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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
死の森編
96/176

わがまま(?)王子、誕生

 俺が目を覚ましたころにはすべてが終わっていた。

 ニクレマンは倒され、負傷者も治療済み。死者は誰一人としていなかった。まさに完全勝利、のはずなのだが……

「なんでジークは俺に頭下げてるんだ?」

 理由は分からないがジークが俺に向かって頭を地面にこすりつける勢いで頭を下げていたのだ。

「この度はガルに多大なる迷惑と手間と苦労をかけてしまい誠に申し訳ございませんでした」

 王族のガチ謝罪……なんか恐れ多い。

「今回は絶対に見過ごせませんわよ、お・に・い・さ・ま?」

 あ………ティーベルの目が笑ってない。激おこ状態だ。

「反論の余地もございません」

 ジークが項垂れる。意気消沈してる。

「ティーベル様、ジーク様も十分反省なさっているご様子ですしお許しになっても――――」

「シュレイナーは黙っててくれるかしら?」

「…………はい」

 騎士団長、あえなく撃沈。上司が黙らされたのにジークを助けようとする無謀な部下はいないようだ。

「ガルさんも何か仰ってください!」

「え!?俺!?」

 急に話を振られると思わなくて頭の中が真っ白になってしまう。そのせいでパッと頭の中に浮かんだことを口に出してしまった。

「そ、そういえばジークに剣で刺されたときめっちゃくちゃ痛かったなー」

 俺がそう言った瞬間、場の空気が一転した。

「へー?剣で刺された?どういうことか詳しくお聞かせくださいませ?」

「これはちょっとばかし痛い目を遭わせた方がいいのではないか?」

「それはガルくんが倒れたことに関係があるのかな?」

「ガル様専属のメイドとして聞き捨てなりませんね」

「……………アレ?みなさん?」

 なんかジリジリとジークが追い詰められていく。まるで狩人に囲まれたうさぎみたいだ。

「くっ………よしわかった!ガル!遠慮なく俺にも剣を刺せ!」

「現実でやったら死ぬからね?バカなの?」

 地面に倒れこんで無防備に胸をさらけ出すジークに呆れるしかない。

「とにかく宿に戻ろうか。みんな疲れているだろうし」

 俺はすこしげんなりしている全員を見て言った。






 街に戻ると村長のジャムナタが出迎えてくれた。

「ジークロット王子!よくご無事で戻られました」

「あぁ。依頼を無事達成してな。今日も一晩泊めてくれるか?」

「もちろんでございます。今晩はジークロット王子の依頼達成ということで街総出の宴会にいたしましょう。お前たち、準備してこい」

「「はっ」」

 ジャムナタは従者たちに命令すると従者たちは急いで街の中に戻っていった。

「それでは早速宿に―――――」

「その前にもう一つ頼みたいことがある」

「さて、なんでしょう?」

 ジークは先程とは打って変わって真剣な表情をしている。その雰囲気を察してジャムナタも顔を引き締める。

「俺たちがこの街に来た時に盗みを働き捕まった少年がいただろ?」

「左様でございますが」

「その少年に会わせてほしい」

「「「「なっ!?」」」」

 これにはジャムナタのみならずシュレイナーたち騎士と魔術師、ティーベルまでも呆気にとられた顔をした。

「ど、どうしてお会いになるのでしょうか?」

「少し話をしたくてな。それとも俺には会わせられないか?」

「そ、そのようなことは決してございません。ですが、本当によろしいのですか?」

 ジャムナタは護衛に確認するように見る。シュレイナーはコクリと頷く。

「それではご案内します。ついて来てください」






 ジャムナタに連れられてきたのは薄暗い収容所だった。

「あん?何見てんだ、テメェ」

「ふん。薄汚い犯罪者だな」

 明らかにガラの悪い輩も収容されている。今もリーゼに絡んでは軽くいなされている。

「こんなところに少年がいていいのか?」

「よくはないんでしょうが、この街の収容所はここしかないんです。できるだけああいう連中に絡まれないよう奥で隔離しています」

 俺たちは収容所の奥まできた。

「では、開けます」

 空いた扉の先には鉄格子で隔離された空間にいる一人の少年だった。

「なんだ爺さん。そんなに人を呼んで。俺を死刑にでもするのか?」

「こら!口の利き方を気を付けるのじゃ!」

「よい………それで少年。名は?」

「ん?誰だよ、兄さん」

「貴様!無礼な――――」

「よせ、シュレイナー」

「………はっ」

 ジークにそう言われては引き下がるしかない。

「我はランバルト王国国王ウォレン・フォン・ランバルトが嫡子、第一王子ジークロット・フォン・ランバルトである」

「へー?で、王子様は俺に何の用なんだ?」

「君、親を亡くしたようだな」

「チッ。で、なんだよ?」

「すまなかった」

「っ!」

 なんとジークは少年に頭を下げたのだ。

「あ、頭をお上げください!」

「ジャムナタは黙っていろ」

 その姿は凄みがありシュレイナーたちも何も言えなかった。

「君の親が亡くなったのは魔物に襲われたからだと聞いた」

「そうだが……」

「魔物の対処は本来、国が行わなくてはならない。君のような人が出ないようにするためだ。しかし今回、魔物の対処が遅れ君は大切な人たちを失ってしまった。これは国の責任、つまり我々王族の責任だ。本当にすまなかった」

「ジーク様………」

 ジークの頭を下げる様子を見てシュレイナーは苦しそうに呟く。

「それならばわたくしも謝罪しなければなりませんわね」

「…あんたは?」

「ランバルト王国第一王女ティーベル・フォン・ランバルトですわ。このジークロットの妹ですわ」

 そしてティーベルはジークに引き続き頭を下げた。

「あなたがこのようなことになってしまったのは王家の失態ですわ。謝って許されるとは思いませんが、せめて謝らせてください」

「……………」

 場は沈黙する。ただ一人の少年とその少年に頭を下げる王子と王女。もしこれが公になれば大波乱になってしまうだろう。そんなことジークだってわかっているはずだ。それでも頭を下げた。これがこの王家の魅力なのだろう。

 ダリューンもそうだった。律儀で筋の通っていないことは大嫌いだった。きっとこれが多くの人から慕われている所以なのだろう。

「……別に謝る必要はねぇよ」

 そしてついに少年が口を開いた。

「あんたら王族がいい人たちだから俺たち平民が楽しく暮らせていることぐらいはわかる。だからあんまし頭を下げるなよ」

 少年は顔を少し赤くして照れたようにぶっきらぼうになっている。

「そうか」

 そしてようやく二人は頭を上げる。

「君さえよければ俺と一緒に来ないか?」

「……は?」

「罪滅ぼしとは言わない。これは単純な俺の善意だ。もちろん拒否してくれてもかまわない。どうだろうか?」

 ジークは檻に向かって手を差し伸べる。

「ジーク様!それはいささかやりすぎですぞ!」

 これにはさすがにシュレイナーも物申す。

「この少年は礼節を知らない平民。しかも犯罪者です!そのような者をジーク様のお側に仕えさせることはいけません!」

「別に俺の側でなくともよい。少年がしたいことをすればいい。もし少年が俺と来るなら彼の損害分は俺個人で払おう」

「だからと言って―――――」

「これはジークロット・フォン・ランバルトとしての発言だ。それでもまだ文句はあるか?」

「はあ!?」

 国の名前を出した、それは第一王子としての責任ある発言だ。それは誰であろうと簡単に覆せはしない。たとえそれが本人であっても。

「後悔はしないな?」

 俺はそれだけ口をはさむ。

「あぁ。言っただろ。俺は強欲で傲慢なわがまま王子だって。ならば俺はしたいようにするし、したことを後悔なんてしない」

「そうか。それならいい」

 ジークの言葉には強い覚悟が読み取れた。今回の件で本当に何かが吹っ切れたみたいだ。

「君がこの手を取るかどうかは自由だ。この手を取りたくないならそれでいい。でもこの檻から抜け出して自分のしたいことをしたいなら、この手を取るんだ」

「俺は……」

 少年は少し迷うそぶりを見せた後、ジークの手を取った。

「俺はあんたと、王子様と一緒に行く!」

「よし!では名前を言ってみろ」

「俺はカイ・アケラントだ…じゃなくて、です」

「そうか。じゃあカイ。これからがんばるぞ」

「は、はい!」

 こうしてジークに新たな仲間ができた。

リーゼ「そういえばどうしてランバルト王国は平民も姓があるんだ?帝国では貴族だけの特権なのだが」

リリア「なんか初代国王様の掟らしいよ。平民も貴族は同じ人間。ならば姓を持つのは当然の権利である、とかなんとか」

リーゼ「ずいぶんと変わった御仁なのだな」

ティーベル「わたくしたちの祖なのですけど…それに気付くの今更ですわね。フィリアも平民なのに姓を名乗っていましたわよね?」

リーゼ「いやー。フィリアはガル殿の連れだし、強いから特別なのかなって」

リリア、ティーベル、フィリア「「「あ~~~~」」」

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