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第136話 パンツを返却するおにい

「ここがあたしの部屋」

「へー」


 中は意外と綺麗だった。

 荒っぽい性格の人なので、散らかってるのではと少し思っていたのだが。


「なんかかわいい感じですね」


 ぬいぐるみが飾ってあったりして、女の子らしい部屋であった。


「あたしがかわいいから部屋もかわいいの」

「そ、そうですね」


 たいした自信だ。

 実際、朱里夏さんはかわいい人ではあるが。


「じゃあエッチしようか」

「いや、なに言ってんですかっ?」

「それが目的で来たんじゃないの?」

「違いますよ。優実ちゃんの件で父さんと話したので、そのことを朱里夏さんに伝えようと思って来たんです」

「優実ちゃんのことを? どうしてわたしに?」

「朱里夏さんのことですから、自分ひとりで優実ちゃんを助けようとしているんじゃないかと思いましてね」

「……」


 朱里夏さんは黙って俯き、それからふたたび俺を見た。


「あたしのことよくわかってるね」

「じゃあやっぱり……」

「うん。優実ちゃんの家族をちょっと調べてみた。そしたらどうもね、優実ちゃんのお父さんが原因みたいだった」

「どういうことですか?」

「優実ちゃんのお父さんは日本から中国へ行って製薬会社で働いてたの。そこで研究の一環として強力な薬物を作ったらしいの」

「強力な薬物って……もしかして麻薬とか覚醒剤みたいな?」

「そう。依存性は覚醒剤以上。使えば頭がおかしくなるほどの快感に満たされるとか。でも使い続ければ末路は廃人。優実ちゃんのお父さんはあくまで研究の一環として作ったんだけど、仲間の研究員がその薬物を中華マフィアに売ったそうなの」

「そんなことが……」


 中華マフィアはその薬物を大量生産して売り捌くつもりなのだろう。


「けど、どうしてそれで優実ちゃんが狙われるんですか?」

「うん。その薬物の正確な作り方は優実ちゃんのお父さんしか知らないの。ここからは想像だけど、薬物が中華マフィアの手に渡ったって知った優実ちゃんのお父さんは、薬物の製造方法を聞き出そうとマフィアが襲って来ることを予見して日本へ逃げて来たんじゃないかなって思うの」

「それじゃあ優実ちゃんが狙われた理由はもしかして……」

「日本まで追って来た中華マフィアが優実ちゃんを人質にして、お父さんから薬物の製造方法を聞き出そうとしてるのかも」

「……」


 朱里夏さんの想像は正しいように思う。

 先日の連中が中華マフィアだとすれば、すでに優実ちゃん家族の居場所は知られているということだ。中国から日本まで追って来たような連中だし、引っ越しをしたとしても、すぐにまた居場所は特定されてしまうだろう。


「うちの人間を使って優実ちゃんの家を張らせてるけど、優実ちゃんはあれから一切、外出をしていないみたい。誘拐を警戒してるんだろうね」

「そうですね……。あ、父さんに話をしたら、この件を調べてくれるとのことです。警察が動いてくれればなんとかなるかもしれませんね」

「そうだといいけど」


 立場上、警察をあまり信用できないのだろうか?


 警察と聞いた朱里夏さんの表情は懐疑的な様子であった。


「でも不思議なんですよね。優実ちゃんのお母さん、誘拐の件は通報して無いっぽくて」

「そうなんだ。うん……。もしかしたら警察に通報できない理由があるのかも」

「警察に通報できない理由ですか?」


 なんだろう?


 警察に関わるとなにか不都合な事実があるということなのか……。


「わかんないけどね。まあ今のところは家に押し込んでまで誘拐をやろうって気は無いみたいだし、とりあえずは大丈夫じゃないかな。もっと詳しいことがわかったら、中国まで行ってマフィアの親玉を絞め殺せばいいし」

「そんなまたムチャクチャな……」


 いやでも、やるんだろうなこの人は。そういう人だ。


「あたしが心配?」

「そりゃ心配ですよ……って、ちょ」


 四つん這いになった朱里夏さんが俺へと迫る。


「うちに来た用は他にもあるんでしょ? だって話だけなら電話でいいし」

「そ、それは……その」


 そう。わざわざ来たのは話をするためだけじゃない。

 うちへ忘れて行ったものを朱里夏さんへ返しに来たのだ。


「これ……忘れて行ったので」


 俺は鞄から紙袋を取り出し、それをそのまま朱里夏さんへ渡す。


「ああ」


 受け取った朱里夏さんは中身を見て納得したような声を出した。


「これは五貴君にあげたの」

「いや、あげたって……」


 中身を朱里夏さんが取り出す。

 その手に掴まれていたのはパンツだった。


「ひとりでするとき必要だと思って」

「い、いりませんよ」

「あたしを想像してやってるんでしょ? だったら必要じゃない?」

「してませんよそんなことっ」

「じゃあ誰を想像してるの? あのデカチチ?」

「いや想像なんて……」

「AVとかエロ本使ってるの? そんなもの使うよりこれのほうがヌけるよ」

「い、いや、いりませんって」

「恥ずかしがらなくていいから。あ、新しいのあげるね」


 と、立ち上がった朱里夏さんは、おもむろに穿いている短パンを脱ぎ出し……。


「ちょ、ちょっとダメですよっ!」


 俺は慌てて朱里夏さんの両手を掴む。


「遠慮しないで。あたしも五貴君のパンツもらったから」

「なにしてるんですか……」


 そういえばパンツが減っていたような……。


「とにかくパンツはいりませんってっ」

「かわいい女の子のパンツをほしがらない男子はいない。だから五貴君は嘘吐いてる。本当はあたしのパンツをデカチン〇に被せて扱きたいはず」

「そ、そんなことないですよっ」


 やっている姿をちょっと想像してしまい、一瞬だけ動揺する。


「あ、じゃあこうしよう。あたしがパンツ持って五貴君のデカチン〇を扱いてあげる。それならいいでしょ?」

「もっとダメですよっ」

「あれもダメこれもダメなんて嫌。どれか選んで」

「そ、そういう問題じゃ……うわっ!?」


 不意に朱里夏さんが俺へと抱きついてくる。


「せっかく邪魔がいないんだし、エッチするまで帰さない」

「ダメですってっ」

「あのデカチチには言わないから」

「そういう問題じゃ……」

「女に恥をかかせないで」


 ……目が本気だ。

 いや、この人はいつも本気だけど。


「あたしを抱いて。ここだけのことにするから」

「ダ、ダメですって」

「口ではそう言っても、身体のほうは抱きたいって言ってる」

「はうぁっ!?」


 朱里夏さんの足が俺のモノに触れる。


「あたしもう我慢の限界。嫌がるならしないって決めてたけど、五貴君のほうから抱いてくれないならこのまま無理やりする」

「いやちょ……」


 朱里夏さんの興奮している様子が伝わってくる。


 顔は赤く、息遣いも荒い。

 身体にがっしりと抱きついており、絶対に逃がさないという構えであった。


「強引にしないと五貴君はあたしを抱いてくれない」

「それは……」

「五貴君が抱いてくれないとあたしは死ぬまで処女。それでもいいの?」

「いや、いいってことはないですけど……」

「じゃあ抱いて」

「うう……」


 抱くまで朱里夏さんは絶対に俺を逃がさないだろう。

 しかし抱くわけにはいかない。俺が好きなのは兎極なのだから。


「ここだけのことだから」

「しゅ、朱里夏さん、その……俺は朱里夏さんを素敵な女性だと思いますよ。けど俺が好きなのは……」

「前にも言ったでしょ。あたしは2番でもいいって。五貴君があのデカチチを好きなのは知ってる。2番でもいいから抱いてほしいの」

「そんな不誠実なこと……」

「あたしがいいからいいの。ヤクザな生き方してるあたしはそんなの気にしない。あのデカチチだって似たようなもの。愛人のひとりくらい気にしないよ」

「兎極はものすごく気にすると思います……」


 俺はここで朱里夏さんと関係を持ったなんて知ったら間違い無くキレる。血の雨が降ることは容易に想像できた。


「かもね。まあ、そうなったらそうなっただよ。そうなったときに考えよう。今は楽しむことだけ考えてくれたらいいから」

「わあっ!?」


 朱里夏さんは俺の上着をめくって胸部分を舐めまわしてくる。


「く、くすぐったいですよっ」

「五貴君もあたしの胸、舐めて」

「ちょおっ!?」


 今度は自分の上着をめくる。


「ダメですよっ!」

「早く舐めて」

「わあっ!? わあっ!?」


 顔にすべすべして温かい肌が押し付けられる。

 なにやら突起物のような感触も当たり……。


 ガチャ


 そのとき部屋のドアを開く音が聞こえ、


「朱里夏ーっ! ひさしぶりーっ!」

「えっ?」


 誰だろうか?

 見たこと無い女性が部屋へと入って来た。

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