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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国編
53/176

救出

 教室を飛び出して全速力で飛翔する。

 向かうのは西だ。森の上を通る。最短距離の直線で向かう。

「……見えた」

 うっすらと人が戦っているのが見える。まだ米粒程度しか見えないがきっとティーベルがいるだろうと速度を上げる。

 そして何とか身体強化で視力を上げて何が起きているか把握しようとする。まっさきに確認するのはティーベルの安否だ。

 そしてティーベルが生きていることを確認する。

「よかった……」

 思わず安堵の息が出てしまう。しかしその安心も直ぐに不安と焦燥に塗り替えられてしまった。

 ティーベルの目の前に魔族と思しき姿と腹部を貫かれた状態の青年がいたことを確認したからだ。そしてあろうことか魔族は青年の首を切ったのだ。

 その様子は凄惨で少女が見るには酷すぎるものだ。下手をしたら一生のトラウマにもなりかねない。

 それを裏付けるようにティーベルは魔族を前にして呆然としている。

 魔族は青年を投げ捨てるとティーベルに手を伸ばす。

 もう少し、もう少し。

 心の中で焦りを見せる。

 そしてようやく魔剣の有効範囲に入るとフェニゲールを掴んで振るう。

 すると魔族とティーベルの間に氷の壁が出現する。

「な、なんだこれは!?」

 魔族が狼狽する。その隙に俺はティーベルの前に立つ。

「無事か?」

「あ……がる、さん……?」

 ティーベルの目の焦点が合わない。

「……すぐ終わらせるから待ってて」

「あ……う、、あ」

 やはり今はまともに会話できないな。









 氷の壁を粉砕して魔族と対峙する。

「ああん?次から次へとめんどくせえな」

 魔族が辟易したように言う。

「悪いが貴様だけは許さない」

 俺は静かに怒気を膨らませる。

「おお、怖い怖い。そんなに怒るなよ」

 魔族は俺を一瞥するとおどけたように笑う。

 俺はヴィルヘイムを握ると殺意をみなぎらせる。

「はああああああああ!」

 魔族にむかってヴィルヘイムを振るう。

「よっと」

 魔族は軽々しく避けると空中で制止する。

「『風渦』」

「はあ!」

 魔族の生み出した風の渦とフェニゲールの生み出した無数の氷の弾丸が激突する。綺麗な氷の結晶が舞う。

「「「「おぉ………」」」」

 近くにいた騎士たちが感嘆をもらす。

「……先に近くのやつを始末するのも――――くっ」

「よそ見すんじゃねえよ」

「へぇ……やるなあ」

 俺の剣を魔族はひょうひょうとした態度で避ける。

「受けとめたりしないのか?」

「嫌な感じがするからな。触りたくねぇ」

 ほう。感覚でつかみとるか。相当の手練れだな。だが別に俺は長引かせる気はない。

 俺はヴィルヘイムとフェニゲールを掲げる。そこから巨大な炎と氷が現出する。

「な、なんだよ……何なんだよそれ!?」

「これが貴様を殺す力だ」

「ふ、ふざけ、ふざけるなああああああああああ!」

 そして魔族は炎と氷に呑み込まれた。









「ティーベル、大丈夫か?」

 俺は改めてティーベルと向き合う。

「え、あ、、あの…」

 俺は膝をついてティーベルの視線に合わせる。

「………俺が誰かわかるか?」

「あ、がる、さん…?」

「あぁ」

 簡単な受け答え程度はできるみたいだ。でもまだ目は虚ろで焦点が合ってない。

「あ、うぅ……」

 ティーベルが手を伸ばす。俺はその手を掴もうとティーベルに近づく。

 すると突然ティーベルに抱き着かれた。

「え!?ちょっ!?」

「うぅ……うわああああああああああああん!」

 ティーベルが号泣しだす。

「…………よしよし」

 俺はティーベルの背中をさする。

 ティーベルはしばらくずっと泣いていた。









 ティーベルは泣き止むと泣き疲れて寝てしまった。

「あ、あなたは?」

 騎士の一人が恐る恐るといった感じで近づいてきた。

「これは失礼しました。私はバルフォンス・エルミット男爵の次男ガーリング・エルミットっと申します。座りながらで申し訳ありません」

 今の俺はティーベルにもたれかかられているため迂闊に身動きが取れない。変に動いてしまうといろいろと触れてしまいそうなのだ。

「いえ、お気になさらず」

 騎士は首を振る。そして青年の死体を痛々しい顔で見る。

「皇子のご遺体は引き取ってもよろしいでしょうか?」

「え?はい………え!?皇子!?」

 この人が?皇子?もしかしてティーベルの婚約者?

「はい。帝国の第二皇子ウェイン・フォン・プロメテアでそこにおられるティーベル様の婚約者であらせられたお方でした」

 過去形なのはもうすでに亡くなってしまったからだろう。

「皇子が来ていなければ王女を助けることができなかったでしょう。本当にありがとうございました」

 俺は感謝の念を込めて言う。実際、皇子がいなければあっさり殺されていたかもしれない。

「このままティーベル様を帝国へお連れしてもよろしいでしょうか?」

 ここは王都からだいぶ離れている。皇子が来たということは帝国と近いのだろう。

「そうですね。このまま返すわけにもいきませんし皇帝殿下もお許しになるでしょう」

 そうして俺たちは帝国に行くことにした。

 ティーベルは眠ったままだから抱えて移動することになる。ウェインの遺体は板に乗せて数名で運ぶようだ。

 他の亡くなってしまった人たちの遺体は持ち帰ることができない。だからこの地に埋葬することになった。

 王国側の騎士や魔術師、侍女、帝国側の騎士、魔術師。多くの人の死体を骨も残らず燃やす。

「…………ありがとうございました。ティーベルは必ず俺が守ります」

 亡くなった人たちに向けて自分の意思をつぶやく。

「行きましょう、帝国へ」

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