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第31話 覇緒ちゃんとゲーム大会へ行く

 ……そしてゲームの大会が開催される日曜日。俺は覇緒ちゃんと電車に乗って大会の会場へと来ていた。


「うわー……こんなところでやるのかぁ」


 目の前にそびえ立つドーム球場を見上げる。


 なんだか想像以上に大きな大会のようであった。


「日本中の有名プレイヤーがここに集まって来るっス! 燃えてきたっス!」

「覇緒ちゃんはすごいなぁ。俺は会場を前にしただけで圧倒されちゃって……」


 一応、俺も出場予定だが、勝ち抜ける気はしなかった。


「久我島先輩は強いっす! がんばるっすよー!]

[うん。ありがとう。がんばってみるよ」


 覇緒ちゃんには勝てないので優勝は無理だが、せめて1勝くらいはしたい。


「じゃあ行くっスー」

「うん」


 俺たちが会場へ入ろうとしたそのとき、


 ジリリリリリ!!!


「うおおっ!?」


 なにかものすごく馬鹿でかい音が側で聞こえて驚く。


「あ、電話っス」

「で、電話?」


 スマホを手に持った覇緒ちゃんがそれを耳に当てる。


「うん、うん。わかったー。はーい。あ、ママっス。この近くにある有名なお店でケーキ買って来てほしいって。ママ食いしんぼーっス」

「そ、そう。てか呼び出し音でかいね」


 でか過ぎて心臓飛び出るかと思った。


「あーたまに家の中でどこかに置き忘れちゃうんスよねー。そういうときは呼び出し音がでかいとすぐ見つかるっスから、音が大きくなるように改造してもらったっス」

「そうなんだ」


 ありえないくらいのでかい音だった。まあ覇緒ちゃんの家はめっちゃ豪邸だし、置き忘れたらこれくらいでかくないとすぐには見つからないかも。


「けど外だと音大きいの周りに迷惑っスね。小さく設定を……あれ? どうやるんスかね? スマホってよくわかんないっス」

「あ、もうすぐ大会が始まっちゃうよ。先に中入ろうか」

「あ、はいっス!」


 音を小さくする設定はあとにしてもらい、俺たちは大会の会場へ入った。


「人がたくさんっス!」

「そうだね」


 会場内は大会の観戦者など多くの人がいた。


 ……人が多いということは、想定の事態も起こってしまうわけで。


「あの子かわいくね?」

「うわ、ゲストでアイドルとか呼んだのかな?」

「そんな告知なかったし、見たことない子だぞ」

「新人なのかな? これからすごい人気出そうだなー」

「俺サインもらっとこうかな……」


 案の定、覇緒ちゃんが注目されてしまっている。アイドルと勘違いされるのもしかたない。この子は見た目が良すぎるのだ。


「なんかアイドルが来てるらしいっすねー。わたしもサインほしいっス」

「ははは……。そうね」


 そのアイドルのサインなら覇緒ちゃんはたくさん持ってるだろうと思う俺だった。


 ……やがて大会の開始時刻となる。

 会場の中心に設けられたステージへ進行役の人が上がる。


「本大会に参加していただいた方々、並びに観戦に来ていただいた皆さま方、ご足労いただきありがとうございます。大会を始める前に優勝候補のプレイヤーを紹介させていただこうと思います」


 と、ステージに数人のプレイヤーが上がる。


「わわ、有名なプレイヤーがいっぱいっス! あ、あの人とはネットで対戦したこともあるっスよ!」

「そうなの?」


 てか覇緒ちゃんってネット対戦無敗だよな。ということは有名なプレイヤーにも勝ってるってことか。


 もしかしたら本当に優勝しちゃうかも。


 俺の想定より覇緒ちゃんはすごいプレイヤーだ。これは本当に優勝を期待できると、自分のことではないのに俺は興奮していた。


「さあ、最後に紹介するのは無敗の女王こと、戦国777さんの登場です」


 進行役の紹介を受けて優美な雰囲気の金髪女性がステージへと上がる。


 年齢は二十歳くらいだろうか。煌びやかなドレスを纏った姿はまさに女王様な雰囲気で、ゲームとは無縁そうな見た目だった。


 話に依れば戦国777さんは特別枠で、ネット対戦のランキングは関係無いらしい。そもそもランキングには見かけないので、ネット対戦はしていないのだろう。


「こんにちは皆さま。今回も楽しい大会にしましょうね」

「うおおっ! 女王様ーっ!」

「今日も勝って無敗伝説を続けてくれーっ!」


 他の有名なプレイヤーが紹介されたときよりも歓声がすごい。無敗の女王様はゲームの腕の腕に比例してか、人気もあるようだ。


「女王様女王様ーっ! がんばってくださいっスーっ!」

「いや覇緒ちゃんも出場するんだから、女王様を倒す気でいないと」

「そこまでの自信はないっスよー」

「覇緒ちゃんなら勝てるよ。がんばって」

「うーん……」


 唸った覇緒ちゃんは迷うような表情を見せ、それから上目づかいで俺を見る。


「どうしたの?」

「あ、いや……なんでもない、っス」

「もしかして優勝のご褒美がほしいとか?」

「ふぇっ!? 久我島先輩はわたしの心が読めるっスかっ?」

「いやなんとなく」


 やっぱりご褒美がほしかったみたいだ。


「じゃあ優勝したら俺からなにかご褒美をあげるよ。って言っても、覇緒ちゃんが喜ぶようなものをあげられるかわからないけど」


 お金持ちの覇緒ちゃんを喜ばせることのできるものを俺があげられる自信はなかった。


「あ、じゃあ、あ、あの……」

「うん?」


 覇緒ちゃんは俯いてもじもじとする。


「ゆ、優勝してから言うッス!」

「そう?」


 まあ優勝したらの話だし、それでもいいことだ。しかし優勝できなかったとしても、がんばったご褒美はなにかしらあげたいと思った。

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