移動
帝国に着くと皇帝自らが出迎えてくれた。
「みな、よく来てくれた!リーゼ、久しぶりだな!」
「父上!お久しぶりです!」
いやそんなに日にち経ってないだ。
「ティーベル王女やリリア嬢、そしてフィリアもよくぞ参られた!とりあえず今日はゆっくりしていくと良い」
「ありがとうございます、皇帝殿下」
ティーベルが代表して頭を下げる。
「ガルは話をしたいから借りていくぞ」
「そうだな。詳細を詰めておきたいし情報はほしいところだったからな」
「……え?どうしてガルくんは皇帝殿下にそんな親しげに……?」
「なぜか気に入られてしまったのですわ。気にしたら負けです」
「ん?どうした?」
「あ、なんでも…」
「そうか?」
俺はバルザムークの後ろについていった。
「それでバルザムーク殿の部屋で話をする必要ある?」
「いいではないか、未来の息子よ。義父上とでも呼んでもいいのだぞ?」
「遠慮しておく」
「そうか、それは残念だな」
全く残念ではなさそうに豪快に笑う。
「それで?街の人間が消えたってのはどういう意味だ?」
「……そのままの意味だ」
「何者かによる殺害か?」
「それが一番現実的であろうな」
俺は出されていた紅茶で喉を潤す。
「魔族絡みか?」
「そうであると考えている。そうでなければ帝国の兵が幾度も負けるわけがなかろう」
「だとすると相当の手練、あるいは厄介な人工遺物持ちだろうな」
「む、奴らは人工遺物を使うのか?」
「以前そういう奴と戦ったことがある。かなり苦戦したがな」
俺はその時のこと、古代遺跡での出来事を思い出して顔を顰める。
「ガルがそんな顔をするとは、かなり手こずったようだな」
「もう二度とあんな状況にはなりたくないな」
「すまぬな、このようなことに巻き込んで」
バルザムークが頭を下げる。そのことに驚いてしまった。
「どうした?らしくない」
「本来ならば帝国だけで解決しなければならない問題だったのだが力及ばずガルに縋るなど」
「それは王国もそうだ。魔物の増加に対応しきれなくなったから帝国の力を借りようとした。お互い様だろ」
俺は肩をすくめる。
「それにここはリーゼの故郷で大事な場所だ。それを守るのも吝かではない」
「ガルはなんやかんや優しいのだな」
「黙ってろ」
俺は無性に恥ずかしくなって紅茶を飲み干した。
目的地までは近くの街まで馬車でその後は歩きだ。そもそもここにいるメンバーは馬車より走った方が早いのだが力の温存をしておきたいため馬車に乗っている。
「今回は魔族絡みの可能性がある。それも強力な個体、あるいは人工遺物持ちだな」
「「「人工遺物……」」」
リーゼ以外の三人は苦々しい顔をしてつぶやく。三人もあの時のことを思い出したのだろう。
「魔族は人工遺物を使うのか?」
「そうですわね。あからさまな武器を使う魔族は聞いたことも見たこともないですが、わたくしたちは以前人工遺物を使った魔族と戦いましたわ」
「魔封石って言って魔術の妨害してきたんだよ。あの時はガルくんがいなかったら死んでたね」
「魔族単体でも強いので人工遺物まで使われると手の施しようがないですね」
「そ、そんなにか……」
リーゼは学校で三人の実力を把握しているため素直に驚いている。三人の実力は王国でもトップクラスなのだが帝国でもトップクラスとのことだ。その三人が暗い顔をしているのだ。
「少し不安になってきたな」
「ガルくんがいるし大丈夫だよ、多分」
「そこは言い切って欲しかったな」
「わたくしたちはガルさんの実力を知っていますがやっぱり不安はあるのですわ」
「まあ不安を持つことは悪いことではない。けどそれでパフォーマンスを落とすのはダメだぞ」
「はい」
魔族、か。俺の中では魔族=過去の魔力暴走者だと確定に近い予測をしている。だが、断定はできない。そもそも魔力暴走者がどうして理性的になれているのかの説明もつかない。考えれば考えるほどわからなくなってくる。
情報交換をしていると街に到着した。
ここからは自分の足での移動になる。
「それじゃあ行くぞ」
「「「「はい!」」」」
俺たちは街道を走る。目的地に近づくにつれて人は減っていき、付近まで来ると人影が誰一人見当たらない。
「……ここからは歩いていこう」
街の入口より手前で一旦止まる。
「何か分かったのか?」
「街の人間は誰もいない。もしかしたら皆殺しにされたかもしれない。あとちゃんと魔族がいる。しかも全部で五体」
「そんなに!?」
「それではいくら何でも帝国といえど一筋縄では行かないかもしれませんわね」
「……いや、どうしてこの位置からわかるんだ?」
「「「「へ?」」」」
そういえばしっかりと教えたことはなかったな。
「たしかに、わたくしたちも詳しく教えてもらったことありませんでしたわね」
「いつも状況が状況だっただけに聞くこともできなかったっていうか……」
「どうしてでしたっけ?」
「無属系魔術の探知魔術だよ」
「探知魔術ってそんなはっきりわかるものなの?」
「そうだな。魔力量の違いがはっきりとわかるから人間と魔族は見分けがつきやすい」
「探知魔術といえばぼんやりと何かがあると感じるだけではないんですの?」
「そんなわけないだろ。それだったら気配で察知する方が早い」
「な!?」
「リーゼならすぐ上達すると思うぞ。魔力が視えることは探知魔術にも応用が効くからな」
「そうなのか!今度は探知魔術も練習しよう!」
「じゃあもう疑問はないな。気を引き締めろ」
「「「「はい!」」」」
俺たちは街の中に入った。




