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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国編
61/176

その頃の王国

 一方のその頃、王都では――――

「ガル様、全く帰ってきませんが大丈夫でしょうか?」

「心配しすぎよ。今頃帝国でいろいろやってるんじゃない?」

「そうだといいのですが………」

 フィリアは浮かない顔をする。

 ガーリングがティーベルを助けに行ってからすでに二日が経っているのだ。助けに行っただけでは遅すぎる。

「フィリアがそんな顔してたらガルくんも安心して戻って来れないよ。ほら笑顔笑顔」

 そう言うリリアも普段より笑顔に華がないような気がする。

 リリアも口では明るくふるまっているが、心の中では心配なのだ。

「ティーベル、結婚しちゃうんだよね」

 ガーリングのことも心配ではあるのだがそれ以上に何も言わずに帝国に行ってしまった親友の身も案じている。

「ガル様が攫ってきたりしないですかね?」

「ふぃ、フィリアって過激なのね……」

 リリアはいつも大人しめで可愛らしい友人の過激すぎる発言にこめかみがピクピクしてしまう。

「ですがこのまま何もなしは寂しいです」

 フィリアはまたもやしゅんとしてしまう。見ている側罪悪感が湧いてしまう。

「それは私だって同じ気持ちよ」

 リリアがフィリアを後ろから抱きしめる。

 二人は同じパーティメンバーだった少女のことを思い浮かべる。









 フィリアとティーベルの関係はこの学校に入ってからだ。元々フィリアは使用人という立場。本来なら交わることはなかった二人だ。しかしフィリアはガーリングによってこの学校に入学した。そしてティーベルは身分の違いを気にせずフィリアと仲良くしてくれた。だからこそフィリアはティーベルを慕っている。

 フィリアは気が付いていないがティーベルが仲良くすることで暗に王女と懇意にしているぞという牽制にもなっていたのだ。


 リリアとティーベルの初対面は五歳の時だ。当時のティーベルはすでに魔術を扱えることができていた。だからもうその時には魔術の実戦練習をしていた。ティーベルが練習していた中庭にリリアが迷い込んだのだ。

『あなたは、誰?』

 それがティーベルとリリアの出会いだった。

 それからというもの、リリアは父と伴って王城に行ったときにはよくティーベルと話していた。魔術の話をしたりお互いの好きなものを話したり。そしてリリアはティーベルのことを尊敬していた。完璧だという印象が強すぎたのだ。

 しかし学校に来てからというもの、ティーベルは完璧の中に年相応のかわいらしさがあって親近感がわいた。そう考えれば考えるほど、ティーベルが近くに感じることができて今までよりさらに仲が深まった。


「二人ともどうか」

「無事でありますように」

 少女たちは西へ祈りを捧げ続ける。










 そして王城、その政務室でとある書簡を読んでいる男性がいた。その男性はその書簡に目を通すとワナワナと震えていたが読み終えた後は何ともいえない複雑な表情をしていた。

「陛下、帝国はなんと?」

「まずは行きにティーベルが魔族に襲われたそうじゃ」

「な!?」

 予想外の回答にさすがのリュークも驚きを隠せない。

「それでティーベル様はご無事なのですか!?」

「無事、といえば無事ではあるがのう」

「どういう意味ですか!?」

 はっきりしない物言いにリュークは焦りを募らせる。

「出会った魔族は相当悪趣味なやつだったらしくティーベル以外の護衛、侍女を皆殺しにした後、援軍に来た帝国の騎士を蹴散らしたらしい。そしてその中にはあのウェイン皇子がいた」

「で、ではウェイン皇子のご容体は?」

「魔族によって殺されたらしい」

「それは……」

 あまりの出来事にリュークは言葉を失ってしまう。

「もしそれをティーベル様が知れば……」

「知っているも何も目の前で殺されたそうじゃ」

「な!?それはあまりにも!」

 過酷すぎる、という言葉が口から出ることはなかった。

 ティーベルは王族としての責任感が強くいくら大人びているとしてもまだ成人していない精神的にも未成熟の少女なのだ。

「まあそれで時間稼ぎができたのだろう。強力な味方が現れたことでその窮地を脱したらしい」

「強力な味方、ですか?」

「名をガーリング・エルミットと言う」

「………また彼ですか」

 それには驚愕というより呆れが出てしまう。

「ん?ちょっと待ってください。彼は学校だったのでは?そもそもどうやってたどり着いた?」

「さあな。本人に確かめなければわからぬであろう。ただガーリングによってまたもやティーベルが助けられたことは事実じゃ。感謝せねばのう」

「そうですね」

「まあここまではいいのじゃ。問題はその次、バルザムークがウェイン皇子の代わりにギルディア皇子をティーベルの婚約者としてもいいだろう、とのことじゃ」

「やはり帝国はそう言ってきましたか……」

 予想できていたのかリュークが取り乱すことはなかった。

「それなら一度ティーベル様が王国に戻ってきてから決める必要がありますね」

「それが帝国はティーベルが許可したらすぐにでもギルディア皇子との結婚を執り行うと言っておる」

「……まずいですね」

 ティーベルはほぼ人質とした形で帝国に行ってしまった。ティーベルの性格上、結婚を断るようなことはしない。

「よりにもよってギルディア皇子ですか……」

 リュークは眉を顰める。

「ギルディア皇子の悪評は王国にも届いておる。ティーベルには一番結婚してほしくない相手なのじゃが……」

「ティーベル様が許可をしてしまえば取り消すことはできません。もう手遅れかと……」

「そう、じゃな……」

 政務室には重苦しい空気が広がった。

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