魔物
時の流れは早いものでフィリアが弟子になってから1年が経った。フィリアは着々と強くなり魔術も扱えるようになった。今では得意属性の初級魔術ならば無詠唱で出せるようになった。しかしフィリアの本領はそれではない。
「全て避けきれました!」
今練習しているのは俺が出したたくさんの『水球』を全て避けきるというものだ。
フィリアと相性が良かったものは身体強化の魔術だ。フィリアは獣人族であることから常人より動体視力と反射神経がいい。それに身体強化の魔術を付け加えることで驚異的な速度と威力を手に入れた。
フィリアは身体強化の魔術は1か月半で使いこなせるようなった。ここまで身体強化の魔術と相性が良かったのは前世でもなかなかいなかった。もしフィリアが身体強化の魔術を極めたら凄いことになるだろう。将来が楽しみだ。
しかし属性魔術や系統魔術、他の無属系魔術は苦手なようだ。1年経ってもまだ得意属性の風と土の初級魔術しか扱えるようになってない。それでもまだ良くなった方だろう。初めは魔術を使うには演唱が必要だと考えていたようだからな。王都に行った時大変そうだな。
「次は的当てな」
「それは苦手なんですけど…」
「苦手だからやるんだよ、泣き言言わない」
「はぁい」
フィリアは渋々と用意してあった窓に向き合う。
「すぅ」
フィリアは集中して魔力を練る。そして生み出された風の刃と土の弾が窓に向かって飛び、的を粉砕する。風属性の初級魔術『風刃』と土属性の初級魔術『石弾』。フィリアが得意とする魔術だ。
「今日は他の属性魔術を習得してもらうからな」
今はもう本は読んでいない。本で教えるより俺が直接教えた方がいいと思ったからだ。
「こう?いやこうかな?」
フィリアは試行錯誤しているが一人では難しそうだ。まぁ属性や系統によって魔力の扱いが変わるからその感覚を一人で感じ取るのは難しい。初めは誰かがその身体に教え込むしかない。
「こうだよ」
俺はフィリアに寄り添って手を握る。
「ちょ、ちょちょちょ…」
「ちょちょとうるさいぞ。集中しろ」
「近すぎますって!」
「教えるには仕方ないだろ、我慢しろ」
「はひぃ…」
俺はフィリアの魔力を操る。そしてそのままフィリアの魔力で火属性の初級魔術『火球』を作る。それを窓に向かって放つ。火の玉はそのまま的に当たって的を焼失させる。
「こんな感じだ。わかったか?」
「…ハッ!今何を!?」
「……集中しろって言ったよな…」
「あっ、いや、その…」
「午後からの座学の宿題2倍だ!」
「いやぁあああ!」
フィリアの叫び声で小鳥たちが飛び去っていった。
「うぅ、酷いです…」
「いや、集中してなかったフィリアが悪いだろ…」
今日の晩ご飯はフィリアからのジト目を受けながらとっている。
「そうだ、ガル」
「なんですか?」
「最近、近くの森で巨大な魔物の目撃情報がある。討伐されるまでは盛りに近づくなよ」
「魔物、ですか?」
「そっか、ガルは知らないんだね」
兄上は魔物について説明する。
「魔物というのは魔力を膨大に含む動物のことだよ。普通、動物や植物には魔力はないけど魔物は魔力を持っているんだ。その分攻撃力も高いし、防御力も高い。中には国が動かなければならないほどの強いものもいるんだ。少なくとも一般人では倒せない。まともな戦闘にもならないだろうね」
(…普通の動物や植物にも魔力は宿っているんだが…魔物というのは前世では存在しなかった概念だ。一体どんな存在なんだ?)
俺は兄上の説明を聞きながら考える。
「どうした、ガル?まさか自分で倒そうと思っているのかい?」
「さすがにガルでも難しいと思うぞ」
「いいえ。それはしませんよ、兄上、父上」
「だよね」
「さすがにな」
「フィリアに倒してもらおうと思ってるんで」
「「「はぁ!?」」」
兄上と父上とフィリアの声が響く。
「どうしてそうなる!?」
「さっきの話聞いてたよね!?」
「私死にますよ!?」
「いや落ち着いて」
「「「落ち着いてられるか!」」」
またもや三人の声が揃う。
「あの、ガル様。フィリアには荷が重いのではないでしょうか?」
コルンが俺に抗議に似た質問をする。
「そんなことないですよ。魔物は父上でも倒せますよね?」
「そうだな。というかうちでは魔物と対峙できるのは私くらいだろうな」
「ならば問題ないです」
「どうしてそうなる?」
「もうフィリアは父上より強いですから」
「「「「はぁ!?」」」」
「ガル様!?本気で言っていますか!?」
コルンが困惑気味に問いかけてくる。
「もちろん。俺が保証します」
「わ、私は認めんぞ!ガルはともかくフィリアにも負けるなど!」
「ならば明日模擬戦をしたらどうですか?」
「いいだろう。ガルの予想を打ち破ってくれよう!」
「というわけだ。フィリア、勝てよ」
「それは無理です!当主様に勝つなど…」
「お前なら心配ない。あと負けたら明日の座学の宿題2倍な」
「なっ!あ、あんまりです~!」




