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第162話 おにいに会いたい義妹

 ―――獅子真兎極視点―――


 パパに投げられたわたしは庭の端へと転がる。


「パパっ!」

「会長っ!」


 爆発に巻き込まれたパパへ向かってわたしや組員たちは叫ぶ。


 まるでミサイルでも着弾したような大爆発だ。

 こんなのいくらパパでも……。


「……ああ、クソ」


 そのとき煙の中から大きな身体が出て来る。


「パパっ!」


 黒焦げのパパが身体を払いながらこちらへ歩いて来ていた。


「か、会長、お怪我は?」

「平気だ。30万もしたパジャマが黒焦げだけどな。まったく……」

「パパ……本当に大丈夫なの?」


 爆発の衝撃を間近で受けたように見えたのだが……。


「ああ。お前を投げたあとに少しだけ離れたからな。この程度で済んだぜ」


 それでも普通なら死んでいるほどの衝撃だ。

 やはりパパは人間じゃないと思った。


「お前は大丈夫か?」

「う、うん」


 天菜との喧嘩で身体中、痣だらけで血まみれだが、爆発による怪我はなかった。


「そうか。よかった。……兎極、絶対に負けたくない、負けるわけにはいかないっていう強い思いを理解できたようだな」

「うん」


 おにいのことを想うだけで、負けたくないという気持ちが奮い立って力が沸いた。そのおかげこうして命懸けの喧嘩に勝つことができたのだ。


「もう俺がお前に喧嘩で教えられることはない。ふっ、お前が男だったら、良い後継ぎができたって喜ぶところなんだけどな」

「かわいい女の子でごめんね」


 そう言うと、パパは笑ってわたしの頭を撫でた。


「いや、それよりも兎極、さっきの奴は普通じゃない。なんだありゃ?」

「改造人間……らしいけど」


 しかしなぜ天菜が改造人間に……?


 こうなってしまってはもう問い質せないが、気になることだった。


「うーん……もしかしてロシアンマフィアがまた日本へ進出を目論んでいることと関係があるのかもしれねぇな」

「ロシアンマフィアって……」


 以前、難波組と組んでパパの命を狙ったプーリアという組織が思い浮かぶ。


「プーリアだ。連中がまた日本に入り込んでるって情報があってな。どうも連中、妙な科学者に人体改造の研究をやらせてるって噂があるんだ」

「それが天菜だったかもしれないってこと?」

「ああ。さっきの奴が工藤純也と海外に逃げたのは知ってるんだ。もしかしてロシアへ逃げて、プーリアと接触してたのかもしれねぇな」

「……馬鹿な奴」


 わたしへの復讐心なんて忘れて普通に暮らしていれば、こんな結末にならず済んだだろうに……。


 最後まで愚かな女だったと、憐れに思った。


「あ、お、おにいのほうにも改造人間が……っ」


 天菜の言っていたことが真実なら、おにいも改造人間に……。


「あいつもプーリアとは因縁があるからな。けど大丈夫だ。五貴のほうには士郎がついている」

「そ、そっか」


 それを聞いてホッとする。


 パパと同じくらいに強いお父さんが側にいるならば、おにいは大丈夫だろう。


「しかし奴らが俺を狙って来るならわかるんだが、お前のほうを狙って来るとはな」

「いや、天菜の考えはプーリアと関係無いよ。あいつはわたしへの恨みしかない、それだけの奴だったから」


 命令なんて無視してわたしを殺しに来たのだ。

 そういう奴である。


「あ、そういえば改造人間がおにいを攫うって確か言ってたけど」


 わたしを攫ってパパを脅迫するというならわかる。

 しかしおにいを攫う理由はよくわからなかった。


「なにか攫う理由があるんだろうな。とにかく五貴は士郎がいるから大丈夫だ。しかし難波組の娘が狙われる理由も気になるな」

「それは……まあ」


 チビ女はどうでもいいけど、狙われる理由は気なる。難波組の人間なら、むしろプーリアは味方な気もするし……。


「まあとにかくいろいろと調べてみるからよ。お前はおとなしくしてろ」

「けど……」


 おにいに会いたい。

 だけどいつまた天菜みたいのが襲って来るかわからないし、迂闊に行動するのは危険だということも理解していた。


「うん? うん……なんだ? 五貴に会いてーか?」

「それはその……うん」

「はあ……」


 パパはため息を吐いて頭を掻く。


「お前、本当に五貴のことが好きだな」

「うん」

「パパよりもか?」

「うん」

「そうか……」


 ちょっと残念そうにパパは笑う。


「しょうがねぇな。ひとりで勝手に会いに行かれちゃあぶねーし、俺と一緒に五貴のところへ行くか」

「う、うんっ」


 ひさしぶりにおにいに会える。それがわかったわたしの表情は自然と笑顔になった。


 ロシアンマフィアのことは気になるけど、パパと一緒ならば大丈夫だ。パパに喧嘩で敵う人など、いるとしてもお父さんくらいだ。ロシアンマフィアが襲撃してきたって怖くは無い。


 明日、おにいの家へ行く。


 そうパパと決め、医務室で怪我の手当てを済ませたわたしは、部屋に戻って明日を楽しみにしながら寝た。



 ……



 そして次の日、沼倉さんの運転でパパと一緒に車でおにいの家へと向かう。


 おにいは大丈夫だろうか?

 お父さんが一緒なので大丈夫だとは思う。しかし改造人間が攫いに行っているというのはやはり心配であった。


「もうすぐ着きますよ」


 そう沼倉さんに言われ、もうすぐおにいに会えるとわたしは胸が湧き立つ。


 そして車が止まり、わたしはパパと一緒に後部座席から降りる。……と、


「ん?」


 そこへ見覚えのあるバイクが走って来て止まる。


「あ、てめえっ!」


 案の定、そのバイクのうしろには頭や手に包帯を巻いたチビ女が乗っており、運転はなんかでかいじいさんがしていた。。


「あ、デカチチ」

「てめえ、やっぱりわたしがいないあいだおにいのところへずっと……」

「あたしもひさしぶりに来たんだけど」

「えっ?」


 ひさしぶりに来た?

 わたしがいないあいだ、ずっとおにいの付き纏ってると思っていたんだが。


「うん? んん? お、おいまさかこのじいさん……」

「ま、まさか……い、いや、亡くなったって俺は聞きましたけど……」


 なぜかパパと沼倉さんはゾッとしたような表情をしている

 その視線の先には謎のでかいじいさんがいた。

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