学校長
「というわけでお前らはどうする?」
「「「「行く(行きます)!」」」」
即答かよ。
「まぁいいよ。だが今回は国として動くことになる」
「そうなんだ」
「いつも通りなのでは?」
「……確かに」
あれ?気づかないだけでいつの間には国に管理されていた?そんなわけ……
「北にあるバルマント公爵領にも寄るのですよね?」
「そうだね。これで晴れて家族全員公認に!」
「よく考えてみれば家族全員が認めた婚約ってティーベルくらいなんだよな」
「え!?フィリアも公認じゃないのか!?」
「あはは……お父さんはすぐに認めてくれたんですけどお母さんにはまだ認めてもらってないんです」
「反対されてるの?」
「そういうわけではないんですが……まだ報告してないんですよ」
「「「えぇ!?」」」
フィリアは気まずそうに目をそらす。
「えっと、お母さんはずっと私のこと応援してくれていたんです」
「いいお母様ではありませんか」
「てか、いつからコルンさんと共謀してたんだよ」
「共謀なんてひどい言い草じゃない?ガルくん」
「そうかな?思い返せばフィリアでは考えそうもないことをやってたからな」
「例えばどんなの?」
「座ってると突然膝の上に乗ってきたり」
「……ん?」
「食事中にあーんしてきたり」
「……あーん?」
「寝てるときにベッドにもぐりこんできたり」
「……へぇ?」
「あ、あの…みなさん?目が、目が笑ってないですよ?」
「そんなことないよ?」
「ちゃんと笑顔ですわよ?」
「ふふふ。観念するのだ」
「あ、圧が……圧があああああ……」
フィリアは涙目で俺に助けを求めるが知らんぷりをする。がんばりたまえ。
俺はフィリアに向かってサムズアップする。
「そ、そんなあああああああ!」
フィリアは三人に引きずられながら連行されていった。
「仲のいいようで何より」
次の日、俺は学校の学校長室に赴いていた。
なぜ学校長室に訪れたのかというとしばらく学校を休む手続きをするためだ。学校に所属しているのに学校長との面識はない。どのような人物なのだろうか。
「ガーリング・エルミットです!失礼します!」
「入れ」
扉を開けると椅子に座るおばあさんがいた。
「あたしがこの英雄学校の学校長、トトリカ・ジュハーク。ウォレンから話は聞いている」
わお。国王を呼び捨てってことは国王さんと長年の付き合いある人?
「あたしはウォレンの先生だったんだよ」
「そ、そういうことでしたか……」
この学校の学長してるだけで凄腕だと思ってたけど国王の先生か。王族の先生とか優秀じゃないとやれないだろう。………その理論でいくとミーナ先生は優秀なのかも?
「秋にもいろいろあったがまた巻き込まれるとは災難だな」
「秋のやつは俺自身が望んだことですから」
「ふっ。おもしろい男だな」
「恐縮です?」
褒められたのだろうか?
「それとあたし個人で君にお礼も言いたかったんだ。ありがとう」
「何に対してのお礼ですか?僕の記憶にはありませんが」
「春の一件だよ。その時はちょうど留守にしていて、できたことと言えば事後処理ぐらいだったよ」
「事後処理も立派な仕事ですよ」
「それでもだ」
トトリカは椅子から立ち上がる。
「本来であれば事件があった直後に言わなければならなかったが忙しくて顔を合わせる機会がなかったのでな」
「そのことでしたら気にしなくてもいいですよ。降りかかった火の粉を払っただけなので」
「魔族を火の粉に例えられるのは君くらいだろうさ」
そしてトトリカは机から複数の紙をつかみとると俺のもとまで歩いてくる。
「これを渡しておこう」
「これは……出席免除?」
紙には『出席免除書』と書かれていた。
「これは急遽作ったものでな。これにサインすればテスト以外の出席は任意となる」
「それは非常にありがたいですけどいいんですか?」
「気にすることはない。おそらく君はこれからもウォレンに頼られることになるだろう。一々手続するのがめんどくさい」
本音がもれたな。
「それに今の君は貴族だ。いくら国に義務を負わないとしても国からの要請を無碍にすることはできまい。何より君がこの学校で学ぶことはないだろう」
「そうですが」
「……即答されてしまうと教育者として悲しくなってくるな」
……なんかすいません。
「まぁそんなことで君にこれを渡しておこうと思ってね」
「でも俺の分はいいですけど他の四枚はなんですか?」
「君のパーティメンバーの分だが?」
「なんでですか?」
「どうせ彼女たちは君についていくんだろ?」
「そうですけど……」
「ならこれを渡しても問題ないだろう。それに彼女たちは君直々の教えを受けている。もう我が校の教師に教えれることはないだろうしな」
「ずいぶんはっきり言うんですね」
本来なら優秀な生徒であるほど意地でも引き止めるというのに。
「あたしが教育者と心がけていることは二つある。それが何かわかる?」
「いえ、さっぱり」
「まず一つは教え子の実力を正しく把握することさ。そうでなくては何を教えるべきかわからなくなってしまう」
「その通りですね」
「そして二つ目は教え子の成長を第一に考えることさ。自分より他の人の方がその子にとってよいと判断したならどれだけ優秀であろうとも手放す。そうでなくてはその子の才能が伸びなくなってしまう。あたしは子供たちが自分の才能を最大限に伸ばせる教育者になりたいと常々思っているのだよ」
「立派なお考えだと思いますよ」
前世では幾度となく無能のせいで才能を潰された人間をたくさん見てきた。この考えができるのは本当に生徒のことを思っているからだろう。簡単にできることじゃない。
俺は心の中で学校長の評価を数段上げた。
「彼女たちにとって良き先生なのは君なんだ。だから君が彼女たちを導いてくれ」
「そういうことならお任せください。彼女たちを世界屈指の実力者にしてみせますよ」
「ククク。将来を楽しみにしておくよ」
こうして俺は学校長との初対面を果たした。




