冬の始まりとともに
大きな変化があった秋も終わり冬になる。冬、そう。それは終わりの季節だ。
「もうすぐで入学してから一年が経つのね」
「進級、ですか」
「いろいろありましたわね」
「いろいろありすぎたんだよ」
「私は秋から来たからそこまで思うことも少ないな……」
リーゼは少し哀愁を漂わせる。
「これから思い出を作っていけばいい」
「そう、だな」
「特にお前は大変だっただろうな」
「はぁ。うるさいぞ、スティアード」
ケラケラとスティアードは笑う。
「今回は珍しくスティアードが正しいね」
「珍しくってなんだよ!」
「あら、スティアードがいつもおちゃらけているからよ」
「クレアは辛辣だな」
日常は変わらない。そう、変わらない……
「ガーリングさん、国王陛下から書状が届きましたよ」
「そんなことだろうと思ったよ!」
先生からの報告に反射的に大きな声を出してしまう。
「お、今度はなんだ?」
「また魔族の討伐かな?」
「ガーリング様は貴族になられてから大忙しですからね」
「……もしかしたらガーリングくんに嫁げば将来安泰なんじゃ?」
「システィア!?何言ってるの!?」
「ち、血迷ってはダメ!」
クレアとリリアがシスティアの肩を揺さぶる。
「俺も俺のことを好きではない相手と結婚したくないな」
「それは残念」
システィアは全く残念そうな感じがしないで言う。
さて、今回は何なのだろうな。
「すまぬな、また呼び出して」
ほんとだよ。
「大丈夫ですよ」
本心を隠すように笑顔で対応する。
「それで今回の用件はなんでしょう?」
「実は北の森で異変があったのじゃがその調査に行ってもらいたいのじゃ」
「森の異変、ですか……」
「魔物の次は森……もう何が何だか」
「そういえば魔物の被害はどうなったのですか?」
「ガーリングくんが言った通り、少なくなってきた」
「それはよかったです」
少なくなったとはなくなったわけではないということか。
「森の異変とはどのようなものですか?」
「辺り一帯に瘴気が満ち、森は枯れ果ててしまったのだ」
「瘴気ですか…」
「さすがに知っておるよな?」
「はい。前にティーベルから聞きました。魔物を召喚するものだと」
「そうじゃ」
「……闇系統魔術ですかね?」
俺は少し考えてから尋ねる。
俺の知っている闇系統魔術には瘴気なるものを発生させるものはない。だが新たに開発されたとも考えられる。
「そうなのか?闇系統魔術に関しては情報が少なすぎてよくわかっていないのだ」
「そうだったのですね」
確かに闇系統魔術は呪い系のため光系統魔術の治癒系とは違って使いどころが難しい。ただ、使い方によっては強力だ。それに光系統より適性を持つ者が少ないことも関係しているだろう。
「今回の調査にはこの者たちも同行させるつもりじゃ。入れ」
国王の命令で部屋に入ってきたのはジークロットと見知らぬ、いや顔は見たことあるけどよく知らない男性。
「やっほ、ガル」
「お初にお目にかかります、騎士爵様。騎士団長のシュレイナー・カリュボットです」
「あなたがかの騎士団長殿でしたか。私はガーリング・エルミット騎士爵です」
そして俺とシュレイナーは握手をする。
「それでなぜこのお二人を調査に?」
「この件は国を動かす」
「騎士団長がいるということは正規軍を使うのですか?」
「そうだな。それと聖剣を使う必要があるかもしれぬ」
「聖剣の力、ですか」
「そこからは俺が説明しよう。今の聖剣の所有者は俺にあるからな」
そう言ってジークロットは一歩前に出る。
「この聖剣には浄化の権能を持つ。森が魔に侵食されているならこの剣の権能が役に立つ」
「その護衛に我ら騎士団が出動するということです」
「なるほど」
それならば理にかなっているな。
「わかりました。人数はどれくらいになるんでしょうか?あまり大人数になるのは避けたいですね」
「確かにガーリング様の言う通りですね。大人数になってしまうと迅速な行動ができなくなってしまいますからね。少数精鋭の方が機転は利きます」
「そうじゃな。騎士団長含め騎士団五人、魔術師団五人。騎士団の選抜はそなたに任せる」
「はっ!」
「魔術師団の選抜はカルミアに任せるとしよう」
「カルミアとは?」
「ガルは知らなかったのか。王国の魔術師団長だよ」
「そうなのですね」
そもそも関わるつもりはなかったんだしな。
「カルミア殿は王国でもかなりの実力者ですからね」
「今では無詠唱魔術の中級まで習得したようですよ」
「独学にしては早いですね」
「えぇ。彼女は天才ですから」
王国にはティーベルみたいな天才がまだまだいるのか。
「準備にはまだ時間がかかる。ガーリングも準備があるじゃろうしな」
「ガルの場合は婚約者たちの説明兼彼女たちの準備があるしね」
「なんであいつらが来る前提なんですか……」
「むしろ君は彼女たちを説得できると思っているのかい?」
「……無理だな」
婚約者である四人のことを思い浮かべて苦笑する。フィリアは芯が強い。ティーベルは何かとついてきたがる。リリアは自分の意見を曲げはしない。リーゼは危険なんて顧みない。説得なんて絶対無理だ。
「そうですね。ではそうします」
「ああ、それとな」
国王が言い忘れたように発言する。
「北にはバルマント公爵領がある。行きと帰りに寄っていくといい」
「は………はあああああああああああ!?」
初耳なんですけど!?




