魔物狩り?②
「ベルセルクルってなんだ?」
「大型の人型の通称だ。知能がとても高くさらに耐久力も桁違いだ。こいつ一体で小国が滅びたこともあるらしい。そんなやつがこんなにたくさん……」
「まじもんの化け物ってわけか」
そんなのが複数体か。ちょっとワクワクしてくるな。
「あの相手、私たちに任せてくれないか?」
「リーゼ?」
そんなことを言うなんて意外だ。
「疲れてるんじゃないのか?無理するのはよくないぞ?」
「大丈夫だ」
「はい。リリアさんのおかげで回復も出来ましたし」
「うーん……まあいいか」
いざとなれば介入すればいい。
「では私が三、フィリアが二でいいか?」
「もちろんです」
リーゼロッテとフィリアは剣を構える。
「『三段解放』」
リーゼロッテの纏う魔力が膨れ上がる。
「私も」
フィリアは短剣により魔力を込める。すると短剣が淡く光りだした。
「え?何ですか、これ?」
その現象を引き起こしたフィリア本人も驚いている。
「が、ガル様。これなんなのですか?」
「考えられるとしたら、武器の限界突破かな」
「武器の限界突破?」
興味深そうにリーゼは聞いてくる。
「フィリアの短剣には術式が付与されているだろ?その術式に魔力を一定以上込めることによって術式がより強固なものになる。実際のところ武器の限界突破と言うより術式の限界突破と言うべきだな」
「そうか。では私の魔剣は限界突破しないのだな」
「魔剣には権能っていう能力があるだろ」
魔剣はすでに強力だからこれ以上強くなる必要はない。
「一度試してくるといい」
俺はフィリアを促す。
「そうですね」
フィリアは腰を低くしていつでも駆けれる準備をする。
「フィリア、準備はいいか?」
「いつでもどうぞ」
「じゃあ、行くぞ!」
リーゼロッテの掛け声に合わせて二人は同時に駆けだす。
「「やああああああああああ!」」
リーゼロッテは剣を振るうと一体のベルセルクルの首が吹っ飛ぶ。
「なんと!あのベルセルクルを一撃で!」
シュレイナーは驚愕の声を上げる。
一方のフィリアはというと。
「グアアアアアアアアアアア!」
ベルセルクルが痛みに耐えかねて怒りの咆哮を上げる。一体のベルセルクルの二本の腕が斬られていた。短剣は普通の剣より殺傷性は低い。そのかわり連続性が高く急所を狙いやすい利点もある。
「ベルセルクルの腕って相当堅いはずなんだが」
騎士の一人が呆然とつぶやく。
剣で実際に魔物たちと対峙している騎士の方がそのすごさはよりわかりやすいだろう。
「うそ…こんなにあっさり切れるなんて」
腕を切り落としたフィリア本人も驚いている。
「ハッ!よっ!」
無傷のベルセルクルに腕で攻撃されたのを低くして躱す。
「甘いです!」
そのまま懐に入ると胴体に二連の剣を振るう。
「剣技『双角斬』」
しかし短剣では深くまで刃が届かず浅めの傷になってしまう。
「ガアアアアアアアアア!」
ベルセルクルはフィリアを足蹴にしようとする。フィリアはそれをスレスレで避ける。
「はああああああああああ!」
ベルセルクルの背後に回る一瞬の間に片方の足を切る。それによって機動力を奪う。
「これで終わりです!剣技『波衝突』!」
フィリアはベルセルクルの脳天に短剣を突き刺す。その一撃が決定打となりベルセルクルは絶命する。
フィリアの残りは腕を失ったベルセルクル一体のみ。問題はなさそうだ。
「フィリア、いつの間にあんなに強く……」
リリアは羨ましそうにつぶやく。
「それに比べて私は……」
「…………………」
リリアが自分のことをどう思っているのかわからない。ただリリアは俺の大切な人の一人だ。自分を卑下することはないのに。
俺は無言でリリアの頭を撫でる。
「ひゃあ!?な、なにを!?」
「リリアはリリアだ。他人と比べることはない」
「………うん」
この言葉でリリアが何を思うのかわからない。でもあまり思いつめないでくれたら嬉しい。
「たああああああああああああああ!」
リーゼロッテの気合の声が聞こえる。
「グアアアアアアアアアアア!」
少し後にベルセルクルの一体が断末魔が聞こえる。
残り一体か。心配いらなかったみたいだな。
「こちらは無事に完了しました」
「お疲れ」
フィリアはやり切ったように汗を拭う。
「フィリアすごかったよ!あのデッカイ魔物を切り刻む姿!」
「ありがとうございます、リリアさん」
リリアの誉め言葉にフィリアは照れくさそうに笑う。
「いやいや、少女が喜んでいい言葉じゃないだろ……」
「そうですか?」
ダメだ。すでに価値観が……
「こっちも殲滅し終えたぞ」
「リーゼもお疲れ」
「ああ」
リーゼロッテも剣を鞘に収めて戻ってくる。
「いやいやいやいや。ベルセルクルをこんなに簡単に倒すとこどうなってるんですか?我らでかかっても一体を倒せるかどうかなのに……」
シュレイナーは有り得ないとでも言うように愕然とする。
「ガル殿の周りはどうなっているのだ……」
「ティーベル!そっちはどう……ってえぇ!?」
そこには炎の壁に囲まれたジークロットと一人で必死に応戦しているティーベルの姿があった。