罪と功①
王都に戻ると報告として国王との謁見になった。
「よくぞ無事で戻ってきた」
国王が嬉しそうに遠征から帰ってきた者たちを労う。
「もったいなきお言葉でございます、国王陛下」
ジークは公的な場であるため臣下の礼を取る。
「うむ。ガーリングもよくジークロットを守ってくれたな」
「当然のことをしたまででございます」
「して、何があったか報告を頼む」
「はっ。まず北の森の浄化は全て完了いたしました。その際に―――――」
ジークは北の森で魔族と交戦したこと、その魔族が魔物を従えていたこと、そしてその魔族が王家ゆかりの者であることを話した。
「そ、そうか。それは人払いをしていてよかったわい」
今この場には遠征したものと国王、宰相のみがいる。これは王家の大きなスキャンダルも含まれているため貴族たちが聞いていたらどうなっていたことやら。まあジークはその辺も考慮していたと思うが。
「それにしてもそれで本当に何事もなく帰ってこれてよかった」
全てを聞き終えた国王は脱力すると心底安堵したように息を吐く。
「此度もガーリングが倒してくれたのか?」
「はい―――――」
「いえ、今回はジークロット様がお倒しになりました」
「な!?」
「それはまことか!?」
俺はジークの言葉にかぶせるかたちで進言する。それにジークも国王を驚きをあらわにする。
「あれを倒したのはガルのおかげだろ!それにティーベルたちがニクレマンを消耗させていたから攻撃を当てられた!」
「確かにそうかもしれない。だがとどめを刺したのはまぎれもなくジークだ。この結果に不服があるものはいるか?」
俺は遠征組、主に俺の婚約者たちに尋ねた。ニクレマンと戦ってたのは彼女たちだしな。
「私はガーリング様の仰せのまま従います」
真っ先に賛同したのはフィリアだ。まあフィリアの場合は従者として俺に従っているだけだろうが。
「私も賛成だ。魔族にとどめを刺した秘剣は見事なものであった。あれほどの技を見せられれば不服などあるはずがない」
続けてリーゼロッテも好感触のようだ。
「私は反対です」
一方リリアは難色を示した。
「恐れながら申し上げます。確かにジークロット様は素晴らしい技で魔族を倒しました。しかしそれは最後だけ。始めはティーベル様とともに善戦されていたようですがティーベル様の方がご活躍されているように感じました。それに加え、ジークロット様はガーリング様を殺そうと致しました」
「「なに?」」
ここで国王とリュークの表情が変わる。
「相手がガーリング様だからこそ何事もありませんでしたが下手をすればこちらが全滅していた恐れがあります。このような愚行、私は決して許しません」
王家の行いを愚行という。それは王族に対する侮辱と同じ。もしかすると無礼とされ殺されるかもしれない。その程度のこと、リリアが分からないはずがない。それでもリリアはジークの行いを愚行と言い切った。つまりそれだけの覚悟を持った発言となる。これに国王と宰相はどう出るのか。
「ジークロットよ。リリアの発言に相違ないな?」
「間違いございません」
国王の問いかけにジークは即座に答える。
「な、なんということを……」
国王は頭を抱えてしまう。まあそりゃそうですわな。
「しかしそれは魔術による洗脳で――――」
「魔術のせいであってもガーリングを襲ったことに変わりはありません。そしてその事実から逃げるつもりはありません」
ジークは俺が庇おうとするのを拒んだ。それは自らの首を絞めにいっているようなものだ。
俺は驚いてジークを見る。そこにはどこにも恐れなどない澄み切った目をしたジークがいた。
「………ジークロット。お主が国内の貴族を何の理由もなしに手にかけようとするのはとても見逃すことはできぬ。よってお主を―――――」
「お待ちくださいませ」
国王の言葉を遮ってティーベルの声が響く。
「まだわたくしの話を聞いていませんが、よろしいのでしょうか?」
「例えティーベルが何を言おうが決定は変わらぬ」
「ならばわたくしの話を聞いてもよろしいのでは?」
「う、うむ。た、確かにそうじゃが……ならば聞こう」
「わかりました。まずわたくしの意見としては魔族に遭遇したという事実ごとなくした方がよいと思います」
「「「「っ!」」」」
これにはこの場にいる者が全員息を吞む。なぜなら遠征組は自分たちが命を懸けて戦った功績がなくなるのだから異を唱える人間もいる。
「それはあまりにも横暴なのではないでしょうか、ティーベル様?」
シュレイナーが騎士、魔術師を代表して答える。
「ここにいる者たちはみな己の命を賭して戦ったのです。それをなくしてしまうのはあまりにも理不尽です」
「ではあなた方が戦った相手とわたくしたちが戦った相手、どちらの方が功績が大きいと思いますか?」
「それは……ティーベル様方ですが」
「つまりこれはわたくしたちの方が不利益が大きいのです。それをわたくし自らすると言っているのです。もし反論があるならばわたくしたちよりも手柄を上げることです」
「…………わかりました」
ティーベルの物言いにシュレイナーは呆気なく撃沈した。どんまい。
「してティーベル。その真意を答えてくれ」




