王都での出会い
俺も成長してようやく12歳になった。これで王都の学校に入学できるようになった。
「ガルもめでたく12歳になった。今年はガルとフィリアが王都に行って英雄学校の入学試験を受ける。その付き添いで王都に行くが他についてくるものはおるか?」
「あたし行きたい!」
手を挙げたのは姉上。
「リタ、お前が率先して言うのは珍しいな」
「あたしだって王都に行ってみたいもの」
「そうか、いいぞ」
「僕は父上の代わりをしなければならないので行けませんね」
「ウィル…頼むな」
「お任せください」
兄上は今年で17歳になった。来年には成人になる。そして兄上はエルミット家の嫡男であるためこの家、領地を父上から引き継ぐことになるからすでに領地経営の手伝いをしている。幸い兄上には内政の才があるらしく、すでにいくつかの政策で結果を残している。
「私も残るわ。ウィルのお手伝いもしなければいけないし」
「私もこの屋敷の家事があるので。それに王都には夫がいますので」
「エイミーとコルンも留守番か。では王都には私、リタ、ガル、フィリアの4人で行こうか」
「「「はい!」」」
王都出発の日、エルミット家の馬車が屋敷に来る。
「行ってきます、母上、兄上」
「がんばってね」
「あまりやりすぎないようにしろよ」
「兄上はどうして俺がやりすぎる前提で話してるの?」
「お母さん、行ってきます」
「フィリア、頑張ってきなさい。そしてガル様のお世話をしっかりしなさいよ。それとお父さんにもよろしく伝えておいてね」
「はい!」
「お土産買ってきますね!」
「楽しみにしてるわね、リタ」
「私とリタは試験の合格発表が終わってから帰ってくるからな。ウィル、それまでは領地を任せたぞ」
「えぇ」
俺たちは馬車に乗り込むと王都に向かった。
王都までの道のりは順調で野党や魔物に襲われることもなく5日間で王都に着いた。
「わぁ!ここが王都!」
姉上が感激したように声を上げる。
「こらリタ。危ないから身を乗り出すな」
「はぁい」
「はぁ……」
「フィリア、どうしたの?」
「………」
フィリアの反応がない。どうやらフィリアは王都の街並みに見とれているようだ。
「王都の屋敷に着いたら出かけてきたらいいさ。屋敷のことは私と向こうにいる使用人で準備するから」
「い、いえ!私もメイドなのでお手伝いします!」
「大丈夫だ。それにフィリアはガルの専属だ。ガルの傍にいてやってくれ」
「は、はい!」
なんか俺も強制的に外に出ることになったな。まあ街を見てみたいと思っていたからいいけど。
屋敷に着いて姉上とフィリアと三人で出かける。
「どこ行きましょうか?」
「お土産屋は?」
「早すぎません?」
そんなこんなで王都を回る。タルミールよりも人が多く活気づいている。まさに都会だ。たしか前世でもここまで賑やかではなかったはずだけど。変わったものだな。
すると路地裏で声が聞こえた。
「ようお嬢ちゃんよぉ。俺たちと遊ぼうぜ」
「来ないで!」
そこにはいかにもお嬢様らしき鮮やかな青色の髪の女の子が。男どもに絡まれていた。
「貴様ら!お嬢様から離れろ!」
「テメェは黙ってろ」
「グハッ!」
「ウィン!」
「これで護衛はお眠だし、俺たちは俺たちで楽しもうぜ」
「いや…いやあああああああ!」
「はい、そこまで~」
「なっ!誰だ!」
俺は男たちに向かって『石弾』を威力を弱めて放つ。
「「「うわああああああ!」」」
男たちが悲鳴を上げながら地に伏す。
「え?え?今のは、魔術?でも詠唱がなかった…」
「あの、大丈夫ですか?」
「は、はい!」
「フィリアと姉上は彼女についてあげて。俺はあの人の手当てをするから」
「「はい!」」
姉上とフィリアは女の子に近づいて寄り添う。それを確認してから俺は倒れている男性に近づいて光系統の初級魔術の『回復』を使う。
余談だが属性魔術は攻撃系、系統魔術は攻撃ではなく身体に作用するものだ。光系統の魔術は回復系、闇系統の魔術は呪い系だ。
「うぅ…」
「気づきましたか?」
男性は目を覚ますとガバッと起き上がる。
「お、お嬢様!」
「私は無事よ、ウィン」
「よ、よかったぁ」
「この方たちが助けてくれたのです」
「そうですか。お嬢様を助けていただきありがとうございます。わたくしはバルマント公爵家に仕えるウィンドルフと申します」
「そうでしたか。俺はバルフォンス・エルミットの次男、ガーリング・エルミットです」
「そうでございましたか。ガーリング様、改めて感謝を」
「ガーリング様、そしてお連れの方、私からも感謝を申し上げます。私はリューク・バルマントの長女、リリア・バルマントです」
「あたしはバルフォンス・エルミットの長女でガーリングの姉、ナリタナ・エルミットでございます」
「わ、私はガル様にお仕えしているフィリアです」
全員の自己紹介が終わる。
「それにしてもあの数を倒すとは、ガーリング様はお強いのですね」
「えぇ、まあ。人より強いことは自覚していますよ」
執事の問いかけにこたえる。だって『英雄騎士』なんだもん。
「ガーリング様!あの男たちを一掃したものは何なのですか?」
「ガルでいいですよ、リリア様。それに様と敬語もいりません。あれは魔術です」
「わかりました。私のこともリリアって呼んで。あと敬語は不要よ。それで、魔術と言っていましたが詠唱をしているようには見えなかったんだけど…」
「わかった。魔術を使うのに詠唱は要らないよ」
「「えぇ!?」」
「まあそういう反応になるのは」
「当然ですよね…」
姉上とフィリアは納得したようにうなずく。
「…ガルくんに学べば、私も無詠唱で魔術を使えるようになれる?」
「できると思うよ」
「なら、私の家庭教師として働く気はない?」
「ごめんなさい。英雄学校に入学するかもしれないので…」
「えぇ!ガルくんも!?」
「も、ということはリリアも?」
「はい」
「そうですか。お互い合格できるといいですね」
「そうね!」
「わ、私も受けますよ!」
俺がリリアと話しているとフィリアも会話に入ってきた。
「フィリアさんもですか!?騎士科ですか?」
「いえ、ガル様と同じ魔術科です!あとさんはいりません!」
「あら、もしかしてフィリアは魔術が使えるの?」
「はい。ガル様に教えていただきましたから」
「そうなのですね。ですが学校に入学すれば私もガルくんに教えてもらいます!」
「ダメです!」
「フィリアに言われることではありません!」
「ぐぬぬ…」
「むむむ…」
「あの、二人とも?どうしたの?」
「「ガル様は黙っててください!」」
「はい…」
どうして?俺はこの二人を止めようとしただけなのに…
「ガルも罪な男ね」
「そうですね」
「そこだけ分かり合わないでください」




