入学試験①
入学試験当日。我が家はバタバタしていた。
「大丈夫か?受験票持ったか?昼ご飯持ったか?忘れ物ないか?トイレ行ったか?」
「…父上、それ何回も聞きましたよ」
「…当主様、心配しすぎですよ」
「でも今日は入学試験だぞ!心配になってしまうではないか!」
「旦那様、こちらをどうぞ」
「うむ、すまない」
今父上にハンカチーフを渡したのはフィリアの父でバルムルク・マキシアだ。王都の屋敷の管理を任されている優秀な男性だ。
「父上、少しは落ち着いてください。そんなに心配されると逆に心配になってしまいますよ」
「うぐ…」
「ガル、フィリア。頑張ってきてね。あなたたちなら大丈夫。私のかわいい弟と妹なんだから」
姉上が俺とフィリアを抱きしめる。恥ずかしいけど悪い気はしないな。
「り、リタも立派になったなあああああ!」
父上、いいから黙って!
英雄学校の門をくぐって受付を済ませる。
「ね、ねぇフィリア。あれって誰の銅像?」
「たぶんアルス・マグナ様のものかと…」
英雄学校に入ると大きな銅像があった。それは二振りの剣を鞘に収め、佇んでいるものだった。
……これが俺って、どう反応すればいいんだよ…
「フィリア、こっちだよ」
「はい」
俺は居心地が悪くて急いで会場に向かった。
午前は筆記試験で午後は実技試験。筆記試験は読み書きや計算、歴史、魔術学の問題を解く。実技試験は魔術と剣術の試験。魔術科になぜ剣術の試験があるかというと、魔術と剣術はかなり結びついているからだ。
魔術師は遠距離から魔術を使うためどうしても接近戦が弱くなってしまいがちだ。それをカバーするために剣術を学ぶ必要があり、身体強化の魔術を使うのにいい練習になる。そして世の中には魔剣というものが存在する。魔剣は国宝とされ、魔力を媒介にして魔剣は特有の能力を発揮する。しかし魔剣を扱うにはそれに見合う魔力と技量を持たなければならない。魔剣を手に入れた際、扱えなければ意味がない。そのために剣技を身につけるのだ。そういうのを本で読んだ。
「おいあれ」
「従者を連れてるとかどんな奴だよ」
周囲がクスクスと俺たちを笑う。
「…ガル様…」
「気にするな。言わせておけ」
「…はい」
俺たちは筆記試験を無事に終えた。
昼休憩になり教室を離れる。
「あそこで食べようか。」
「はい」
俺はベンチを見つけてそこに座る。
「はぁ…」
「どうした、フィリア?」
「さっきの教室での視線が気になって…」
「あぁ…」
先ほどのことを思い出す。
「確かにあれは酷かったな」
フィリアの服がメイド服ということもあって注目を集めていた。基本的には平民は英雄学校の魔術科を受験しない。なぜなら魔術を使えるのは貴族だけとされているからだ。魔術を使える平民も英雄学校には行かず普通の学校に行く。魔術を使えるといっても生活が多少便利になる程度。つまりフィリアの受験は異例中の異例ということになる。奇異の目線で見られることも仕方があるまい。まあ実力で黙らせるのが早いか。
「別の意味でも注目されてるかもな…」
「どういう意味?」
「こっちの話だよ」
フィリアを見る。小さいころから知っているが、フィリアは本当にかわいくなった。ピンクの髪に猫耳がチャームな獣人族。男どもにはよほどきれいに映っているだろうな。長年一緒にいる俺でもときどきドキリとすることがあるくらいだからな。
「さっさと食べて試験会場に行こうか」
「うん」
「なんか人が多いな」
「そうだね。何かあるのかな?」
「さあ?」
実技試験の会場に行くと人だかりできていた。人だかりに近づくとそこには一人の女性がいた。どうやらここにいる人はみんな彼女を見ているようだ。
「あの人は?」
「えっと、確かランバルト国王のご息女、ティーベル・フォン・ランバルト王女だったはずです」
「へぇ、王女様なんだ」
「なんでも魔術の天才で『王国の才女』とか言われています」
「魔術の天才、か」
この時代の魔術の天才とはどれほどのものか、気になるな。
「余談ですが、ティーベル様の兄、ジークロット様は剣の天才と呼ばれていて、その腕はすてにランバルト王国内随一と言われています」
「王族ってすごいんだな。兄が剣で妹が魔術って…」
「はい。しかもどちらも美男美女ということでも有名ですよ」
「確かに、綺麗ではあるな」
俺は王女様を観察する。シミのない綺麗な肌にサラサラな金色の髪。ありゃ人気になるわけだ。
「……ガル様もあのような方がお好きなのですか?」
「別に。てかどうしてそんなこと聞くんだる」
「これから実技試験を始める。受験者は集まれ」
試験官に呼ばれて疑問に思いながら集合場所に向かった。




