられ気分が浮つく。露店のうちの1つに目が止まる。多少の人だかりができていたため気になったのだ。その人ごみの端っこに加わり露店を覗く。

数人で取り囲むようにして見ていたのは1人のお客さん。彼は露店の前の椅子に神妙な顔持ちで座っていた。その前には水晶のようなものに手を当て目を瞑りながらむむむと声を発する女性。どうやら占いを行っている真っ最中のようだった。カッと目を見開いた占い師の女性は黒色のローブに体をつつみ、頭までフードで覆ういかにも占い師って感じの格好だった。


「ずばり!今日です!」


そう言い放つ占い師に対し、おおーっ、とどよめきがあがる。


「あの、何を占ってたんですか?この人。」


隣にいた人に聞いてみる。


「ん?ああ、このあんちゃん運命の相手をうらなって貰ってんだとよ。そんでその相手は今日出会うらしい。」


「はえー。そりゃまたすごい。」


「そ、それで!その相手ってのはどんな人なんですか!?」


身を乗り出しせがむように聞く客の男。占い師は自信たっぷりに言う。


「その相手はあなたにとってこの人しかいない。そう思えるような可憐な乙女でしょう。優しく清い心を持つ彼女はきっとあなたに好意を…」


「そんなことどうでもいいよ!かわいいの!?どんな顔!?見た目してんの!」


うわぁ、最低。優しい心とかどうとかより顔の方が大事なのか。


「え、えっと…。」


言葉に詰まる占い師。詳細な見た目にまで質問されるとまずいようだった。当然と言えば当然。元来占い魔術なんてものは存在しない。占い師を生業とする彼女らは占いというものを魔術という枠組みの外にあるものだと言うが信用に値するものでは無い。自分も以前訪れた国で占いを受けたことがあるが最終的に口論にまで発展したことを思い出す。そんなことを思い出してたら占い師の女性とバッチリ目が合う。彼女は私を見た途端。


「その相手とは紫色の髪をした少女です。」


と、自信を取り戻して言う。むらさき…。


「そんでそんで!?」


「髪色は毛先に向かって紫がかったグラデーション…ともすれば白銀のように見える…。で少しウェーブ気味で長い。。身長は平均的で年齢は若く、華奢な体つき。の女の子…。そう見えます。」


水晶に手を当てつつ薄目でこちらを見ながら答える占い師。髪、身長、年齢。全部自分に当てはまっているじゃないか。


「めっちゃ具体的じゃん!すげーな占い師!」


馬鹿丸出しで喜ぶ客の男。こんの詐欺師が…。適当に誤魔化せばいいものの自分を見て特徴をそっくりそのまま伝えやがった。この男に捕まったら面倒だと思い、三角帽子を深く被り直し足早にその場を後にする。やはり占い師などろくなものではない。

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