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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国編
57/176

皇帝との交渉

 帝国の一番の特徴と言えば完全な実力主義という所だろう。文官、武官共に実力があるならば低い身分のものでも高い地位につくことができる。そしてなにかの揉め事は決闘での勝利者の方の要求が通ることも多い。

 それこそ帝国相手につけ入る唯一のものだった。

「試合の諸々は我が決めてもよかろう?」

「構いませんよ」

 俺と皇帝は競技場で向かい合う。

「ではその剣を抜け」

「………本気ですか?」

 この剣を抜く、それを意味するところは

「私の魔剣とやりあうと?」

 俺の魔剣は一級品だ。魔力を通していない通常の剣なら一撃で仕留めてしまうほどの。

「もちろん我もこの魔剣を抜く」

 そう言って抜剣したのは普通の剣に見えるもの。

「魔剣ストレイドだ。能力は戦ってのお楽しみだ」

 あの魔剣もどうやら相当のようだ。

「わかりました。では私も」

 そう言って俺は腰の二本の剣を抜く。赤と青の剣は美しく帝国の人間は惚けたように俺の剣に見とれている。

「よい剣だな」

「殿下の剣も素晴らしいものです」

 お互いに持っている剣を褒める。

「では審判は続けてこのアドナクト・ウァレスが務めます!両者、構え!」

 俺と皇帝は剣を構える。

「はじめ!」








 試合開始直後、ギルディアと同じく身体強化の魔術を使うと思ったがなんの強化もせずに斬りかかってきた。速さはさっきの身体強化したギルディアよりも圧倒的に速い。

「やあああああああああああああ!」

「はあああああああああああああ!」

 ガキィン!

 剣と剣のぶつかる音が響く。

「この我の剣を受け止めるとは見事だ」

「殿下こそ、身体強化なしでこの威力は恐れ入ります」

「真正面から受け止めたそなたには言われとうない、な!」

 皇帝、いやバルザムークは力を込める。それに合わせて俺も力を入れる。すると今度は力を緩める。俺の剣はバルザムークに向かって振るわれる。しかしそれがバルザムークに当たることはなかった。

 力を緩めたところで俺の押す力を利用して後ろに下がったのだ。

「次はどうだ。魔力よ、体に満ちて恩恵を与えよ!『身体強化オーバーエフェクト

 今度は身体強化を施した状態で斬りかかってくる。速さも強さもさっきより段違いだ。

「やああああああああああああああああ!」

「くっ!」

 俺は思わぬ力に顔を顰める。

「これも受け止めるか。その力、どういうものなのだ?魔剣の力か?」

「帝国のことを信用したならば教えます」

「我ではなく帝国か?」

「殿下のことは信用しておりますがこの力を帝国が悪用しかねないものですので」

「く、はははははは!おもしろい!誠に気に入ったぞ!」

「ありがとうございます」

 剣を交錯させてる距離で言われてもな。

「やあ!」

 俺はさらに力を込めてバルザムークを押し返す。

「なあ!?」

 俺はだんだんと剣を押し込んでいく。

「ぬ、おおおおおおおおおおお!」

 バルザムークは押し返そうと力を込めるが押し負けてしまう。

「くっ!」

 バルザムークを分が悪いと思ったのか一旦俺と距離をとる。

「我と互角に剣を打ち合ったのはそなたくらいよ。誠に愉快だ!」

「そうですか。楽しんでいただけたようで何よりです」

「これほど心踊ったのは久しぶり。その礼に我の力を見せてやろう」

 そう言うとバルザムークは横に振るう構えを見せる。俺とバルザムークの距離はまだ離れている。剣では届きそうもない。

 何をするつもりだ?魔剣の能力かもしれない。

 俺はさらに意識を集中させる。

「せええええええええええい!」

 バルザムークがストレイドを横凪に振るう。

 その剣が当たるわけがない。そう思ったがそれはあくまでなんの情報もない俺の判断。

 キィン!

 俺のヴィルヘルムとバルザムークのストレイドがぶつかり合う。

 なんとストレイドの剣身が伸びたのだ。

「まさか、剣が伸びるとは思いませんでした」

「この魔剣の正式名称は伸突剣しんとつけんストレイドだ。これを初見で防ぐとは見事!」

 お互いがお互いを褒める。

「しかしこれで終わるとは思っていないだろう?」

 バルザムークはストレイドの伸縮を自在に操り俺を倒そうとしてくる。それを剣で払い、交わしながら接近しようとする。しかし接近すれば分が悪いとわかっているのか徹底して俺の間合いに入らないようにしている。

 ストレイドの力はとても強い。一見、伸びるだけと思うだろうがそれがとても有効なのだ。剣の間合いは非常に狭く接近しなければまともに戦えない。しかしストレイドはその概念を覆す。

 今の俺とバルザムークの距離は槍でも届かないほど開いている。それなのに向こうは一方的に攻撃を仕掛けてくる。それはやられる側としては脅威以外のなにものでもない。

 しかしそれを扱うにはそれ相応の努力が必要となる。俺は一介の武人としてバルザムークに対しての敬意をより一層深めた。











「このままでは埒が明かない。フェ二ゲール!」

 俺はフェ二ゲールを掲げる。すると氷の礫が無数に現れる。

 氷の礫は一つ一つに無詠唱魔術の初級魔術並の威力を持つ。

 俺が件を振り下ろすと氷の礫はバルザムークに向かって降り注ぐ。

「………くっ!」

 バルザムークは素晴らしい反射神経で全てを叩き切る。しかしその間は必ず足が止まる。

 その隙を見逃さず接近する。バルザムークが最後の氷の礫を叩き切る頃にはすでに目の前まで接近していた。

「やああああああああああ!」

 俺はヴィルヘルムを振り下ろす。バルザムークは咄嗟にストレイドを振り上げるが出遅れたせいで力を込め切ることが出来なかった。ストレイドを弾くと今度はフリーのフェ二ゲールを振るう。

 これで終わり――――

「だと思うなよ!」

 バルザムークはストレイドの剣身を伸ばす。ストレイドの剣身は地面に刺さりこれ以上前に伸びることはない。すると今度はバルザムークを伴って後ろに伸びる。

 そのせいでフェ二ゲールは空を切る。

「………そんなのあり?」

 予想を上回る行動に思わず素が出てしまう。

「戦士たるもの、常に最善の行動をとるものだ」

 最善の行動があの回避行動か。あれを咄嗟にでも判断できるあたり、バルザムークは間違いなく最強の一角となるだろう。

「ではこれならどうですか?」

 俺はヴィルヘルムを振るう。ヴィルヘルムから生み出された炎はバルザムークを閉じ込める渦の檻となる。

「こ、これは?」

「これなら逃げることも出来ないでしょう」

「そう、だな。ここまで囲まれてしまっては逃げ道はない。しかしそれはそなたも我に攻撃を加えることが出来ぬのではないか?」

「これを生み出したのは私ですよ。それくらいどうにかできます!」

 俺は炎の檻の中で飛び込む。

「ガルさん!」

 ティーベルの叫ぶ声が聞こえる。俺の行動は傍から見たら自殺行為だ。炎の中に飛び込むなど。

 しかし俺は無事だ。炎の檻を作り出したのは俺だ。ならそれを自在に操ることだってできる。今の俺は炎の中を走っている。しかし焼けることはない。炎が俺を避けるように弱まり、俺が通り過ぎると強まる。それはこのヴィルヘルムを通して俺が操っているのだ。

 そして炎を抜けるとそこにはバルザムークがいた。

「これで最後か」

「そうですね」

 俺とバルザムークは同時に駆けだす。

「「うおおおおおおおおおおおおお!」」

 俺の剣とバルザムークの剣が交錯した。









 やがて炎の檻が収まっていく。そして中央には剣が弾き飛ばされたバルザムークとバルザムークの喉元に剣を向けている俺の姿がある。

「ふっ…我の負けだ」

「………しょ、勝者、ガーリング・エルミット!」

 審判の判定が下されると俺は剣を引いて鞘に収める。

「「「「…………………」」」」

 皇帝が負けたという事実に衝撃が拭えないのか帝国貴族の誰もが沈黙していた。そんな中一人だけ動く人がいた。

「ガルさん!怪我とかやけどしてないですか!?」

「大丈夫だって。ていうかこのやりとりさっきもしたって」

「で、でもわたくしは心配なのですわ!」

「……心配してくれてありがとう」

 俺はその言葉に顔が綻んだ。

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