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第153話 おにいを狙うあの男

「は、覇緒ちゃんっ!?」


 浴場に突如として現れた覇緒ちゃんに驚いて俺は声を上げる。


「こ、ここ男湯……」

「うちのお風呂なんで男女を分けてなんていないっスよ」


 まあそれもそうであるが……。


「大丈夫っス。ちゃんとタオルは巻いてるっスから」

「いやあの、俺はタオル巻いてないよ……」


 そう言いつつ、自分の股間を両手で覆う。


「乳白色の入浴剤が入ってて、下は見えないから平気っス」

「そういう問題じゃないような……」

「先輩の背中を流させてほしいっス」

「えっ? いや、覇緒ちゃんにそんなことさせるのは……」

「流したいっスーっ!」

「わあっ!?」


 いきなり抱きつかれてびっくりする。


 中学三年生とは思えない爆乳。

 その柔らかい塊が俺の胸板を押して潰れていた。


「だ、だだだ抱きついちゃダメだよ覇緒ちゃんっ!」

「嫌っすか?」

「い、嫌とかそういうことじゃ……」

「なら離れないっス」

「ほおお……っ」


 ますます強く抱きついてくる。


 もう為すがままだ。

 股間はムクムクとなり、このままでは覇緒ちゃんの肌に触れてしまう。


「ダ、ダメだよ覇緒ちゃんっ。こんなエッチなことしちゃ……」

「してもいいっス。だってわたし、先輩のこと好きっスもん」

「えっ? あ、その、それは……」

「恋愛的な意味で好きなんス」


 これは告白。

 それを受けた俺は答えに詰まってしまう。


「先輩が姉御を好きなのはわかってるっス。けどわたしも先輩のことが好きなんです。この気持ちは変えられないんです」

「けど覇緒ちゃん……」

「姉御にも朱里夏さんにも負けません」

「……」


 言葉に強い気持ちが感じられる。

 その強さに、俺の言葉は飲み込まされた。


「パパにはああ言ったけど、本当は先輩と結婚できたら嬉しいです。野球選手になるとかそんなのはどうだっていい。婿入りじゃなくてもいい。ただわたしは先輩と結婚ができたら嬉しいんです」

「覇緒ちゃん……」


 覇緒ちゃんと結婚。そんなことは考えたことも無い。

 しかし覇緒ちゃんと結婚をしたらきっとしあわせにはなれるだろう。覇緒ちゃんは素敵な女の子だし、ご両親も立派な人たちだ。俺なんかにはもったいない、素晴らしい結婚相手だと思う。けど……。


「覇緒ちゃんの気持ちは嬉しいけど、俺……」

「ダメですっ!」

「わっ!?」


 覇緒ちゃんにグイグイと押され、湯船の端まで後退させられる。


「そんなのダメですっ! わたしと結婚しないなんて絶対にダメですっ! 先輩はわたしと結婚をするんですっ! ずっと一緒にいたいんですっ!」

「いやでもね、覇緒ちゃん……」

「嫌ですっ!」


 答えを聞く気は無い。

 そんな勢いであった。


「大好きなんです先輩が。わたしの結婚相手は先輩しかいません」

「は、覇緒ちゃん……」

「先輩のここ……わたしでこんなになってる」

「はわっ!?」


 大きくなりきってしまった股間のアレを覇緒ちゃんの指がつつく。


「これ、わたしに興奮してるってことですよね? わたしに興味があるってことですよね?」

「いやあの……」

「身体は正直です」


 返す言葉も無い……。


「先輩のことが大好きです。このままわたしのことを抱いてください。わたしを先輩のものにしてください。お願いします……」


 搾るような声で覇緒ちゃんはそう言う。


 あまりに強い想い。

 俺なんかをこれほど想ってくれる覇緒ちゃんに、俺はなにも言えなくなる。


 どうしたらいいんだ?


 俺には兎極がいる。

 どんなに強い想いをぶつけられても、想いに答えるわけには……。


「――あたしも五貴君が好きよ」

「えっ?」


 どこからか男の声が……。

 聞いたことのあるようなその声のした方角へ目を向けると、


「お、お前はっ!?」


 湯気の奥に現れた身体の大きな男。

 全身に布を被っていて姿は見えないが……。


「まさか……工藤純也、か?」

「ご名答」


 被っている布を取り去る。

 現れたのは、ブーメランパンツ1枚の工藤純也であった。


「ほほほ、五貴君と初めて会ったのもお風呂場だったわね。ふふん。丁度、裸だし、このまま捕まえておいしくいただいちゃおうかしら」


 そう言って工藤はペロリと唇を舐める。


 俺は身体をゾゾゾっと震えさせつつ、覇緒ちゃんを背後に庇いながら工藤の動きに注視をした。


「なんでお前がこんなところにいるんだ?」


 天菜と一緒に行方不明になったと聞いた。

 その奴がなぜここにいるのか?


「五貴君と楽しむため……と言いたいところだけど、本当の目的は違うわ。あなたを攫って来るよう命令をされたの?」

「命令をされた?」


 こいつの父親はもういない。

 なら誰が命令を出しているんだ?


「誰にだ?」

「四宮春桜」

「四宮……春桜?」


 聞いたことの無い名前だ。


「そいつが俺になんの用があるんだ?」

「知らないわ。ただ連れて来るよう命令されただけ。他にも仲間がいたんだけど、そいつらは別に用があってここにはいないわ。まあ、あたしひとりでも十分だからいいんだけどね」

「俺だって鍛えているんだ。お前ひとりに捕まるほどやわじゃないぞ」

「そうでしょうね。その立派な身体を見ればわかるわ」


 と、工藤は俺の身体を舐めるように眺めた。


「く、久我島先輩……」

「大丈夫。覇緒ちゃんには傷ひとつつけさせないから」


 しかし奴の余裕な表情が不気味だ。

 兎極や朱里夏さんには勝てなくても、俺になら勝てると思っているのだろうか?


「かかってきなさい五貴君。受け止めてあげるわ。それとも、おとなしくあたしに攫われてくれるかしら?」

「そんな気は無いっ!」


 俺は駆け出し、工藤へと近づく。

 そして拳を握り、工藤の胸を打つ。


「……っ」


 硬い。


 鍛え上げられた筋肉という硬さではない。

 まるで鉄の塊でも殴ったような感触だった。


「以前のあたしとは違うわ。もうあんなメスどもにも負けない。あたしこそが……最強の女になったのよっ!」

「ぐあっ!?」


 顔面を殴られた俺は壁を突き破り、浴場の外までへと吹っ飛ばされた。

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