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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国編
62/176

王女と皇女

 帝国の王城前。

「本当に来るの?」

「もちろん!」

 俺はリーゼに尋ねる。

 なんとリーゼがランバルト王国に同行すると言い出したのだ。

「いいではないか!連れて行ってやってくれ!」

「バルザムーク殿まで……」

 そもそもの元凶はこの人だ。バルザムーク殿が

『王国に帰るならリーゼも連れて行くといい。リーゼも婚約者のそばにいたいはずだしな』

 それにリーゼも乗っかかり今に至るというわけだ。

「確かにガーリング様とリーゼロッテ様が婚約したとなれば皇族の方が来られることが最善ではあります。しかし無理しなくとも……」

「気にするな。あと私のことはリーゼと呼んでくれ、ティーベル」

「い、いえ。()()()()遠慮しておきますわ」

「む。そうか」

 リーゼが悲しそうな顔をする。ティーベルは罪悪感をにじませた。一方、バルザムークは何かに気付いたように笑う。

「急に笑うとか怖すぎなんだけど……」

「何、いずれわかることだ!」

「は、はあ……」

 何なんだ?

「父上、行ってまいります!」

「行ってこい、リーゼ」

 バルザムークとリーゼロッテは別れの握手をした。










「そういえばその魔甲はいつも着てるのか?」

「そうだな。いつもは魔力を通してないから通常の重さだが生活には支障はないぞ」

「重くないのかしら?」

「決して軽い、というわけではないな。だが鍛えているからそこまで思いとは思わない」

「さ、さすがですわね……」

 ティーベルは顔を引き攣りながら必死に笑顔を作る。

「着てみるか?」

「遠慮しておきますわ!」

 リーゼが魔甲を脱ごうとしてティーベルは慌てて止める。

「ですが魔甲だけでなく魔剣まで装備しているなんてリーゼロッテさんはすごいですわね」

「そうだな。よく魔力がもつな」

 リーゼの魔力量は相当ある。ティーベルに及ばないまでもあの皇帝よりある。ただティーベルが規格外なだけだ。

「確かに私は魔力量が多い方だと思うが正確には分からないな。それに私はまだ父上に勝てたことがない」

「それは仕方ないだろ。技量はともかく経験の差が違いすぎる。もっと経験を積めばすぐにでも勝てるようになるさ」

「皇帝殿下自身もそう仰っていましたわよ」

 どうやらバルザムーク殿も同じ見解のようだ。

「だからこそ私はガル殿とともに行動するのだ。そして必ず父上を超えてみせる!」

 リーゼはそう意気込んでいるようだが頑張りすぎないか不安でもある。











「こ、こうか?」

「大体できてるかな。でもまだ粗いところがあるからそこを気を付ければ完璧だよ」

 二日目、馬車の中で俺はリーゼに無詠唱魔術の身体強化魔術を教えていた。リーゼは飲み込みが早く、更に魔力も朧気ながらだが視ることができるためフィリアよりも上達が早かった。

「その魔力を視る、というものは誰にでもできるものなのですの?」

 ティーベルは自分だけ蚊帳の外にいることが不満なのか、不貞腐れたように頬を膨らませている。

「誰にでもできるわけじゃないさ。本当に才能がないといくら頑張ったところで成果はない」

「……つまりわたくしに才能がないのですわね」

「そんなことないと思うけど。多分まだ開花してないだけだよ」

 ティーベルほど魔力との親和性が高い人間が魔力が見えないなんてことはないと思う。

「そのうち視えるようになるよ」

 それは本音だ。今までの努力が積み重なってようやく視えるようになる。まぁ時間の問題だな。

「ちなみにリーゼはいつから魔力が視えるようになったんだ?」

「いつ最近だな。何だか身体強化してる相手と対峙してるとぼや〜とオーラみたいなものが視えたんだ」

「なるほどな」

「魔力が視えると何かいいことがあるんですか?」

「むしろいいことしかないな。魔術の発動兆候がわかるからその対応が楽になる。極めれば相手がどんな魔術をどれほどの威力で発動するのかもわかるようになるぞ」

「その言い方はまるでガルさんはそう視えているように聞こえますが……」

「実際そうだし」

「そ、そうなのですね……」

「私も早く上達したい!」

「慣れてくれば自然と上達するさ。ティーベルも今後はその方面を中心に特訓するか」

「はい!よろしくお願いしますわ!」

 ティーベルはやる気満々に答えた。

 そんなこんなで二日目も無事に終わった。









 そしてやってきた魔の三日目。魔といってもティーベルが襲われたのが三日目だったというだけで特に意味はない。

 しかしやはり三日目は何かあるのか魔物の襲撃にあった。

「皆様は馬車から出ないようにしてください。魔物は我々で対処します」

 護衛の一人がそう言う。

「いや、ここは俺たちがやりますよ」

 護衛の人の言葉を断って外に出る。

 相手は六匹、キラーウルフの群れだ。

「じゃあ二人でやっちゃって」

「ガルさんがやるのではないのですか!?」

「任せろ!」

 ティーベルとリーゼで反応が全く違う。

「まずはリーゼの力を把握したい。戦って強いことは確認できたが実戦も見てみたい。ティーベルはリーゼの援護をするんだ。初めての連携だろうがお前たちならできると思う」

 ティーベルは魔術の天才、リーゼは剣の天才。この二人が組めばそうそう後れを取ることはないだろう。

「前衛のコツは無理をしないことだ。下手に動けば援護がしにくくなってしまう。後衛のコツは戦闘を俯瞰的に見ることだ。そうすることで視野が広くなり的確な援護もしやすくなる」

「「ふむふむ」」

 二人は真剣に俺のアドバイスに耳を傾けている。

「ってわけでやってこい。危険だと判断したら俺も介入する」

 その一言が決定打になったのか、二人の目にやる気に満ちる。

「やろう!」

「やりますわ!」

 そして二人は並んで魔物たちと対峙する。

「では始めますわ!」

「ああ!」

 まずはじめにリーゼが魔物たちに切り込んでいく。

「やあああああああああああ!」

 リーゼの剣は魔物たちによけられてしまう。リーゼの剣は地面に激突するとすごい音をたてて大きなクレーターを作り出した。

「……馬鹿力なのかしら?」

「多分魔剣の権能だと思うよ」

「確か…重力制御でしたわよね?」

「そうだ。あの一撃は本来の何倍もの重力がかかっているはずだ」

「うわあ…………」

 今の一撃を想像したのだろう。ティーベルは顔を引き攣る。

 重力制御は魔術にも存在する。しかし自分以外に発動することはあまりない。というのも重力制御魔術は発動させる対象に魔力を練る必要があるのだ。しかも燃費がそこまでいいというわけではない。そのため使い勝手が悪い。それでも上手い使い方をすると絶大な力を得ることができる。

「ティーベルも集中しないと」

「そうですわね」

 リーゼはまだ一人で六匹のキラーウルフと戦っている。

「やあああああああああ!」

 ようやく一匹倒した。そこに二匹のキラーウルフが迫る。

「くっ!」

 リーゼは反応できない。

「『氷弾アイスバレット』!」

 氷属性の初級魔術が二匹のキラーウルフを打ち抜く。

「お見事!」

「貴方もですわ」

 二人は目を合わせると顔をほころばせる。

「では私も!」

 そう言うとリーゼは残りのキラーウルフに向かって駆け出す。キラーウルフたちは仲間が殺されたことで怒り狂いリーゼのもとへ駆ける。

「剣技『散華演舞《《さんかえんぶ》》』!」

 リーゼはキラーウルフたちを相手に剣を連続で振るい三匹とも絶命させる。その姿はさながら舞っているようだ。隣のティーベルは目を輝かせている。

 リーゼは魔剣を鞘に収めるとこちらにやってくる。

「無事に倒しきったな」

「な、なんですの、今のは!?」

「何とは、私が習得した剣技の一つだ」

「かっこよかったですわ!」

「そ、そうか!」

 ティーベルの尊敬の眼にリーゼは得意げな顔をする。

「二人とも上出来だ」

 初めての連携にしてはうまくいったみたいだ。

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