道中
「全員そろったか?」
「「「「はい!」」」」
ジークロットの確認に全員が反応する。
「ではこれより北の森へ向かう。道中に魔物が出ると思われるから気を抜くなよ」
今回の遠征は徒歩と馬での移動となる。馬と言っても騎乗するのは俺、ジーク、騎士団長、リーゼの四人だ。ちなみにティーベルは俺に、リリアはリーゼに抱き着く形となっている。フィリアは自ら歩くと言い出したから徒歩だ。
しかしここにいる全員身体強化魔術が使えるからそこまで遅くはならないだろう。
「それにしてもガルと任務をすることになるとは思わなかったよ」
ジークロットは一休憩中に話しかけてくる。
「それは俺もですよ。そもそもジーク様は王族なのにどうしてこんな危険かもしれない任務に参加してるんでしか?」
王族といえば普通指示を出して報告を待つのが仕事だ。わざわざ身の危険を犯してまで任務に行く必要はない気がするが。
「様はよしてくれ。将来義理の弟になるのにそこまで畏まられては悲しいしな。敬語も不要だ」
「それは……」
「私的な会話なら問題あるまい」
「……はぁ。わかった。どうしてこうもこの国のお偉いさまはおかしな人が多いのか」
リリアといいティーベルといいジークといい。本来であれば軽々しく話してはいけない家柄のはずなのだが。
「それほどでも」
褒めてねぇ。
「それで俺がこの遠征に参加している理由だな。それはランバルト王国の理念が関係しているかな」
「王国の理念?」
「そう」
「元々この国は剣の凄腕の一族が建国したんだ。それは知っているだろう?」
「そうだな。確かレオハルト・ランバルトだったよな」
「そう。そしてその祖先はかのダリューン・ランバルト様だ。その御方が仰ったことがある。それは『己の義務は全うせよ』。だから俺たち王族は自分たちで解決できるものは解決するようにしているんだ。父上も若い頃は自ら出向いていたらしいよ」
「へ、へぇー」
国王が若い頃はヤンチャ(?)という衝撃の事実に顔が引き攣る。
あの国王、結構凄かったりするのかな?てか何気にランバルト王家って才能が満ちてるのかも。ジークは剣でティーベルは魔法。話を聞く限り現国王も戦えたみたいだし。
「ちなみに国王陛下ってどれくらい強かったの?」
「詳しくは俺も知らないけど少なくとも歴代の国王は全員この聖剣を扱うことはできたらしいよ」
「それはすごい」
ジークの腰にある剣は正しくは聖剣ではない。だが強力な魔剣であることに変わりはない。それだけの魔剣を扱うには相応の才能と努力が必要だ。素直に称賛できる。
「というかこの聖剣を扱えるかどうかが即位の条件みたいなんだよ」
「そうなのか?」
それは初耳だ。
「実は過去に一度だけ例があるんだ」
「え?なんの?」
「ここだけの話にしてくれると助かるんだけど」
「わかった」
ジークは声のボリュームを落とすと話し始める。
「昔、第一王子と第二王子がいました。第一王子は何をしても平凡でしたが第二王子は何でもできる天才でした。ある日、国王は二人に問いました。『この聖剣が扱えるのか』と。第一王子は扱えませんでしたが第二王子は簡単に扱えてしまったのです。当時から第一王子が王位を継ぐ習慣があったのですが王家の象徴の剣が扱えないと国民に示しがつかない。国王は悩みました。そこで一つの案を思いつきました」
「お、おい……それって……」
「あぁ。第一王子の暗殺だ。第一王子が死んでしまえば必然的に第二王子が国を継ぐことになる」
「あまり気がいい話ではない。が、理解できるな」
「そうだな。無駄な争いを避けるには最善の手だ。言わば必要悪なのだろうな。理解できてしまうからこそ心から嫌うことができない。まぁそれで第一王子を暗殺することになったんだ」
「そんなことがあったとはな。てかそんな秘密事項、俺に話してよかったのか?」
「俺が信頼してるから話したんだよ。絶対に誰にも言わないでね。これは王家しか知らない話だから」
「国家機密じゃん!?」
割とマジの秘話じゃないか。
「これってティーベルは知ってるのか?」
「知っているはずだぞ。ただこの話には国王しか知らない続きがあるんだ」
「え?ジークは国王じゃないじゃん」
「でも次期国王だからね。聞いたのはこの間だったけど」
「てか待て。それ本当に俺に話していいのか?」
「もちろん。むしろガルの意見が聞きたいよ」
「俺の意見?」
「そう。この話の最後が不可解でね。王国で一番の知識を持つガルに意見を聞きたいんだ。いいかな?」
「いいけど……」
嫌な予感しかしない。
「その第一王子を暗殺しようとした晩、第一王子は姿を消した。他の貴族たちには病死したと伝え、他の王族には暗殺に成功したと伝えられたんだ。それでガル的にはこの第一王子はどうなったと思う?」
「普通に逃げたんじゃないか?」
「それはそうなんだが不可解じゃないか?どうやって警備が厳重な王城から一人で逃げ切れたのか」
「それは……」
「話を聞く限りその第一王子に逃げ切れるほどの腕はないと思うんだ」
「つまり協力者がいたと?」
ジークはコクリと頷く。
それにちょうど暗殺される日の晩に消えたというのも不思議だ。けど協力者がいたのなら辻褄が合う。
「さすがの俺もわからないな。第一王子派の貴族が脱出を手助けしたんじゃないか?」
「それはありえない。その計画を知っているのは王族と実行犯のみだ」
「……まさか、魔族?」
「そう、なのかな?」
「確証はないし断定はできない。だが可能性の一つとしては考えられるな」
もし本当に魔族が関わっているならその第一王子は魔族になっている可能性がある。
てか今この流れで話してると今回の事件に関わってそうな雰囲気があるんだけど!?




