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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国編
56/176

第一皇子

「……皇帝殿下、失礼ながらそちらの方は?」

「そうであったな。ギルディア、自己紹介しろ」

「はいはい。えーっと、ギルディア・フォン・プロメテアだ。お前は?」

「………ランバルト王国第一王女ティーベル・フォン・ランバルトです。お目にかかれて光栄に存じます、ギルディア皇子」

「へぇ、お前がウェインの婚約者か」

 ギルディアは舐めまわすようにたっぷりとティーベルを見る。ティーベルは居心地が悪そうに体を強ばらせる。

「決めたぜ、親父。ウェインの代わりに俺がこいつの婚約者になってやるよ」

 ギルディアはこちらの事情もお構いなしにそう言い放つ。

「ギルディアは黙っていろ。勝手に物事を進めるだけではなく他国の要人に失礼な態度、看過できぬぞ」

「でも婚約者ってことはすでに身内だろ?なら別にいいだろ」

「まだ決まったわけではない」

 皇帝は頭を抑える。

 これがあの悪評高い第一皇子か。確かに、こいつは自分勝手すぎるな。

「はあ!?なんでだよ!ウェインが死んだんだからこいつは俺のものだろ!」

「ティーベル王女はお前のものではない」

「だったらどうすんだよ?帝国だって王国と同盟結んだ方がいいだろ?」

 なに?どういうことだ?帝国は同盟を結ぶ必要がないわけではない、むしろ同盟を結ばなければいけないのか?

「……それはどういうことでしょうか?」

 俺と同じ疑問を持ったのか、ティーベルは恐る恐る問いかける。

「帝国と同盟を結ぶと明言していない者に教える義理はない」

「……出過ぎた真似を致しました」

 皇帝の言う通りだ。味方とは分からない相手に情報開示するのは下策だ。

「そんなことより俺とこいつ、ティーベルだったか、と結婚するんだろ!」

「だから自分で進めるなと言っている」

 第一皇子は傲慢すぎる。こいつを見てるとあの公爵子息を思い出すな。

「俺はティーベルを気に入った。だから必ず手に入れる」

 ギルディアはティーベルの頬に触れようとする。

 そうはさせまいと俺は気配を隠しながら接近してギルディアの手を掴む。

「あん?誰だよお前?」

「ティーベル様に触れないで頂けますか?」

「てめぇ、俺にものを言ってんのか?」

「そう申し上げましたが聞こえませんでしたか?」

 俺の言葉にカチンときたのか乱暴に俺の手を振り払う。

「貴様!殺してやる!」

「やめろギルディア!」

「っ!」

 皇帝の静止にギルディアが抜剣しようとした手を止める。

「そのものはウェインを殺した魔族を倒したのだ。お前では相手にならん」

「はあ?こいつが?なにかの冗談だろ」

「事実だ。それにそのものは魔剣を持っている。お前が扱えないものだ」

「それは俺の実力に釣り合う魔剣がないだけだ!そこら辺の魔剣だと弱すぎるんだ!」

 こいつ何言ってるんだよ。

「魔剣を扱うには才能と実力が必要だ。お前はそれだけの実力を持つのか?」

「それは俺がこいつより弱いと言いたいのか?」

「そう言ったつもりだ」

「……親父でもその言葉は許せねぇ。おい貴様!」

 ギルディアは俺に向かって叫ぶ。

「俺と決闘をしろ!俺が勝ったらティーベルは俺のものだ!」

「ちょっ――――」

「いいでしょう!」

「ガルさん!?」

 ティーベルは自分が賭けられていることに戸惑っているようだ。

「安心してください。必ず勝ちますので」

「ガルさん………」

 俺が微笑むとティーベルは落ち着きを取り戻したのか顔が和らぐ。

「けっ」

 それが面白くないのかギルディアは顔を顰めた。









 場所は変わって競技場。周りには皇帝やティーベル、気になっている帝国貴族たち。

「ルールは簡単。相手が降参と言うまでだ。いいな?」

「構いませんよ」

 大方俺の事をタコ殴りにでもしようとしているのだろう。

「では審判はこのアドナクト・ウァレスが務めます!両者、構え!」

 俺とギルディアは模擬刀を構える。

「はじめ!」

「魔力よ、体に満ちて恩恵を与えよ!『身体強化オーバーエフェクト

 ギルディアは開始直後に魔術の詠唱を開始する。

「はん!身体強化もしないとは素人だな!」

 そういうお前は素人以下だな。

 と心の中でつぶやく。

「はああああああああああ!」

 ギルディアは真っ直ぐ突っ込んでくる。皇族とあってさすがにあのヨノーグスより速い。実力は本物だろう。

「死ねぇぇえええええええ!」

 俺を殺す気かよ。

 俺は辟易しながら身体強化をして真っ向から受け止める。

「なに!?」

「軽すぎる」

 俺は力任せに押し返す。ギルディアは剣ごと後ろへ弾き返される。

「な、何をした!?」

「何って別に身体強化をしただけですよ」

「詠唱もしてないくせにこの卑怯者!」

「浅はかですね」

 なんのフェイントもない直線的な振り。俺はそれを避けて剣の腹に剣で打撃を叩き込む。

「があ!」

 ギルディアは剣を叩かれた衝撃で体勢を崩す。

 あの一撃で権を手放さなかったのはすごい執念だ。褒めてもいい、があの場面では剣を手放して衝撃を体に響かせない方が良かった。身体強化をしているなら剣がなくとも素手で戦うことは出来る。

 結局のところ、こいつは自分が強いと思いこんでいるだけ。自分の実力を正確に把握していないのだ。

「はっ」

「ごほっ!」

 俺は体勢の崩れたギルディアの土手っ腹に思いっきり蹴りを入れる。

 ギルディアは気持ちいいくらい吹き飛ぶ。

「ぐ……あ……」

 ギルディアは腹を押えて顔を顰める。

 俺は歩いてギルディアの傍に行く。

「ひ、ひぃ!」

 俺は剣を思いっきり振り上げる。

「や、やめろ……やめろぉぉおおおお!」

 ギルディアの言葉を無視して振り下ろす。

 ガァァァァン

 音が響き渡る。

「「「「……………」」」」

 ギルディアも周りの貴族もみな唖然としてる。

「降参するか?」

「す、する。降参!降参だ!」

「そこまで!勝者、ガーリング・エルミット!」

「「「「……お、おおおおおおおおおお!」」」」

 俺が立ち上がると貴族たちが熱の入ったように雄叫びを上げる。

「ガルさん!」

 ティーベルは走って俺に駆け寄る。

「大丈夫ですか?怪我とかありませんか?」

「大丈夫だよ」

 ティーベルは必死に俺に怪我がないか触る。

「はっはっはっ。さすがだな、ガーリングよ」

「皇帝殿下」

 俺とティーベルは皇帝と向き合う。

「ギルディアも我が一族故に他の者より強いのだがまさか圧勝してしまうとはな。恐れ入った」

「お褒め頂きありがとうございます」

 そして俺は本題に入る。

「この模擬戦で私はギルディア皇子に勝ちました。ですのでティーベル様は諦めてもらってもよろしいのですか?」

「それとこれとは話が別であろう」

「……私はギルディア皇子とティーベル様の処遇も巡って対決しました。それで私が勝利したのでティーベル様の身柄は私に一任されるのではないですか?」

「それはあくまでそなたとギルディアが()()で争ったにすぎん」

「つまりは国は関係ないと?」

「その通りだ」

 やはり皇帝はその辺抜かりないな。ならば――――

「皇帝殿下、私と決闘をしませんか?」

「なに?」

「皇帝殿下が勝てばティーベル様を好きにしていただいても構いません。ですが私が勝てばティーベル様と関係なく王国と同盟を結ぶことを約束してください」

 俺の言葉にザワザワと帝国貴族たちが騒がしくなる。俺の言葉は下手をすれば皇帝への挑発になりかねない。

「つまり、そなたは我に勝てると?」

「やってみなければわかりませんが」

「ふっ。面白い!いいだろう、その勝負に乗った!」

 よし!賭けには勝ったようだ。

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