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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
死の森編
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闇系統魔術に犯された王子

 めっっっっんどくさ!

 俺はジークと向き合いながら心の中で盛大に愚痴をぶちまける。

 王族に対して無礼?そんなもん知らん!

 なぜジークが味方である俺に剣を向けているのか。それはジークがこっちに飛んできている間にわかっている。

 ジークの身体の中で変な魔力が観測された。人間には本来生まれつきの魔力反応と魔術の発動時の魔力反応しか観測できない。しかしジークにはそのどちらでもない魔力反応があった。それはとある魔術の特徴であった。闇系統魔術。これこそジークが俺に剣を向けた原因だ。






 闇系統魔術は何か。一般的に言われているのは呪い系とされている。しかしそれはかなりかみ砕いた説明なのである。

 そもそも系統魔術自体の認識が間違っているのだ。

 属性魔術は攻撃系とされる。それは認識の通りで魔力を物質に変換することで体外に効果を及ぼすことができる。

 一方の系統魔術は補助系とされるがその全容は全く違う。

 まず光系統魔術は傷を癒すと言われているがそれはあくまで副次的な効果なのである。光系統魔術、その本質は魔力を生命力に変換することで生命体の生命力の補填を行うことである。その過程で補填された生命力が傷を治しているに過ぎない。

 そして闇系統魔術。これは使い手が少ない系統魔術の中でもさらに使い手が限定されるとても希少なものだ。そのためこの時代にはあまり研究が進んでいないようだ。

 そして気になる闇系統魔術の本質、それは精神干渉だ。闇系統魔術の初級魔術は相手の動きを阻害するものである。それは自分の魔力を相手の身体に紛れ込ませることによって思い通りに身体を動かすことができなくなってしまう。しかし光系統魔術のような特徴的な現象が起きない。そのため何をされたのかわからなかったようだ。

 ジークがかけられているのはおそらく闇系統の上級魔術『心闇』だろう。ここまで正確に思考を乱すのはそれしかありえない。もはや洗脳と言ってもいい。

 そんな強すぎる『心闇』にも欠点がある。相手の思考に干渉することが簡単にできるはずもない。この魔術ははあくまで心の奥底にある負の感情を増大させるもの。その闇に真っ向から向き合える者、あるいは理解している者、割り切っている者には効果がない。今回のジークはどれにも当てはまらない、『心闇』に効果がある側だったのだろう。

 さらにやっかいなことにこの魔術はかけられた人間の周囲をも巻き込む。

 なぜかと言うと正常な思考を失った状態で心の闇をぶちまけてしまう。当然、むごたらしいものも仲間に溜まった愚痴もあるだろう。それが直接言葉の暴力となって襲い掛かってくる。中にはその言葉の暴力に耐えきれず人間不信に陥った者や自殺したやつもいた。かなりの修羅場を乗り越えどんな言葉にも耐えられる人間でなければ真っ向からやり合うのは難しい。だからジークの相手を俺がすることにした。まあジークのヘイトが向かってるのは俺みたいだから不幸中の幸いだな。

 そして肝心の解決策なのだが、一つ目の方法は術者の死だ。今回の場合、ニクレマンが死ねば自動的にジークは正気に戻る。しかしティーベルたちがニクレマンを倒すより先に俺がジークを正気に戻す方が早いだろう。二つ目は荒治療になるが術の強制解除だ。しかしこれもオススメできない。なぜなら術は解除されても心の闇の問題は解決されない。しかも変に自覚ができてしまうせいで『心闇』に呑まれやすくなってしまう。だから俺が行うのは三つ目の方法だ。それはジークの精神に干渉しジーク本人が心の闇と向き合えるように手助けをすることだ。

 手助けで何ができると思う人もいるが実はこの方法が一番いい解決方法なのだ。『心闇』の対策は本人の心のありようだ。だから手助けをして心の闇と向き合えるようにすれば自然と正気を取り戻すことができるし今後の対策にもなる。一術二獣なのだ。









「来い、ジーク」

「舐めるなあああああああああああああああああああ!」

 俺はジークの剣を受けとめる。

 この体勢ならば問題ないだろう。

「『対闇アンチマジック』」

『対闇』は文字通り闇系統魔術の対抗にのみ効力を持つ無属系魔術だ。自分又は第二者の精神に干渉することで闇系統魔術と対抗する。

 しかしこの魔術には致命的な欠点がある。それは術が強いほど自分の意識をしっかりと相手の中に入り込ませなければならないのだ。そのため使用者は無防備になってしまう。この魔術を使うときは危険がないことを確認、あるいは護衛がいる時でないと危ない。






 俺の意識は薄れていく。ジークの中に自分が入っていくのがわかる。

 目を開けるとそこは光が一切ない暗闇だった。

「ここがジークの心、その最奥……」

 心はその人の本質を現す。今のジークの本質は闇に染まってしまっている。

「なに、しに来た……」

 前方には二人のジークがいた。

「ガーリングはお前を殺しに来たんだ」

 一人のジークがもう一人のジークに声をかける。魔力反応からしてこっちが偽物でもう片方が本物のようだ。

「何を言っている、偽物風情が」

「なんだと?」

「俺はジークを救いに来ただけだ」

 そして人知れない場所で戦いが始まった。

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