融合魔術
街の中は閑散としていた。
「人がいない街って不気味ですわね……」
「……わっ!」
「ひゃああああああああ!」
「驚いちゃって可愛い」
「り、リリア………」
「遊んでないで行くぞ。すでに俺たちのことはバレてるんだから」
そして街の中心と思われるところに着いた瞬間、魔術が周りから打ち出された。
「くっ!」
リーゼがグランを抜こうするが間に合わない。というかこれだけの魔術を相手に魔剣一本では防ぎきれないだろう。いや、バルザムークならやりかねん。
俺は魔力障壁を展開する。魔術をすべて受け止めたのは想定内だが、驚いたのはティーベルも魔力障壁を展開していたことだ。
「まさか間に合わせるとはな」
「わたくしだって成長していますわ」
そして建物の影から五体の魔族が姿を現す。
「おいおい、五人だけかよ?」
「ワタクシたちも甘く見られたものね」
「何でもいいからぶっ殺せばいいんだろ?」
中々に悪辣な奴らばっかだな。
「ティーベル、援護は頼んだぞ!」
「任せてください!」
「フィリア、行くぞ!」
「はい!」
リーゼとフィリアは剣を持って突っ込み、ティーベルは魔術で援護に入る。
しかし俺はそれを見ずに魔族を観察していた。より正確に言えば魔族のつけている腕輪だ。腕輪には水晶が嵌め込まれていて明らかに何かの能力を持つだろう。見た感じ魔封石のようだが空間に効果を広げるには装置も必要だ。しかしあの腕輪にはそのような効果は見当たらない。そもそもこちらの魔術を封じる方が奴らにとって優位に進められる。何を隠し持っている?
「やああああああああああ!」
リーゼは気合いを込めて剣を振るうがあっさりと躱されてしまう。しかし躱すということは脅威と認識されているということだ。
「はああああああああああ!」
フィリアもスピードを活かして攻撃を加えている。攻撃は着実に魔族を掠めておりダメージを与えている。その二人に邪魔が入らないようにティーベルは上手く魔術で牽制している。
「鬱陶しいわね!」
魔族の一人がティーベルに標的を定める。
「させるか!」
俺は間に入って魔族を切り付ける。
しかしそれもあっさりと躱される。
「チッ!」
「『豪炎』!」
「ぎゃああああああああああ!」
炎が魔族を包み込む。
「何やってんだよ!『水渦』」
手の空いた魔族の一人が水の中級魔術で炎を打ち消す。
「よくも、よくもよくもよくも!」
攻撃を受けた魔族は激昂する。
「来い!」
魔族たちは全員前線を離れて後退する。よく見ると魔族たちはダメージを負っている。それに対しフィリアたちはリリアの光系統魔術のお陰もあってダメージも少ない。いい連携ができている証拠だ。
「ワタクシたちを怒らせたことを後悔させてやる!」
魔族たちは水晶に魔力を込めるとそれぞれ五色に光る。
「っ!そうか!特殊加工魔封石!」
「何なのそれ?名前からしてヤバそうだけど?」
「魔封石って古代遺跡の時のものですわよね?あの時のような違和感はありませんわよ?」
「まぁあん時みたいな空間に効果を及ぼさないからな」
「なら特殊加工ってなんですか?それにあの色は?」
「各属性に特化したものだな。赤が火、青が水、緑が風、茶が土、黄が雷の耐性を持つ。各属性に特化しているからどんな魔術でも無効化してしまう。ぶっちゃけ今のお前らではもう無理だな」
「だ、だが私はまだ戦えるぞ!」
「私も身体強化が使えますよ!」
「二人ともな……やる気があるのはいいが魔術の援護なしで魔族と戦うのか?」
「「そ、それは……」」
二人は口ごもる。
「ちゃんと見とけよ。特にティーベルな。魔術の一つの到達点がわかるはずだ」
「魔術の……到達点……」
そして俺は前に進む。
「たった一人でワタクシたちの相手をするなど甘いわ!」
「『豪炎』『氷華』」
「効かない!」
赤と青の魔封石を持った魔族が前に出てそれぞれ受ける。そして俺の魔術はあっさりとはじかれる。氷属性は水属性の派生であるため水属性の耐性がある魔封石には無効化されるのだ。それは魔剣であっても例外ではない。
「やっぱりか」
「ほ、本当に効いてない……」
「嘘でしょう!」
「あんなに小さい石なのに」
ティーベルたちは驚きを隠せない。
「死ね!」
俺はヒラリと体をひねって躱す。
「『風渦』!」
「『水渦』!」
しかし躱した先を予測したように魔術を放たれる。
「ふっ!」
魔力障壁を展開してやり過ごす。
「やっぱり一人はキツイんじゃないかしら?」
安い挑発だな。
俺は魔力を集中して練り上げる。
「あら、諦めたの?」
俺からの攻撃が止んだことで好機と思ったのか魔族たちが攻撃してくる。近づいてくる魔族、魔術を放つ魔族。
「『砂塵』!」
「『雷槍』!」
「危ない!」
ティーベルは魔力障壁で魔術を防ぐ。しかし魔族たちは止まらない。
「ガル殿!」
「問題ない」
俺を中心に魔力が溢れる。
「こ、これは……」
「これが魔術の一つの到達点だ。融合魔術『氷炎』!」
炎と氷が混ざった魔術が魔族に向かって放たれる。
「こんなもの!」
火と水に耐性を持つ魔封石を持っている魔族が盾となるように前に出る。
「「う、わああああああああああああ!」」
魔族の絶叫が響く。
「バカな!?」
「特殊加工魔封石が属性魔術を無効化できるのは属性魔術を発動するときに発生する基礎的な魔力パターンを妨害するからだ。火属性には火属性の、水属性は水属性のな。だからこそ一属性の魔術に対して絶大な効果を持つ。しかしその代わり別の魔力パターンには非常に弱いんだ」
「だ、だからどうしてそれが今のことに繋がるの!?」
「融合魔術とは各属性の魔力パターンを重ねることで発動する。さっきのは単体の火属性や水属性とは異なる魔力パターンだった。だから特殊加工魔封石は意味をなさなかった」
「な、なんなのよ……それ……」
「ティーベルも見ていたか?」
俺は振り向く。するとそこには惚けたように見惚れている四人がいた。
「「「「綺麗……」」」」
あれれ?見惚れすぎてる気が……
「こ、この!」
魔族たちがヤケクソ気味に突っこんでくる。
「『氷炎』!」
「「「「ぎゃああああああああああ!」」」」
魔族たちは軽く吹っ飛ぶ。魔族たちの所持している特殊加工魔封石はこの負荷に耐えられず砕けてしまっていた。
「とりあえずお前たちは殺しておこう」
「ぐ……こんな、ところで……」
俺は魔力を練り上げる。
「『氷炎』!」
魔術が魔族たちに迫る。
そこに突然、黒い影が空から飛んできた。
「何!?」
「何かが飛んできたように見えましたが?」
「嫌な予感がするぞ」
「ガル様!」
四人が叫ぶ中、俺の意識は全て影に向けていた。
この魔力量は異常だ。魔力暴走者にしてもこの、量、は――――――
土埃が晴れて相手の姿が見える。
「おま、えは……」
その姿は決して見間違えるはずはない。いくら姿かたちが変わろうとも。なぜなら、こいつは、彼は、長年背中を預けてきた相棒であり右腕なのだから。
「ダリューン……」
かつての面影を残した友は純白の聖剣を手に俺の前に立ちはだかっていた。




