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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国編
54/176

王女のこれから

 帝国に着くと王城の屋敷を使わせてもらうことになった。

 一足先に騎士が先行して皇帝に話をつけてくれていたため諸々の融通をしてもらった。屋敷も皇帝の許可をとって正式に滞在している。









 そして翌日、ティーベルはまだ眠っている。あの悲惨な出来事があったとしても寝すぎているから心配になってくる。

 屋敷にいるのは俺とティーベルと朝に来た侍女のみ。本来なら俺も屋敷に泊まるのは不味いのだが事情が事情ということで特例で認められている。

 俺は朝に起きて侍女が作った朝食を食べる。いつもはフィリアと食べているから退屈しないが今日は会話がない。それに朝食も味気ない。フィリアがいないだけでこうも変わるとはな。それに今はフィリアがいないだけでなくティーベルのことも気にかけているからだろう。

 朝食を終えるとティーベルが眠っている部屋に入る。

 ティーベルは静かに眠っている。

「俺がもう少し早く来ていれば………」

 そんなことを言っても意味がない。ティーベルがペンダントを使用した時点ですでに危機的状況に陥っていたのは確かだ。

 光系統魔術はあくまで身体の傷を癒すことしかできない。心の傷は癒すことは決してできない。

「ティーベル………」

「う、うぅん………」

「起きたのか!?」

 ティーベルはだんだんと目を開ける。

「……み、水が、欲しいですわ」

 第一声がそれだった。少々呆気にとられたがすぐに水を用意して手渡す。

 ティーベルは水をゴクゴクと飲み干すとプハァと息を吐きだす。

「……こ、ここは、どこですの?……し、しかもどうしてガルさんがわたくしの目の前に!?」

 落ち着いたら周りを見る余裕ができたのか、疑問がたくさん出てくる。

「とにかく自分が気を失った時の状況を思い出せるか?」

 正直思い出さなくてもいい。思い出すだけでつらい出来事だったはずだ。

「確か、わたくしは帝国に向かっていてその途中で魔族に襲われて………」

 ティーベルの顔はだんだんと陰りを見せ始め、最終的にはとてもつらそうな表情をする。

「また、ガルさんに助けてもらいましたわね……」

「ティーベル……」

「本当になんとお礼を申し上げればいいのか……」

「ティーベル」

「そうですわ!お父様に頼んで褒美を――――」

「ティーベル!」

「……………………」

「もう無理しなくてもいい」

 俺は優しい声でティーベルに言う。今のティーベルは自分の心を押し殺して必死に取り繕うとしている。そんなもの、すぐに壊れてしまうというのに。

「わ、わたくしは、何もできませんでしたわ……」

「あぁ」

「わたくしが一番強かったはずでしたのに、怖くて、何もできませんでしたわ…」

「あぁ」

「初めて、人が殺されるのを見ました…わたくし、わたくし……」

「我慢するな」

 俺はティーベルを優しく抱きしめる。

「うぅ……ああああああああああ!」

 ティーベルはもう一度号泣した。






「………お見苦しいものを見せてしまいましたわ」

「気にすることはない。それでティーベルの気が晴れるならいくらでも胸を貸してやる」

 ティーベルがようやく表情が和らいだことに安堵する。人によるが人の死がショックで立ち直れないこともある。その点ティーベルはまだよかっただろう。

 くう~と部屋に腹が鳴る音が響いた。

 部屋にいるのは俺とティーベルのみ。そして俺ではないとすると犯人は――――

「な、何か?」

 ティーベルの顔が赤くなっている。それは泣いた後だからだけではないだろう。

「ティーベルは昨日の夜も今日の朝も何も食べてないから仕方ないよ。少し早いけど昼ご飯にしようか」

 ティーベルと食べる昼食は新鮮で、朝食より美味しく感じた。









 昼食を食べた後は今後についてのことを話し合う。

 今の一番の問題点はティーベルの婚約者であるウェイン皇子が亡くなったことだ。これによって王国と帝国の同盟の話が白紙になる可能性がある。

「皇帝は十中八九第一皇子との結婚を推し進めるだろうな」

「でしょうね。帝国としてもわたくしを欲している、王国としても帝国とは是が非でも同盟を結びたい、となるとその流れが自然ですわよね」

「まぁな。だがここでお前に聞きたいことがある」

「何でしょうか?」

「お前は第一皇子と結婚したいのか?」

「っ……そうですわね。やはり結婚しなければならないでしょうね」

「俺は結婚すべきかどうかを聞いてるんじゃない。結婚したいのかどうか、お前の意思を聞いてるんだ」

「そ、れは……結婚しなければならないのでしょう!わたくしが帝国に行かなければ王国が―――――」

「それは俺が何とかする。というか何とかなるはずだ」

「はい?何を言っているんですか?」

「王国の抱えている問題は魔物の増加、そうだろ?」

「な!?どこでそれを!?」

「俺にだって情報網はある」

「……リリアですわね。彼女の父親はリューク様ですからそこからなら情報が流れるのも納得できますわ」

 ティーベルは納得したようだ。

「しかし魔物の増加は人間ではどうしようもありません。どうする気なのですか?」

「それについてはまた今度だ」

「いいから話してください!」

「今の会話の論点はあくまでお前の結婚についてだ。答えを教えろ」

「……わたくしは……………結婚、したくありませんわ」

「どうして?」

「……離れ離れになりたくないからですわ」

「そうか。まあ家族や友人と離れるのは嫌だろうからな」

 するとティーベルからジト目で睨まれていることに気付いた。

「……なんだよ?」

「……なんでもありませんわ」

「まあいいか。それならティーベルの結婚を阻止する方向でいくぞ」

「ちょ、ちょっと待ってください!そんなことできるのですか!?」

「ティーベルが不安に思うことも無理はないさ」

 もし俺にリリアみたいな政治的判断ができればもっと安心して立ち回れるだろう。俺は前世でも貴族とのしがらみが嫌で政治に関わろうとはしなかったし今世でも深く関わるつもりはない。だが他の者よりかは心得がある。そして何よりこの国ならではの交渉術もある。

「大丈夫だ、策はある」

 そうして俺とティーベルは皇帝との謁見に臨んだ。

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