帰り道
全員目が覚めてしばらくして街を出た。今回は急ぐ必要もないから行きよりゆっくりだ。その間にいろいろ説明しておこう。
「何か聞きたいことはあるか?」
「ありますわ!」
真っ先に手を挙げたのはティーベルだ。というかあの場面はティーベルしか見ていなかったからな。
「あの黒い剣は何だったんですの?」
「黒い、剣?」
他の三人は俺の周りをジロジロ見る。そして黒い剣がないことを確認すると首を傾げた。
「それは魔族が使ってたのか?」
「違いますわ。ガルさんが使ってましたの。こう、雷がバチバチと鳴っていましたわ」
「でも見当たらないよ?」
「急に出てきたり消えたりしましたの!」
「「「ふーん」」」
そして説明するよう目で訴えられてる気がする。
それから俺は霊装について掻い摘んで説明した。
「魂の形……つまりガルさんの魂は黒い剣の形をしているということですわね」
「そうだけど……なんか黒いって言われると闇があるように言われてそうでへこむ」
「そ、そんなつもりはありませんわ!?」
俺があからさまに落ち込む演技をするとティーベルは必死にフォローしてくれる。
「あと気になってたんだけど、ティーベルが言ってた雷って何なの?」
「私も気になってました。ガル様って火属性と氷属性が適正なのではないですか?」
「どうしてそう思ったんだ?」
「よく火属性と氷属性を使っていますし、腰の剣も火と氷ですから」
「あー、なるほどな」
特に意識してなかったが無意識にその二属性をよく使ってたのか。
「確かに俺は火属性と氷属性の適性はあるよ」
「じゃあなんで雷?」
「それは俺の最適性が雷属性だからだよ」
「え?でもガルくんが雷属性を使ってるところ見たことないよ」
「あぁ……俺は雷属性と相性が良すぎて威力がバグるんだよ……」
前世でもよく怒られたからなぁ。誰にとは言わないけど。
「ちなみにどれくらい?」
興味津々といった様子でリリアが聞いてくる。
「そうだな……だいたい中級魔術一発で学校全部吹き飛ぶぞ」
「「「「…………………」」」」
「そこで黙るなよ」
失礼だな。
「とにかく、そういうわけだ」
「じゃ、じゃあ私たちで使えるの?」
「成長したらな」
「では学校に戻ったら早速練習を――――」
「ダメだ!」
「え?」
「お前たちは絶対にするな」
「ど、どうして?そんなに強いんだったら私たちも霊装を使えるようになった方がいいんじゃないの?」
「死にたいなら止めはしない。だが今のお前たちでは確実に死ぬとだけ言っておく」
「「「「………………」」」」
俺の厳しめの言葉に言葉を失っている。
「ならいつになったらいいの?」
「最低でも20歳までは待てよ」
「なっが!」
「本来はそれから使えるようになるんだよ。例外は稀に存在するがな」
過去に20歳になる前に霊装を現出させた者もいると聞いたことがある。ならばこの四人も20歳になる前に使えるようになる可能性がゼロではない。
「私としては霊装よりもあの魔族が持っていた白い剣の方が気になるな」
「それも気になりますね」
「黒い剣と白い剣とはまるでアルス伝みたいですわね」
……そのまんま二本の剣ですから。正真正銘、本物なんだよな。
「でもどうして気になるんだ?」
「まずあの剣から魔力が視えなかったのだ。私の魔剣や魔甲を破るくらいなのだから魔剣の類のはずだ。それなのに魔力が一切ないというのは不自然すぎる。それに――――」
「それに?」
「まるで魔剣の権能が打ち消された感じがしたのだ。上手く言葉では言い表せないのだが……あの剣とぶつかった瞬間だけただの剣や鎧になったような……」
リーゼのその感覚は正しい。魔剣や魔甲に魔力を注いでいたのならばきっと強制的に剣と自分の間の魔力が切られたのだろう。それは感覚的なもので言葉では表現できない。
「もしあの剣について知っているのなら教えてくれ!」
「さあな」
俺はしらばっくれることにした。
ここであの剣が聖剣であることを教えてもいい。だがそれは大きな混乱を巻き起こす。聖剣は王国にすでにあるのではないか。なぜ魔族が聖剣を持っているのか。どうしてあの剣が聖剣だと知っているのか。諸々の事情を考慮すればここで教えない方がいいだろう。
「そういえばリーゼの剣を新調しなければならないですわね」
「そうだな。帝国にいいのがあったかな……」
「さすがに王国の国宝は貸し出せないからね」
うーんとリーゼは頭を悩ませる。あれほどの魔剣を何本も所有するのは難しいだろう。
「ガル様は他に持ってないですよね?」
「さすがに持ってないでしょー」
「フィリア、個人で魔剣を所有ってなかなか出来ないのですよ?」
「こればっかりはガル殿でも難しいだろう」
「ですよねー」
「いいもの持ってるぞ」
「「「「え?」」」」
「え?」
なんか変なこと言ったか?
「な、なんで持ってるの!?」
「古代遺跡に行った時に一本パクってきたんだよ」
「そのようなこと王国にバレたら大問題ですわよ!?」
「バレなきゃいいんだよ。それにリーゼが持つならパクってきたってわからないだろ?」
「それは、そうですが……」
ティーベルとリリアは納得いってないみたいだ。
「えーと、いいのだろうか?そのようなものを貰っても……」
「別にいいだろ。魔剣だって使えなければただの骨董品だ。使ってやった方が魔剣も喜ぶ」
「そこまで言うならありがたく使わせてもらうよ」
「魔剣の名称は七豪剣スベルーニャ、権能は最大七段階の身体強化の補助をすることができる」
「つまりは、身体強化の強さが七つになるのか?」
「そうなるな。だが強くすれば強くするほど身体の負担が大きくなるから無理はしないようにな」
「わかった!努力する!」
それは使いこなせるように努力するということだよな!決して無理をしないように努力するってことじゃないよな!?




