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第110話 闇討ちされる沼倉さん

 ―――工藤竜三郎視点―――


 沼倉が出て行ったのを確認した俺は舌を打つ。


「ちっ、しくじりやがって」


 転がっているチンピラの死体を蹴飛ばす。


 セルゲイを逮捕させ、沼倉を殺して自分が組長代行へ名乗りを上げる予定だった。しかし沼倉がいたんじゃそれは叶わない。

 暗殺未遂があったのだ。護衛も強化されるだろうし、沼倉の排除が難しくなった。これでは思惑通りに事が進まない。


「どうすっかな……?」


 仁共会の若頭へ相談してみるか。

 しかし今回の件で後ろ盾を頼んだとはいえ、できるだけ借りを作りたくはない。なんとか自分たちだけで沼倉を排除したいものだが……。


「どうやら失敗したみたいだな」


 と、そこへ兄の天二郎が姿を見せる。


「ああ。なんとか沼倉を排除したいんだが、うまくいかなくてな」

「セルゲイみたいに逮捕させたらどうだ? 知り合いのサツに頼めば簡単だろう?」


 知り合いのサツは警視庁の大物だ。

 頼めばセルゲイのときと同じく逮捕はしてくれるだろうが……。


「セルゲイが逮捕されたことで沼倉はガサをだいぶ警戒してる。セルゲイのときみたいにはいかないだろう。それにあいつにはセルゲイを逮捕させるためにかなりの金を払った。できれば頼りたくはない」

「ふむ……。だったら俺がなんとかしよう」

「兄貴が?」

「ああ。俺は堅気だからな。殺しはできないが、病院送りくらいにはしてやる」

「それができるならありがたいが、沼倉は護衛を強化してるだろうぜ。さっきだってぞろぞろと子分を連れて来てやがった。そう簡単にはいかねーぞ?」

「わかってる。俺はいつかセルゲイや久我島に復讐できるときがきたときのために鍛えてきたんだ。あんな野郎と護衛なんかに負けやしない」

「兄貴がそう言うなら……」


 兄貴は組と無関係の人間だ。

 仮に失敗しても言い逃れはできるだろう。


「任せとけ。今夜にでも奴を病院送りにしてやる」


 そう言って兄貴は部屋から出て行った。



 ―――沼倉克己視点―――



 護衛を十数人ほど引き連れた俺は、飲みに行こうと夜の繁華街へと繰り出す。


「組長、どこに鉄砲玉がいるかわからないんです。事務所でおとなしくしていたほうが……」

「鉄砲玉に怯えて事務所で震えてろってのか? 冗談じゃねぇ。俺は極道だ。鉄砲玉にビビってたら極道なんて務まらねぇよ」

「そうかもしれませんが……」

「なんのためにお前らを連れてると思ってんだ。お前らだって極道だろ。ビビッてんじゃねーぞ。腹括りやがれ」


 図体はでかいが、根性の据わっていない子分を叱りつける。


 とは言え、これだけ護衛を連れているのだ。

 昨日の失敗もあるし、そうそうは襲ってくることもないだろう。


 昨日に襲って来た鉄砲玉は散々に痛めつけて工藤竜三郎の名前を吐かせた。工藤はしらを切ったが、鉄砲玉を送った犯人はあの男で間違い無いだろう。


 あの野郎、どういう理由で俺に鉄砲玉なんか送りやがったんだ?


 なにやらでかい思惑があるような気がする。


 必ず尻尾を掴んで落とし前をつけさせてやろうと、俺は子分に命じて奴を探らせていた。


 それから何件か飲み歩き、車が止めてある駐車場へ入ったとき……。


「うん?」


 車の前に誰かが立っている。

 黒い覆面を被った大柄な男だ。


「はっ、今度はずいぶん堂々とした鉄砲玉じゃねーか」


 護衛が俺の前にずらりと並ぶ。


「銃もドスも持ってねぇか。まさか素手で俺をやるつもりか?」

「……」


 男はなにも言わない。

 ただ黙ってこちらへと近づいて来る。


「……やっちまえ。ただし銃は使うな。ぶん殴って捕まえろ。昨日のチンピラとは違う情報も聞き出せるかもしれないからな」


 護衛が男を囲む。


 護衛は12人だ。

 戦うまでもなく拘束できる。そう考えた……が、


「ぐあっ!?」

「ごあっ!?」


 護衛が次々に倒されていく。


「なっ……!?」


 男は恐ろしく早い動きで護衛たちをあっという間に倒してしまった。


「て、てめえ……っ」


 男がこちらへと近づいて来る。


 こうなったらやるしかない。


 そう思って拳を固めた瞬間、


「がはっ!?」


 腹に一撃を食らう。


 そのまま何度も殴られ蹴られ、意識を失った。

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